◆ 消費税等の増税路線反対 財源はある
~応能負担の徹底と最高税率の引上げ
不公平な税制をただす会は6月21日、都内でシンポジウム「応能負担原則に基づく税制改革提案-不公平税制是正により財源は出る!」を開いた。『TAW』(福祉とぜいきん)2012年第24号をテキストに浦野広明立正大学客員教授をはじめ6人が報告し、質疑を行った。社会保障と税の一体改革法案の衆院審議が、ヤマ場を迎えている。消費税率引き上げが、多くの国民の反対の声をよそに規定のレールのように扱われているが、"消費税引き上げ反対"の具体的・明確な対案として広く広げることが大事だ。
シンポジウムの演題と講師は次の通り。
①累進税の回復と所得課税=浦野広明立正大学客員教授、
②「一体改革」と大企業の負担・大企業の内部留保課税の提案=菅隆徳税理士、
③個別消費税(新物品税)の提案=湖東京至元静岡大学教授・税理士、
④富裕税の復活について=富山泰一財源資産研究会顧問、
⑤消費税を廃止しても地方財政は確保できる=中村幸夫地方税研究会、
⑥財源問題-2012年度財源試算について=荒川俊之財源試算研究会主査・税理士。
● 浦野氏の報告要旨
一体改革案は、消費税等の大増税案だ。国民が幸せになる租税原則は応能負担だ。それは憲法第13条(個人の尊重・幸福追求権)、第14条(法の下の平等)、に依拠し、担税能力を考慮しない租税は第25条(生存権)を侵害するものだ。
応能原則を実現するためには総含累進課税を採用することが重要だが、近年の税制改定は累進課税機能を破壊している。06年税制改定では住民税の累進税率(5、10、13%)が廃止され、10%の単一税率にされ、国民の60%が5%から10%と、一挙に倍の税負担を行うことになった。
法人税率は84年当時は43・3%であったが、11年税制改定で26・5%にまで引き下げられた。さらに巨大企業には数多くの企業優遇制度(引当金制度、準備金制度、連結納税制度、外国税額控除など)があり、実際の税負担は実効税率を大幅に下回っている。法人税率は応能原則の下で、少なくとも、5%から40%までの6段階程度の累進税率にすべきである。表1にあるとおり税の中心に位置すべき国税の所得課税(所得税や法人税)の減収は異常だ。
● 菅氏の報告要旨
1989年の消費税導入以来、日本は個人所得税では最高税率の引き下げをはじめ累進制の緩和、法人税減税や金融資産所得の優遇措置で少々の経済成長では税収が伸びないという構造がつくられている。
1989年には企業利潤が38・9兆円で、19・0兆円の法人税収があったが、06年には企業利潤49兆円に対して法人税収はわずか14・9兆円だった(表2)。
法人税収の大幅な落ち込みの一方、内部留保は景気後退でも増加している。従って、大企業の内部留保への課税を提案する。
①資本金10億円以上の大企業に資本剰余金+利益剰余金の1%を毎年課税する。2010年度で計算すると、2兆3400億円となる。
● 湖東氏の報告要旨
特定の大企業に負担を求める新物品税(仮称)を提案する。それは課税対象を寡占化された業界の産品・物品に蔵出し段階で課税すること。贅沢を尺度とせずに、寡占化された業界によって作られたものとする。
具体的には物品出荷の上位10社で、寡占度が95%以上のものとする。工業統計表によると、洗濯用合成洗剤、武器用火薬類、写真フィルム、衛生陶器、ガスコンロなど82品種で、単価が比較的安い物品は軽減税率(10%)として、他は標準税率(20%)とする。
試算すると標準税率分3兆4838億円、軽減税率分1541億円で合計3兆6379億円となる。推定によれば課税事業者は、500社にしかすぎない。
● 富山氏の報告要旨
富裕税は、税の公平の維持、分配の平等促進、経済の安定性に役立つなど、政府・財界が手を携えて蓄積した財産を社会的還元するには最もベターな税制だ。
● 中村氏の報告要旨
応能負担原則に基づき、個人住民税を累進課税にし、年所得350万円超の法人事業税を12%に戻し、資本金1億円以上の法人住民税均等割の引き上げなどを実行すれば、財源確保が必要となる。
● 荒川氏の報告要旨
法人税の受取配当益金や各種引当金・準備金の廃止など不公平な税制を是正すると国税で9兆9308億円、地方税関係で8兆1515億円、で合計18兆0823億円の財源が確保できる。
『週刊新社会』(2012/7/3)
~応能負担の徹底と最高税率の引上げ
