「君が代・強制」解雇裁判通信77号
=控訴審第三回口頭弁論=
◎ そこには自由と伝統を重んじた教育があった。
控訴人、当時の学校現場の状況を陳述
五月十三日(火)、午後三時から東京高裁101法廷において、第三回口頭弁論が開かれ、控訴人の久保田正雄さんと控訴人代理人の新村響子弁護士が意見陳述を行い、水口弁護士からは、証人申請など、今後の訴訟進行についての意見を述べました。なお、前もって都側の準備書面の反論(一部)である控訴人側の準備書面(2)を裁判所に提出しました。
また、冷たい北風の吹くあいにくの空模様にもかかわらず、101名の方が傍聴抽選に並び、また。裁判終了後の弁護士会館での報告集会にも、102名の方が参加されました。ありがとうございました。
▼ 教員であるからこそ「命令」に従えなかった
=久保田さんの陳述要旨
①三十一年間、インテリア科の教員として、工芸高校で教育を行ってきた。そこでは自由と伝統を重んじ、「最後まで議論し、納得する」という教育の原則が守られていた。
卒業式や入学式でも、自主性を重んじた「形式的でない式」が行われていた。しかしそこに、「君が代・日の丸」が強制されてきた。
②戦後の「一家離散」という筆舌し難い経験をとおして、その原因を作った「あの戦争と国家主義を許せないという強い思い」を持った。「君が代・日の丸」は、国家主義や軍国主義の象徴である。それを強制されることは納得できないことであった。
③白熱した職員会議の議論を経て、「内心の自由」の説明を行うことを条件に、「日の丸・君が代」は式に入った。しかし、「10・23通達」はそれさえも禁じ、全員に起立斉唱を命じてきた。
④それぞれの学校の特色を生かし、教職員や生徒との活発な議論のなかで、学校自らの手で問題を解決することが大切だ。裁判官は、私たちが教員であるからこそ、「起立斉唱命令」に従えなかった心情を理解してほしい。
▼ 「裁判官、高校時代を思い出して下さい。物事を自分なりに捉え、考えるカを持っていたのではありませんか」
=新村弁護士の陳述要旨
①この裁判の本質は教育裁判だ。本件職務命令や合格取り消しを論じるには、子どもに対する国旗国歌の教育はどうあるべきか、教員としてどうあるべきかの議論を避けることができないからだ。
②被控訴人(都側)は、控訴人らが起立斉唱しなければならない理由を「教師が手本としてやってみせなければいけないからだ」という。教師が手本を見せ、「全員が起立・斉唱することがよいことだ」と、生徒たちに指導しろというのだろうか。そのような義務を負っているのだろうか。
③生徒たちは思想良心に従って、起立・斉唱を《する、しない》の自由をもっている。その自由があるのなら、教師も一律に起立・斉唱の手本を見せる必要はないはずだ。教師であってもその自由は保障されてよいのではないか。
④控訴人らは、考える材料を与えて、生徒たちの自主的な判断を尊重してきた。起立・斉唱を《する、しない》の両方の考え方があることを言っているだけだ。「不起立しろ」という指導はしていない。
⑤生徒は自分の考えをもって行動している。裁判官の高校時代を思い出してほしい。そうであったはずだ。
⑥「先生がいじめられている」と感じ、「自分が立たないと先生が処分されるから」という理由でやむなく起立する生徒が多くいる。職務命令により教員が起立・斉唱する様子は、手本どころか、生徒から見れば「何も考えるな」と自己否定されることと同じではないか。今回、工芸高校の元生徒二人の証人申請をした。この二人から通達前後の様子を聞き、生徒に対する国旗国歌教育のあり方という観点から、教員に一律に起立・斉唱してよいのか、そのような義務があるのかを、一考してもらいたい。
▼ カナダからも参加
=報告集会
裁判終了後の報告集会では、陳述を行った上記二人の感想、水口弁護士は今後の裁判の推移について、加藤弁護士は予防訴訟・藤田裁判の報告を行い、更に川口、蟹江、山中、平松の各弁護士の感想、控訴人からのお礼の挨拶があり、関連裁判からの訴えがありました。
なお、本日はカナダの「バンクーバー9条の会」の菊野由美子さんと岩下美佐子さん(大阪の元中学教員)が裁判を傍聴され、集会で次のように述べました。
「根津さんのフィルムを観て衝撃を受けた。実態を知りたくてやって来た。この問題の報告書を書くことになっている。世論をたかめる必要がある。カナダ・バンクーバーの教職員組合では都教委に決議をあげることになっている」、「中学校の卒業式で私も立たなかった。そのとき生徒の多くも不起立だった。教頭は立てと促した。早期退職しカナダに渡ったが、今でもそのときのことを思うと苦しい。カナダでは不起立で処分するなんて信じられないという反応だ。卒業式などで国旗国歌は登場しないからだ。起立・斉唱の強制は決して国際儀礼ではない」
