◆ 1人1台端末で新たな問題が学校で生まれようとしている (Yahoo!ニュース - 個人)
新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)の影響で一気に加速したのが、「GIGAスクール構想」を実現するための「1人1台端末」である。しかし、そこには思いがけない問題が潜んでいるようだ。
◆ さらに教室を狭くする1人1台端末
「GIGAスクール構想」では当初、1人1台端末は2023年度までに実現される予定だった。それが新型コロナでリモート授業の必要も叫ばれるなかで、早期の実現を目指すことになり、今年度中(来年3月中)に全国の大半の公立小中学校で1人1台端末が実現される見通しとなってきている。
そうしたなかで学校現場で浮上してきたのが、端末の保管場所の問題である。1人1台が支給されるのを前に、保管場所の確保が教育委員会から学校に指示されているという。
それも、「どこでもいい」ということではなさそうだ。「保管は教室内と指定されています」と、ある教員が打ち明ける。
タブレットやパソコンは貴重品であり、保管には安全を期すのが当然である。教室内での保管となるのも頷ける。
しかし、それは頭の痛いことである。先ほどの教員が続ける。
「ただでさえ狭すぎるのが、教室の現状です。そこに40人分のパソコンの保管場所を確保するとなると、狭い教室がさらに狭くなってしまうんです」
新型コロナ予防で「3密(密集、密接、密閉)」を避ける指導が学校では行われている。しかし狭い教室がさらに狭くなることで、3密状況に拍車をかけることになる。どう指導していくのか、教員にしてみれば頭の痛い問題なのだ。
教室内に保管場所を確保するとなれば、その管理も教員の仕事になってしまう。破損、紛失に気を遣わなくてはならなくなるわけで、教員にしてみれば新たな仕事が増えることになる。
◆ 持ち帰れない端末は役に立つのか
教室内に保管することになれば、子どもたちが自宅で利用することは不可能になる。それで、1人1台を活かした学習になるのだろうか。
自宅に端末のある子はそれで学習ができるが、自宅に端末のない子は端末を使った学習ができないことになる。「差」が生まれるわけだ。
その「差」があるなかで教員は指導しなければならないことになる。教員にとって、かなり頭の痛い事態になるかもしれない。
そもそも、なぜ、子どもたちが持ち帰ることを前提にしない1人1台端末なのだろうか。持ち帰ればこそリモート授業も可能になるし、自宅に端末がある子とない子の「差」も生じない。狭い教室をさらに狭くして、無理に保管場所を確保する必要もない。
中途半端な1人1台端末が、さらに教員を悩ますことになるかもしれない。
※前屋毅 フリージャーナリスト
1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。最新刊は『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)。ほかに、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他の著書に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『洋上の達人-海上保安庁の研究-』『日本の小さな大企業』などがある。 ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)
『Yahoo!ニュース - 個人』(2020/11/20)
https://news.yahoo.co.jp/byline/maeyatsuyoshi/20201120-00208794/
前屋毅 | フリージャーナリスト
新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)の影響で一気に加速したのが、「GIGAスクール構想」を実現するための「1人1台端末」である。しかし、そこには思いがけない問題が潜んでいるようだ。
◆ さらに教室を狭くする1人1台端末
「GIGAスクール構想」では当初、1人1台端末は2023年度までに実現される予定だった。それが新型コロナでリモート授業の必要も叫ばれるなかで、早期の実現を目指すことになり、今年度中(来年3月中)に全国の大半の公立小中学校で1人1台端末が実現される見通しとなってきている。
そうしたなかで学校現場で浮上してきたのが、端末の保管場所の問題である。1人1台が支給されるのを前に、保管場所の確保が教育委員会から学校に指示されているという。
それも、「どこでもいい」ということではなさそうだ。「保管は教室内と指定されています」と、ある教員が打ち明ける。
タブレットやパソコンは貴重品であり、保管には安全を期すのが当然である。教室内での保管となるのも頷ける。
しかし、それは頭の痛いことである。先ほどの教員が続ける。
「ただでさえ狭すぎるのが、教室の現状です。そこに40人分のパソコンの保管場所を確保するとなると、狭い教室がさらに狭くなってしまうんです」
新型コロナ予防で「3密(密集、密接、密閉)」を避ける指導が学校では行われている。しかし狭い教室がさらに狭くなることで、3密状況に拍車をかけることになる。どう指導していくのか、教員にしてみれば頭の痛い問題なのだ。
教室内に保管場所を確保するとなれば、その管理も教員の仕事になってしまう。破損、紛失に気を遣わなくてはならなくなるわけで、教員にしてみれば新たな仕事が増えることになる。
◆ 持ち帰れない端末は役に立つのか
教室内に保管することになれば、子どもたちが自宅で利用することは不可能になる。それで、1人1台を活かした学習になるのだろうか。
自宅に端末のある子はそれで学習ができるが、自宅に端末のない子は端末を使った学習ができないことになる。「差」が生まれるわけだ。
その「差」があるなかで教員は指導しなければならないことになる。教員にとって、かなり頭の痛い事態になるかもしれない。
そもそも、なぜ、子どもたちが持ち帰ることを前提にしない1人1台端末なのだろうか。持ち帰ればこそリモート授業も可能になるし、自宅に端末がある子とない子の「差」も生じない。狭い教室をさらに狭くして、無理に保管場所を確保する必要もない。
中途半端な1人1台端末が、さらに教員を悩ますことになるかもしれない。
※前屋毅 フリージャーナリスト
1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。最新刊は『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)。ほかに、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他の著書に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『洋上の達人-海上保安庁の研究-』『日本の小さな大企業』などがある。 ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)
『Yahoo!ニュース - 個人』(2020/11/20)
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