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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

“いじめ”にあまりに寛容な学校現場は、新自由主義の社会の縮図

2020年02月03日 | こども危機
  《日刊ゲンダイ:二極化・格差社会の真相(斎藤貴男)》
 ◆ 弱肉強食の新自由主義を葬らなければイジメはなくならない


 AI(人工知能)を子どもたちの“いじめ”対策に活用しようという取り組みが、全国の教育委員会で始まった。2011年に中学2年生の男児を自殺に追い込んだ前科のある大津市などが先駆的にAIで危険な事案を予測。SNSが絡むと約8割が深刻化するなどという傾向を検出している。
 第一報を聞いた時、私はなんということだろうと天を仰いだ。データを増やせば分析の精度は上がるにせよ、集めすぎれば教育の平等の否定にも通じる。それでも教育者のつもりか、と。
 ただ、前回の本欄で書いた佐賀県鳥栖市の“いじめ”事件と学校側の対応、法廷での主張、佐賀地裁の判決などを取材するうち、考え方が変わってきた
 教育を国力増進の手段とのみ捉える政権の介入が強まる一方の学校現場は疲弊している。上の求める成果に直結しない“些事”になどかまけていられるか、という理屈かどうかは知らないが、彼らは今、子どもたちの“いじめ”にあまりに寛容だ
 鳥栖市の事件の場合、学校と市教委は事態を承知していながら、「プロレスごっこだと思った」とシラを切り、ついには司法によっても一切の責任なしと免責されるに至った。
 事の善悪をさておく限り、血の通った人間による、人間のための教育という価値観は、もはや息の根を止められてしまった感さえある。
 だったら。そんな“教育者”たちばかりならば。
 まだしもコンピューターのほうが、へつらいや保身とは無縁な分だけ、マシなのではないか
 少なくとも、あったことがなかったことにされることはないはずだ。そう考えるようにもなった。
 ところが、ここで次の疑問が生じる。
 AIを動かすのはアルゴリズム(問題解決の手順)だが、それは自然に成長するのではない。外部からはうかがい知れないブラックボックスで、特定の専門家によって設定され、いいようにリセットされていく
 であれば、あらかじめ「教員や行政は常に正しい。家庭が悪い」とでもプログラミングしておけば(?)現状とあまり変わらない結果が、しかも最高の“コスパ”で導かれることになりはしないか。
 学校で起こる出来事は、どこまでも人間の問題なのだ。社会の縮図でもある。
 弱肉強食の新自由主義イデオロギーに支配された時代をすぐにも終わらせない限り、“負け組”にされた大人、いじめられた子が弱いから悪い、ざまあみろと世の中総出であざ笑われる地獄絵図は、とめどなく増殖する。
 一刻も早く!

 ※ 斎藤貴男 ジャーナリスト
1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「戦争経済大国」(河出書房新社)、「日本が壊れていく」(ちくま新書)、「『明治礼賛』の正体」(岩波ブックレット)など著書多数。
『日刊ゲンダイ』(2020/01/29)

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