《子どもと教科書全国ネット21ニュースから》
◆ 「公正かつ適正」な教科書採択への第一歩
非公開・無記録の秘密主義奄打ち破る干葉県民の闘い
2016年4月20日、千葉県教育委員会会議は「会議規則の一部を改正する規則」を制定しました。
「会議録」を「議事録」と改め、議事の「大要」を記載するとしていたものを議事の「内容」を記載するとし、「議事録は公表するものとし、非公開とした案件は非公開とした理由が消滅した場合には速やかに公表する」という条項を新設しました。
これは、教科書採択に関して「詳細な議事録を作成し、それを公開した場合、今後、同種の会議における率直な意見交換や、意思決定の中立性が損なわれるおそれがある」(1月8日、教科書と教育を考える千葉県民の会《以後、県民の会と略称》の公開質問状に対する県教育長の文書回答より)ため「非公開・無記録」にするという恐るべき前近代的な秘密主義を、ある程度反省した、千葉県教育行政の民主化の第一歩として、評価できます。
◆ 県内全15採択区では育鵬社は1冊も許していない
千葉県議会は、日本会議に属する自民党議員が大多数を占め、知事は「教科書改善の会」(育鵬社教科書作成)の役員だった森田健作であり、県教委の有識者会議は麗澤大学やモラロジー研究所の幹部が動かしています。
彼らは、扶桑社・自由社・育鵬社などの教科書が登場以来、右翼団体の請願・意見書、街宣車による市民集会の妨害、学校訪問などさまざまな手段を使って、それらを採択せよと県内各地で政治的圧力を加えてきましたが、県内全15採択区では、民主的な議員と市民、教育研究者、教員の活動で、一冊の採択も許していません。
◆ 日本会議議員の「高校日本史A・B」採択妨害
しかし、2012年、実教出版「高校日本史A」(日A302)が検定合格すると、日本会議派の県会議員は、同教科書の南京大虐殺の被害者数、第二次世界大戦の被害者数地図についての記述を非難、さらに東京都や神奈川県の採択妨害を知ると国旗国歌法側註記述を加えて県議会の度ごとに攻撃を繰り返し、教科書採択の教育委員会会議議決化を要求してきました。
県教委は,当初2年間、同教科書は「わかり易い資料や図版が多く基礎学習に適している」という選定理由を挙げて、「検定済みであり、これ以上のコメントをする必要はない」としていました。
実教出版「高校日本史A・B」は新旧併せて50校で採択されていましたが、教育長は、2013年11月20日、高校日本史A・Bの頁を示して生徒に混乱が生じないよう指導するよう通知を発出、採択妨害に転じました。
翌年8月4日には前記3事例についての指導資料を含めた詳細な指導計画の提出を採択の条件とし、2015年4月24日には指導計画の再提出、管理職の授業監視と報告を要求しました。
しかし、2016年度には、南京大虐殺、第二次世界大戦についての指導計画提出要求は撤回されました。
◆ 県立中学校へ育鵬社「歴史・公民」の押しつけ
2014年3月20日、県教委は、それまで現場担当教員・管理職、地域教員代表、指導主事で構成された専門調査委員会の推薦に基づき、県教科用図書選定審議会が選定、県教育長が専決するという、現行の教科書採択の仕組みとしては最大限に教員・学校の意見が尊重されていた県立中学校教科書採択の規則を、県教育委員会会議の議決事項にしてしまいました。
2015年の採択で、県教委は6月2日、専門調査委員会に各教科とも3社の推薦、選定審議会での順位付け答申を指示しながら、6月県議会で「近隣諸国条項の撤廃を求める意見書」が可決されたことを受けたのか、会議も開かず記録も残さず、専門調査委員会の推薦権を奪い、8月7日、選定審議会に3社推薦を答申させました。
8月26日に臨時教育委員会議を開き、初めての県立千葉中学校・東葛飾中学校の教科書議決が行われましたが、歴史と公民は育鵬社1社しか提案しませんでした。そして、8月31日まで非公開という規則を無視して,直ちに公表しました。自らつくったルールを自ら無視して、育鵬社「歴史・公民」を採択したとしているのです。
◆ 民主的な教科書採択への展望
日本会議派の不当な政治介入によって、実教出版「高校日本史A・B」採択校は10校から6校へと減少させられ、県立中学校2校へ育鵬社「歴史・公民」が強制されましたが、県民の会、教育タウンミーティング、高教組、全教などの市民団体や教組と日本共産党、市民ネット県議団と共同した県議会・県教育委員会への働きかけは大きな成果を生みだしつつあります。
2015年12月18日に県民の会が県教育長宛に提出した「県立中学校教科用図書採択に関する公開質問状」は、指定期日内に文書回答され、回答に対する指導課との話し合いが3月15日に実現、その席に実教出版「高校日本史A・B」採択校担当教員も参加、授業の実態にそぐわない不適切な県教委指導の実態が生々しく報告されました。
その結果、「高校日本史A・B」の採択を「条件づき」とする発言は撤回され、3月25日には、日本共産党県議岡田幸子文教委員、県民の会事務局長川鍋と西原県教委指導課副課長との間で、「平成30年度の教科書採択時までに、教育委員会会議の在り方について、採択のやり方や公開についても含めて検討し、それに沿った形で運営する」ことが文書で確認されました。
政治状況の変化が激しい今日、どの程度実現するのか不透明ですが、千葉県の教科書採択の民主化にとって大きな前進といえるでしょう。(かわなべみつひろ)
『子どもと教科書全国ネット21ニュース 109号』(2016.8)
◆ 「公正かつ適正」な教科書採択への第一歩
