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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

大阪:「君が代」不起立解雇撤回訴訟控訴審冒頭意見陳述(3)

2017年10月28日 | 日の丸・君が代関連ニュース
◎ 意 見 陳 述
山 田  肇

 「君が代」不起立を唯一の理由とする再任用取消の撤回を求める私たち3人の裁判の5月10日大阪地裁・内藤裁判長による判決の不当性について申し述べるとともに、以下の5点について公正な審理と判断を求めます。
 この裁判の大きな争点の一つは、「君が代」不起立をした教員に対して、「意向確認書」に署名捺印した者だけを再任用する、つまり、「君が代」の「踏み絵」を踏んだ者だけを再任用する、この府教委のやり方は憲法19条「思想・良心の自由に反する」のではないか、ということであったと考えています。
 しかし、判決は、これについて、「争点」15の眼目には入れず、「争点14(再任用合格決定の取消し・・・に裁量権の逸脱・濫用があるか)について」の「(エ)」で触れるのみです。しかも、判決文では前半部分を削って、「意向確認書は、職務命令に従うことの確認を求めるもの」とのみ書き、「君が代」の踏み絵の部分を隠しました
 しかし、府教委の「意向確認書」は、単に「職務命令に従う」かどうかの確認を求めたものではなく、「今後、卒業式・入学式等の国歌斉唱時を含む上司の職務命令に従います」の文言が示すように、「君が代」不起立した者に対して、今後は起立斉唱するかどうか、つまり「君が代」の「踏み絵」を踏むかどうかを突きつけるものでした。
 「判決」は、この前半部分の核心的なことには一切触れず、また、この「意向確認」が憲法19条違反かどうかも判断せず、「教職員が職務命令に従うことは当然のこと」と書き、府教委がやっている「君が代」の「踏み絵」を踏んだ者だけを再任用する、しかし踏まない者は再任用しない、クビにするという、この思想・良心を踏みにじる再任用採否のやり方を認めました。
 しかし、裁判官もご存じのように、「君が代」不起立は「歴史観ないし世界観」の問題であり、「思想・良心」の内容を形成すると、最高裁も認定しています。そして、宮川裁判官が言われたように、「君が代」不起立は「思想及び良心の核心の表出」であります。
 戦前の教師は天皇をたたえる歌である「君が代」を歌わせ、「日の丸」の旗をふって、森友学園の幼稚園でやっていたように教育勅語をたたきこんで、子どもたちを天皇の兵士に仕立て侵略戦争の戦場に送りました。これは歴史の真実です。
 子どもたちを人間としての成長に導くべき教師が、こんなことを二度としてはいけない。「教え子を戦場に送らない」。これは歴史から学んだ教育の出発点であり、教師としての良心であります。
 ルイ・アラゴンは、「教えるとは、希望を語ること。学ぶとは、誠実を胸にきざむこと」と詩に書きました。
 教師が歴史の真実を「誠実に胸にきざ」まないと、子どもたちに「希望を語ること」はできません。
 侵略と戦争の旗「日の丸」を仰ぎ、天皇をたたえる歌「君が代」を歌うことは、「誠実を胸に刻み」「歴史の真実」に立って子どもたちの教育を行おうと考える教師にとって、絶対にできないことであります。
 私は日々、子どもたちに、何が正しいのか、何が間違っているのか、自分で考えるようにと言ってきました。そのように子どもたちに言ってきた教師として、自分が間違いだと思うことを正しいとすること、「歴史の真実」に反することはできません
 「君が代」の起立斉唱は、日本の侵略戦争も教え子を戦場に送り出したことも、「日の丸」「君が代」もすべて正しかったと認めることになり、教師としての良心に反することです。
 これら「歴史観ないし世界観」、また、「思想・良心」を踏みにじる「君が代」起立斉唱の職務命令は「間接的強制」などではなく、まさに直接の強制であります。
 しかも、「君が代」不起立した者に対して、今後、起立斉唱を誓約せよとの「踏み絵」をつきつけ、「君が代」の「踏み絵」を踏まないと再任用を取り消すというのは、まさに「思想・良心」に対する直接的制約以外のなにものでもありません。
 かつてキリシタン弾圧で使われた「踏み絵」のごとく、府教委が「君が代」で立つかどうかという「踏み絵」を「君が代」不起立者に対してつきつけ、それで再任用を決めるという、このやり方が憲法19条「思想・良心の自由」に照らして是認できるのか、公正な審理と判断を求めます。
