◆ 管理職になり手がなくなった!?
~そっぽを向かれる東京都の人事政策
昨年12月に発表された任用試験結果の数字は「合格倍率の低下傾向続く」(『都政新報』)というものであった。「主幹職選考」が1倍台であるだけではなく、「管理職選考」までA選考・B選考・C選考とも1倍台、応募者は8年前の7分の1激減してしまった。
おそらく史上初の全国にも類を見ない未曾有の東京都の管理職不人気ぶりは何を意味しているのだろうか。まずその実態から見てみよう。
1,《主幹級選考》 無惨な全校配置計画未達成
(1)不人気校並みの全入状態
新規導入初年度こそ、2,000人を超える応募で倍率も1.3倍だったものの、その後は年々応募者数が減り続け、所定の合格者数を確保できず、倍率1.0倍台で低迷し続けている。(表1)
一昨年、昨年と立て続けに受験条件を緩和し、二次募集までかけたにも関わらずである。1学期の自己申告書面接では、該当年齢者は軒並み校長から受験を勧められていて、なおこの数字である。
(2)5年連続定員割れで、完成年度に2000人近い欠員
必置主幹数は、高校で6人、中学で3人、小学校で2人、完成年度(20年)には6,103人必要だった。平均すれば各年872人必要だったにも関わらず、それを上回ったのは最初の2年だけで、その後5年連続欠員状態が続いてきた。(表2)
その結果、充足率70%台で完成年度を迎えることになってしまった。主幹の中からは毎年管理職試験に合格していくわけだから(昨年は520人合格)、いつまでたっても補充が追いつかない状態になっている。無残な計画倒れと言うしかない。
(3)《主幹級選考》 なぜなり手がないのか?
答は一言「現場で必要ないから」。「生徒の教育に関係ない」上に「同僚性」を破壊する。主幹業務の無意味に過酷な実態が明らかになるにつれ、受験者層が敬遠しているのは明らかだ。
新しい職階を作ってお金で釣ろうとしたが、教員には「給与」や「昇進」がインセンティブにならないことを見落としていた。都教委の役人は、民間の猿まねをした間違いを恥じ、「数値目標」を達成できなかった結果に対して厳粛に責任を取るべきであろう。
そして、今年から導入された「主任教諭制度」も同じ発想から設計されているとするなら、主幹制度を補完するどころか、さらなる教育破壊を招くことは火を見るよりも明らかであろう。生徒に目に見える被害が及ぶ前に、直ちに止めるべきである。
2,《管理職選考》 失速ついに1倍台に
~留まるところを知らない受験者数減少
(1)応募者数が8年前の7分の1に激減
「あり方検」の答申により、99年からA・Bに分けてA選考優先で制度改革を行ったものの、肝心のA選考が著しい不人気に陥っている。2000年度こそ7.79倍あった倍率が8年後の昨年には1.25倍。何と7分の1の激減ぶりだ(表3)。対有資格者の比率も、5.6%から2.4%に半減しているのだそうだ。
それに伴うように、B選考も昨年度ついに1倍台に落ちてしまった(表4)。受験者減少に危機感を抱いて、2006年度から導入したC選考ももちろん当初から1.0倍。
2008年度の管理職選考は、A・B・C選考とも1倍台という10年前には考えられなかった広き門となってしまった。そしてこれが回復する兆候は全くない。
(2)現場から浮き上がり孤立化する都教委路線の「校長・副校長・主幹」
平教員との格差拡大の人事政策を続けてきたにも関わらず受験者数が減り続けることを、当局はどう考えているのだろう。都教委は『これからの教員選考・任用制度について(中間のまとめ)』(2006年)で、「ライフスタイルや意識の変化」「子育て世代の受験敬遠」「受験者の受験負担感」などを減少原因にあげている。しかし、「合格後の負担感」が割に合わない、ないしは「やりがいを見いだせない」ことには触れていない。
減少が始まったのは「あり方検路線」からで、特に2003年の「10・23通達」以降が顕著である。この頃教育行政は180°とも言うべき大転換をとげた。「10・23通達」=職務命令体制は、「日の丸・君が代」の強制に留まらず、教育の質を変え教員から「やりがい」「目標」を奪っている。そのことが、管理職選考がそっぽを向かれることと深く結びついていることは、誰の目にも明らかではないか。
ひたすら「教員管理」のみを目的にした「上意下達体制」のもくろみは、「子ども中心」に働きたい現場の抵抗で破綻しかかっている。一方で2000年度以前は10倍を超えていた新規教員採用倍率も08年度は2.9倍まで低下する不人気ぶり。このままでは、上の方から下の方から、東京都の教育劣化は限りなく進行してしまう。「10・23通達」こそ、東京都の教育崩壊の起点であることを今こそ直視すべきであろう。
※ 教育管理職選考(99年~)
A選考(若手登用)行政管理職又は学校管理職の候補者を選考<33歳~44歳>
B選考(中堅登用)原則として学校管理職の候補者を選考<44歳~55歳>
C選考(ベテラン登用)即任用する学校管理職を選考<50歳~54歳>(06年創設)
『YOU SEE! in summer』(2009/8/23)
~そっぽを向かれる東京都の人事政策