署名4986筆提出
=累計1543筆=
5月13日、裁判が始まる前に「公正な裁判を求める」署名を裁判所に提出しました。ご協力ありがとうございました。なお、引き続き署名を行っています。
▼ 署名の提出とお礼
「解雇裁判」を共にすすめる会・代表世話人 丸山洋明
昨年十一月二七日、東京高裁に『「君が代」強制解雇裁判の公正な判決を求める要請署名』1万450筆を提出しましたが、これに引き続き私たちは全国の仲間に呼びかけ、さらに署名の集約を進めてきました。
その結果、多くの方々のご協力により、五月十二日現在で、4千986筆が集まり、累計は1万5千436筆となりました。
文字通り北海道から沖縄まで、一人の署名から労組・団体の数百筆・千手筆にいたるまでのたくさんの声がまとめられた結果です。
中にはあちらこちらにお声をかけていただき、一人の方を中心に数百筆集めてくださった方もおられます。また署名簿と一緒に、控訴人への温かいご支援のメッセージを同封された方もおられ、そのいくつかはこの「通信」でも紹介させていただきました。
都教委による学校支配と思想良心の自由抑圧への怒り、高齢者雇用差別による生活侵害への全国的な怒りがこの署名数にこめられているものと、私たちは考えています。
これら多くのご協力・ご支援につき、この場を借り心からお礼申し上げますとともに、高裁での逆転勝訴への決意を新たにしていることをご報告します。
集められた署名簿は、五月十三日、第三回口頭弁論に先立って、高裁第16民事部に提出しました。
なお、署名そのものはさらに継続し、第三次提出を図りたいと考えておりますので、お手持ちの署名簿をさらにご活用されますよう、お願いいたします。
=今後の裁判日程=
○進行協議8月25日(月)午後4時
○控訴審第4回口頭弁論
9月2日(火)午後3時 101法廷
傍聴抽選がありますので、午後2時半まで、裁判所正門まえに
▼ 「解雇裁判」を共にすすめる会
報告集会・総会のお知らせ
日時:6月21日(土)午後2時開会
場所:文京区民センター2階(地下鉄春日または後楽園下車)
内容:○解雇裁判の現状と展望
○講演「中野区保育士雇い止め事件勝訴判決までの軌跡」
○総会
「君が代・強制」解雇裁判通信 第77号(2008年5月20日)から
=控訴審第三回口頭弁論=
◎ そこには自由と伝統を重んじた教育があった。
控訴人、当時の学校現場の状況を陳述
五月十三日(火)、午後三時から東京高裁101法廷において、第三回口頭弁論が開かれ、控訴人の久保田正雄さんと控訴人代理人の新村響子弁護士が意見陳述を行い、水口弁護士からは、証人申請など、今後の訴訟進行についての意見を述べました。なお、前もって都側の準備書面の反論(一部)である控訴人側の準備書面(2)を裁判所に提出しました。
また、冷たい北風の吹くあいにくの空模様にもかかわらず、101名の方が傍聴抽選に並び、また。裁判終了後の弁護士会館での報告集会にも、102名の方が参加されました。ありがとうございました。
▼ 教員であるからこそ「命令」に従えなかった
=久保田さんの陳述要旨
①三十一年間、インテリア科の教員として、工芸高校で教育を行ってきた。そこでは自由と伝統を重んじ、「最後まで議論し、納得する」という教育の原則が守られていた。
卒業式や入学式でも、自主性を重んじた「形式的でない式」が行われていた。しかしそこに、「君が代・日の丸」が強制されてきた。
②戦後の「一家離散」という筆舌し難い経験をとおして、その原因を作った「あの戦争と国家主義を許せないという強い思い」を持った。「君が代・日の丸」は、国家主義や軍国主義の象徴である。それを強制されることは納得できないことであった。
③白熱した職員会議の議論を経て、「内心の自由」の説明を行うことを条件に、「日の丸・君が代」は式に入った。しかし、「10・23通達」はそれさえも禁じ、全員に起立斉唱を命じてきた。
④それぞれの学校の特色を生かし、教職員や生徒との活発な議論のなかで、学校自らの手で問題を解決することが大切だ。裁判官は、私たちが教員であるからこそ、「起立斉唱命令」に従えなかった心情を理解してほしい。
▼ 「裁判官、高校時代を思い出して下さい。物事を自分なりに捉え、考えるカを持っていたのではありませんか」
=新村弁護士の陳述要旨
①この裁判の本質は教育裁判だ。本件職務命令や合格取り消しを論じるには、子どもに対する国旗国歌の教育はどうあるべきか、教員としてどうあるべきかの議論を避けることができないからだ。
②被控訴人(都側)は、控訴人らが起立斉唱しなければならない理由を「教師が手本としてやってみせなければいけないからだ」という。教師が手本を見せ、「全員が起立・斉唱することがよいことだ」と、生徒たちに指導しろというのだろうか。そのような義務を負っているのだろうか。