 2つめは、再任用審査会の審査のあり方です。
 第一審、2015年11月10日付け準備書面(4)及び別紙の「再任用教職員採用審査会議事録」で明らかですが、「君が代」不起立以外の体罰事例等では「戒告」以上の「減給」「停職」等の処分となってはじめて審査会の俎上に上がるのに、「君が代」不起立「戒告」処分を受けた者は全員、審査されています。
 そして、二度と「君が代」不起立しないと誓約してはじめて再任用「合格」となります。
 しかも、飲酒運転で停職3ヶ月の者や体罰及びその隠蔽による停職6ヶ月の者も再任用合格とされています。
 再任用の「審査」で、「君が代」不起立による「戒告」を他の事例の「減給」や「停職」以上に重く見るという、こんな不公平、不平等、不当、不合理な再任用採否に対する「審査」が許されていいのでしょうか。
 しかも、私の「戒告」処分は取り消されています。停職6ヶ月の者が再任用されているのに、処分が取り消された私は再任用取消が撤回されない、これは、まさに比例原則違反、平等原則違反だと考えます。
 甲第23号証、早稲田大学の岡田正則氏の『教育公務員の再雇用における行政裁量の限界』という論文では、「採否の判断基準をどのように適用して拒否判断に至ったのかを示していない」ならば、それは「裁量権の範囲を著しく逸脱し、またはその濫用にあたるものとして、違法」(P441、5行目から)と書かれています。
 しかし、府教委は「再任用教職員審査会の判断基準に関わるすべての資料」、また、「再任用教職員審査会に資料を提出する者及び合否の判断基準」を墨ぬりのまま未だ開示していません。
 再任用「採否の判断基準」も明らかにせず、また、それを「どのように適用」したのかも明らかにしないならば、先に述べた比例原則・平等原則違反と合わせ、再任用採否に関して府教委の裁量権の逸脱・濫用は明らかです。
 しかし、この再任用審査会の「判断基準」及びその「適用」、また、先に述べた不平等・不公平の運用についても、判決は一言一句も触れていません。
 本裁判においては、再任用「採否の判断基準」及びその再任用審査会での「適用」について、公正な審理と判断を求めます。
 3つめは「府国旗国歌条例」についてです。
 「府国旗国歌条例」は違憲・違法という私たちの主張に対して、地裁判決は「各地方ごとの状況」「実情に応じた対応」を上げ、条例は「違憲・違法ではない」としました。
 しかし、「君が代」を職務命令で強制していいという大阪だけのどんな「地方ごとの状況」があるのか?大阪だけのどんな「実情」があるのか?判決は一切書かず、「教育基本法と府国旗国歌条例との間に矛盾抵触」はない、条例は「違憲・違法ではない」としました。
 しかし、「府国旗国歌条例」は、教職員に対して「君が代」の起立斉唱を義務づけ、強制するものです。憲法19条「思想・良心」の自由と条例は「矛盾抵触」することは明らかです。この点についても公正な審理と判断を求めます。
 4つめは「勤務実績」についてです。
 私は37年間、高槻市の小学校で勤務し、最後の南平台小学校では希望の杜・施設内学級で7年間、「学校をつくる」取り組みを進めてきました。
 2011年度の校長の評価は、『業績・能力・総合評価ともS』でした。2013年8月6日、私の再任用合格取消が朝日新聞に掲載された記事の見出しに、『教員37年「君が代」の50秒で決めないで』とありました。
 私の処分は取り消されたにもかかわらず、「君が代」の50秒で教員としての「適格性」と「勤務実績」をすべて決め、合格していた再任用を取り消すことが果たして妥当なのか、公正な審理と判断を求めます。
 最後は「判断遺脱」の問題です。
 訴状の49ページに「原告山田は高槻市教育委員会の違法な内申に基づき大阪府教育委員会から違法な戒告処分を受けて,多大の精神的苦痛を被った。これらにより、原告山田が被った精神的苦痛を金銭に評価すると、金100万円を下らない」とあります。
 しかし、判決には、このことについて、一切、判断も言及もなく、「判断遺脱」の状態です。私の「精神的苦痛」と「金100万円」の賠償について、公正な審理と判断を求めます。
 以上、5点について、公正な審理と判断を求めます。

『グループZAZA』(2017-10-25)
http://blog.goo.ne.jp/zaza0924/e/772f4bccd192f2d594a15c8d31111073
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