不公平な税制をただす会は6月21日、都内でシンポジウム「応能負担原則に基づく税制改革提案-不公平税制是正により財源は出る!」を開いた。『TAW』(福祉とぜいきん)2012年第24号をテキストに浦野広明立正大学客員教授をはじめ6人が報告し、質疑を行った。社会保障と税の一体改革法案の衆院審議が、ヤマ場を迎えている。消費税率引き上げが、多くの国民の反対の声をよそに規定のレールのように扱われているが、"消費税引き上げ反対"の具体的・明確な対案として広く広げることが大事だ。
シンポジウムの演題と講師は次の通り。
①累進税の回復と所得課税=浦野広明立正大学客員教授、
②「一体改革」と大企業の負担・大企業の内部留保課税の提案=菅隆徳税理士、
③個別消費税(新物品税)の提案=湖東京至元静岡大学教授・税理士、
④富裕税の復活について=富山泰一財源資産研究会顧問、
⑤消費税を廃止しても地方財政は確保できる=中村幸夫地方税研究会、
⑥財源問題-2012年度財源試算について=荒川俊之財源試算研究会主査・税理士。
● 浦野氏の報告要旨
一体改革案は、消費税等の大増税案だ。国民が幸せになる租税原則は応能負担だ。それは憲法第13条(個人の尊重・幸福追求権)、第14条(法の下の平等)、に依拠し、担税能力を考慮しない租税は第25条(生存権)を侵害するものだ。
応能原則を実現するためには総含累進課税を採用することが重要だが、近年の税制改定は累進課税機能を破壊している。06年税制改定では住民税の累進税率(5、10、13%)が廃止され、10%の単一税率にされ、国民の60%が5%から10%と、一挙に倍の税負担を行うことになった。
法人税率は84年当時は43・3%であったが、11年税制改定で26・5%にまで引き下げられた。さらに巨大企業には数多くの企業優遇制度(引当金制度、準備金制度、連結納税制度、外国税額控除など)があり、実際の税負担は実効税率を大幅に下回っている。法人税率は応能原則の下で、少なくとも、5%から40%までの6段階程度の累進税率にすべきである。表1にあるとおり税の中心に位置すべき国税の所得課税(所得税や法人税)の減収は異常だ。
● 菅氏の報告要旨
1989年の消費税導入以来、日本は個人所得税では最高税率の引き下げをはじめ累進制の緩和、法人税減税や金融資産所得の優遇措置で少々の経済成長では税収が伸びないという構造がつくられている。
1989年には企業利潤が38・9兆円で、19・0兆円の法人税収があったが、06年には企業利潤49兆円に対して法人税収はわずか14・9兆円だった(表2)。
法人税収の大幅な落ち込みの一方、内部留保は景気後退でも増加している。従って、大企業の内部留保への課税を提案する。
①資本金10億円以上の大企業に資本剰余金+利益剰余金の1%を毎年課税する。2010年度で計算すると、2兆3400億円となる。
● 湖東氏の報告要旨
特定の大企業に負担を求める新物品税(仮称)を提案する。それは課税対象を寡占化された業界の産品・物品に蔵出し段階で課税すること。贅沢を尺度とせずに、寡占化された業界によって作られたものとする。
具体的には物品出荷の上位10社で、寡占度が95%以上のものとする。工業統計表によると、洗濯用合成洗剤、武器用火薬類、写真フィルム、衛生陶器、ガスコンロなど82品種で、単価が比較的安い物品は軽減税率(10%)として、他は標準税率(20%)とする。
試算すると標準税率分3兆4838億円、軽減税率分1541億円で合計3兆6379億円となる。推定によれば課税事業者は、500社にしかすぎない。
● 富山氏の報告要旨
富裕税は、税の公平の維持、分配の平等促進、経済の安定性に役立つなど、政府・財界が手を携えて蓄積した財産を社会的還元するには最もベターな税制だ。
● 中村氏の報告要旨
応能負担原則に基づき、個人住民税を累進課税にし、年所得350万円超の法人事業税を12%に戻し、資本金1億円以上の法人住民税均等割の引き上げなどを実行すれば、財源確保が必要となる。
● 荒川氏の報告要旨
法人税の受取配当益金や各種引当金・準備金の廃止など不公平な税制を是正すると国税で9兆9308億円、地方税関係で8兆1515億円、で合計18兆0823億円の財源が確保できる。
『週刊新社会』(2012/7/3)
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