非公開・無記録の秘密主義奄打ち破る干葉県民の闘い
川鍋光弘(教科書と教育を考える千葉県民の会事務局)
2016年4月20日、千葉県教育委員会会議は「会議規則の一部を改正する規則」を制定しました。
「会議録」を「議事録」と改め、議事の「大要」を記載するとしていたものを議事の「内容」を記載するとし、「議事録は公表するものとし、非公開とした案件は非公開とした理由が消滅した場合には速やかに公表する」という条項を新設しました。
これは、教科書採択に関して「詳細な議事録を作成し、それを公開した場合、今後、同種の会議における率直な意見交換や、意思決定の中立性が損なわれるおそれがある」(1月8日、教科書と教育を考える千葉県民の会《以後、県民の会と略称》の公開質問状に対する県教育長の文書回答より)ため「非公開・無記録」にするという恐るべき前近代的な秘密主義を、ある程度反省した、千葉県教育行政の民主化の第一歩として、評価できます。
◆ 県内全15採択区では育鵬社は1冊も許していない
千葉県議会は、日本会議に属する自民党議員が大多数を占め、知事は「教科書改善の会」(育鵬社教科書作成)の役員だった森田健作であり、県教委の有識者会議は麗澤大学やモラロジー研究所の幹部が動かしています。
彼らは、扶桑社・自由社・育鵬社などの教科書が登場以来、右翼団体の請願・意見書、街宣車による市民集会の妨害、学校訪問などさまざまな手段を使って、それらを採択せよと県内各地で政治的圧力を加えてきましたが、県内全15採択区では、民主的な議員と市民、教育研究者、教員の活動で、一冊の採択も許していません。
◆ 日本会議議員の「高校日本史A・B」採択妨害
しかし、2012年、実教出版「高校日本史A」(日A302)が検定合格すると、日本会議派の県会議員は、同教科書の南京大虐殺の被害者数、第二次世界大戦の被害者数地図についての記述を非難、さらに東京都や神奈川県の採択妨害を知ると国旗国歌法側註記述を加えて県議会の度ごとに攻撃を繰り返し、教科書採択の教育委員会会議議決化を要求してきました。
県教委は,当初2年間、同教科書は「わかり易い資料や図版が多く基礎学習に適している」という選定理由を挙げて、「検定済みであり、これ以上のコメントをする必要はない」としていました。
実教出版「高校日本史A・B」は新旧併せて50校で採択されていましたが、教育長は、2013年11月20日、高校日本史A・Bの頁を示して生徒に混乱が生じないよう指導するよう通知を発出、採択妨害に転じました。
翌年8月4日には前記3事例についての指導資料を含めた詳細な指導計画の提出を採択の条件とし、2015年4月24日には指導計画の再提出、管理職の授業監視と報告を要求しました。
しかし、2016年度には、南京大虐殺、第二次世界大戦についての指導計画提出要求は撤回されました。
◆ 県立中学校へ育鵬社「歴史・公民」の押しつけ
2014年3月20日、県教委は、それまで現場担当教員・管理職、地域教員代表、指導主事で構成された専門調査委員会の推薦に基づき、県教科用図書選定審議会が選定、県教育長が専決するという、現行の教科書採択の仕組みとしては最大限に教員・学校の意見が尊重されていた県立中学校教科書採択の規則を、県教育委員会会議の議決事項にしてしまいました。
2015年の採択で、県教委は6月2日、専門調査委員会に各教科とも3社の推薦、選定審議会での順位付け答申を指示しながら、6月県議会で「近隣諸国条項の撤廃を求める意見書」が可決されたことを受けたのか、会議も開かず記録も残さず、専門調査委員会の推薦権を奪い、8月7日、選定審議会に3社推薦を答申させました。
8月26日に臨時教育委員会議を開き、初めての県立千葉中学校・東葛飾中学校の教科書議決が行われましたが、歴史と公民は育鵬社1社しか提案しませんでした。そして、8月31日まで非公開という規則を無視して,直ちに公表しました。自らつくったルールを自ら無視して、育鵬社「歴史・公民」を採択したとしているのです。
◆ 民主的な教科書採択への展望
日本会議派の不当な政治介入によって、実教出版「高校日本史A・B」採択校は10校から6校へと減少させられ、県立中学校2校へ育鵬社「歴史・公民」が強制されましたが、県民の会、教育タウンミーティング、高教組、全教などの市民団体や教組と日本共産党、市民ネット県議団と共同した県議会・県教育委員会への働きかけは大きな成果を生みだしつつあります。
2015年12月18日に県民の会が県教育長宛に提出した「県立中学校教科用図書採択に関する公開質問状」は、指定期日内に文書回答され、回答に対する指導課との話し合いが3月15日に実現、その席に実教出版「高校日本史A・B」採択校担当教員も参加、授業の実態にそぐわない不適切な県教委指導の実態が生々しく報告されました。
その結果、「高校日本史A・B」の採択を「条件づき」とする発言は撤回され、3月25日には、日本共産党県議岡田幸子文教委員、県民の会事務局長川鍋と西原県教委指導課副課長との間で、「平成30年度の教科書採択時までに、教育委員会会議の在り方について、採択のやり方や公開についても含めて検討し、それに沿った形で運営する」ことが文書で確認されました。
政治状況の変化が激しい今日、どの程度実現するのか不透明ですが、千葉県の教科書採択の民主化にとって大きな前進といえるでしょう。(かわなべみつひろ)
『子どもと教科書全国ネット21ニュース 109号』(2016.8)
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