昨年12月に発表された任用試験結果の数字は「合格倍率の低下傾向続く」(『都政新報』)というものであった。「主幹職選考」が1倍台であるだけではなく、「管理職選考」までA選考・B選考・C選考とも1倍台、応募者は8年前の7分の1激減してしまった。
おそらく史上初の全国にも類を見ない未曾有の東京都の管理職不人気ぶりは何を意味しているのだろうか。まずその実態から見てみよう。
1,《主幹級選考》 無惨な全校配置計画未達成
(1)不人気校並みの全入状態
新規導入初年度こそ、2,000人を超える応募で倍率も1.3倍だったものの、その後は年々応募者数が減り続け、所定の合格者数を確保できず、倍率1.0倍台で低迷し続けている。(表1)
一昨年、昨年と立て続けに受験条件を緩和し、二次募集までかけたにも関わらずである。1学期の自己申告書面接では、該当年齢者は軒並み校長から受験を勧められていて、なおこの数字である。
(2)5年連続定員割れで、完成年度に2000人近い欠員
必置主幹数は、高校で6人、中学で3人、小学校で2人、完成年度(20年)には6,103人必要だった。平均すれば各年872人必要だったにも関わらず、それを上回ったのは最初の2年だけで、その後5年連続欠員状態が続いてきた。(表2)
その結果、充足率70%台で完成年度を迎えることになってしまった。主幹の中からは毎年管理職試験に合格していくわけだから(昨年は520人合格)、いつまでたっても補充が追いつかない状態になっている。無残な計画倒れと言うしかない。
(3)《主幹級選考》 なぜなり手がないのか?
答は一言「現場で必要ないから」。「生徒の教育に関係ない」上に「同僚性」を破壊する。主幹業務の無意味に過酷な実態が明らかになるにつれ、受験者層が敬遠しているのは明らかだ。
新しい職階を作ってお金で釣ろうとしたが、教員には「給与」や「昇進」がインセンティブにならないことを見落としていた。都教委の役人は、民間の猿まねをした間違いを恥じ、「数値目標」を達成できなかった結果に対して厳粛に責任を取るべきであろう。
そして、今年から導入された「主任教諭制度」も同じ発想から設計されているとするなら、主幹制度を補完するどころか、さらなる教育破壊を招くことは火を見るよりも明らかであろう。生徒に目に見える被害が及ぶ前に、直ちに止めるべきである。
2,《管理職選考》 失速ついに1倍台に
~留まるところを知らない受験者数減少
(1)応募者数が8年前の7分の1に激減
「あり方検」の答申により、99年からA・Bに分けてA選考優先で制度改革を行ったものの、肝心のA選考が著しい不人気に陥っている。2000年度こそ7.79倍あった倍率が8年後の昨年には1.25倍。何と7分の1の激減ぶりだ(表3)。対有資格者の比率も、5.6%から2.4%に半減しているのだそうだ。
それに伴うように、B選考も昨年度ついに1倍台に落ちてしまった(表4)。受験者減少に危機感を抱いて、2006年度から導入したC選考ももちろん当初から1.0倍。
2008年度の管理職選考は、A・B・C選考とも1倍台という10年前には考えられなかった広き門となってしまった。そしてこれが回復する兆候は全くない。
(2)現場から浮き上がり孤立化する都教委路線の「校長・副校長・主幹」
平教員との格差拡大の人事政策を続けてきたにも関わらず受験者数が減り続けることを、当局はどう考えているのだろう。都教委は『これからの教員選考・任用制度について(中間のまとめ)』(2006年)で、「ライフスタイルや意識の変化」「子育て世代の受験敬遠」「受験者の受験負担感」などを減少原因にあげている。しかし、「合格後の負担感」が割に合わない、ないしは「やりがいを見いだせない」ことには触れていない。
減少が始まったのは「あり方検路線」からで、特に2003年の「10・23通達」以降が顕著である。この頃教育行政は180°とも言うべき大転換をとげた。「10・23通達」=職務命令体制は、「日の丸・君が代」の強制に留まらず、教育の質を変え教員から「やりがい」「目標」を奪っている。そのことが、管理職選考がそっぽを向かれることと深く結びついていることは、誰の目にも明らかではないか。
ひたすら「教員管理」のみを目的にした「上意下達体制」のもくろみは、「子ども中心」に働きたい現場の抵抗で破綻しかかっている。一方で2000年度以前は10倍を超えていた新規教員採用倍率も08年度は2.9倍まで低下する不人気ぶり。このままでは、上の方から下の方から、東京都の教育劣化は限りなく進行してしまう。「10・23通達」こそ、東京都の教育崩壊の起点であることを今こそ直視すべきであろう。
※ 教育管理職選考(99年~)
A選考(若手登用)行政管理職又は学校管理職の候補者を選考<33歳~44歳>
B選考(中堅登用)原則として学校管理職の候補者を選考<44歳~55歳>
C選考(ベテラン登用)即任用する学校管理職を選考<50歳~54歳>(06年創設)
『YOU SEE! in summer』(2009/8/23)
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