③生徒たちは思想良心に従って、起立・斉唱を《する、しない》の自由をもっている。その自由があるのなら、教師も一律に起立・斉唱の手本を見せる必要はないはずだ。教師であってもその自由は保障されてよいのではないか。
④控訴人らは、考える材料を与えて、生徒たちの自主的な判断を尊重してきた。起立・斉唱を《する、しない》の両方の考え方があることを言っているだけだ。「不起立しろ」という指導はしていない。
⑤生徒は自分の考えをもって行動している。裁判官の高校時代を思い出してほしい。そうであったはずだ。
⑥「先生がいじめられている」と感じ、「自分が立たないと先生が処分されるから」という理由でやむなく起立する生徒が多くいる。職務命令により教員が起立・斉唱する様子は、手本どころか、生徒から見れば「何も考えるな」と自己否定されることと同じではないか。今回、工芸高校の元生徒二人の証人申請をした。この二人から通達前後の様子を聞き、生徒に対する国旗国歌教育のあり方という観点から、教員に一律に起立・斉唱してよいのか、そのような義務があるのかを、一考してもらいたい。
▼ カナダからも参加
=報告集会
裁判終了後の報告集会では、陳述を行った上記二人の感想、水口弁護士は今後の裁判の推移について、加藤弁護士は予防訴訟・藤田裁判の報告を行い、更に川口、蟹江、山中、平松の各弁護士の感想、控訴人からのお礼の挨拶があり、関連裁判からの訴えがありました。
なお、本日はカナダの「バンクーバー9条の会」の菊野由美子さんと岩下美佐子さん(大阪の元中学教員)が裁判を傍聴され、集会で次のように述べました。
「根津さんのフィルムを観て衝撃を受けた。実態を知りたくてやって来た。この問題の報告書を書くことになっている。世論をたかめる必要がある。カナダ・バンクーバーの教職員組合では都教委に決議をあげることになっている」、「中学校の卒業式で私も立たなかった。そのとき生徒の多くも不起立だった。教頭は立てと促した。早期退職しカナダに渡ったが、今でもそのときのことを思うと苦しい。カナダでは不起立で処分するなんて信じられないという反応だ。卒業式などで国旗国歌は登場しないからだ。起立・斉唱の強制は決して国際儀礼ではない」
署名4986筆提出
=累計1543筆=
5月13日、裁判が始まる前に「公正な裁判を求める」署名を裁判所に提出しました。ご協力ありがとうございました。なお、引き続き署名を行っています。
▼ 署名の提出とお礼
「解雇裁判」を共にすすめる会・代表世話人 丸山洋明
昨年十一月二七日、東京高裁に『「君が代」強制解雇裁判の公正な判決を求める要請署名』1万450筆を提出しましたが、これに引き続き私たちは全国の仲間に呼びかけ、さらに署名の集約を進めてきました。
その結果、多くの方々のご協力により、五月十二日現在で、4千986筆が集まり、累計は1万5千436筆となりました。
文字通り北海道から沖縄まで、一人の署名から労組・団体の数百筆・千手筆にいたるまでのたくさんの声がまとめられた結果です。
中にはあちらこちらにお声をかけていただき、一人の方を中心に数百筆集めてくださった方もおられます。また署名簿と一緒に、控訴人への温かいご支援のメッセージを同封された方もおられ、そのいくつかはこの「通信」でも紹介させていただきました。
都教委による学校支配と思想良心の自由抑圧への怒り、高齢者雇用差別による生活侵害への全国的な怒りがこの署名数にこめられているものと、私たちは考えています。
これら多くのご協力・ご支援につき、この場を借り心からお礼申し上げますとともに、高裁での逆転勝訴への決意を新たにしていることをご報告します。
集められた署名簿は、五月十三日、第三回口頭弁論に先立って、高裁第16民事部に提出しました。
なお、署名そのものはさらに継続し、第三次提出を図りたいと考えておりますので、お手持ちの署名簿をさらにご活用されますよう、お願いいたします。
=今後の裁判日程=
○進行協議8月25日(月)午後4時
○控訴審第4回口頭弁論
9月2日(火)午後3時 101法廷
傍聴抽選がありますので、午後2時半まで、裁判所正門まえに
▼ 「解雇裁判」を共にすすめる会
報告集会・総会のお知らせ
日時:6月21日(土)午後2時開会
場所:文京区民センター2階(地下鉄春日または後楽園下車)
内容:○解雇裁判の現状と展望
○講演「中野区保育士雇い止め事件勝訴判決までの軌跡」
○総会
「君が代・強制」解雇裁判通信 第77号(2008年5月20日)から
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