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日本は米国に追随せず、国際法違反のイスラエルによる占領を真正面から批判する外交方針をとれるか

2020年05月05日 | 平和憲法
 ◆ パレスチナ人を苦境に追いやるトランプの中東和平案 (週刊新社会)
室蘭工業大学大学院工学研究科准教授 清末愛砂

 1.和平をもたらすための最低限の条件

 2020年1月28日、トランプ米大統領がイスラエル/パレスチナ問題に関する新和平案(新中東和平案)を提示した。
 同問題の発生にかかる根本的要因はイスラエルの占領にある。そうである以上、紛争解決は占領の終結が達成されない限り不可能である。これは最低限の条件であるはずだが、新和平案は後述するようにそれをことごとく無視し、完全にイスラエルの利益に適うものとなっている。
 そうであるにもかかわらず、トランプは恫喝するかのように「パレスチナ人にとっての最後の機会になりうる」と演説したのである。
 2.イスラエルとはどのような国家か

 1948年5月、イギリスの委任統治下に置かれてきたパレスチナに「ユダヤ人国家」イスラエルが誕生した。ユダヤ人国家を標榜するということは、非ユダヤ人はその国家の主体とはなり得ないことを意味する。
 事実、長年、パレスチナに住み続けてきたパレスチナ人(主にはパレスチナに住むムスリムやクリスチャンのアラブ人のこと)は、イスラエルの建国の前後にユダヤ人国家の建国を求めるシオニスト軍により故郷から追放されたり、虐殺されたりしている。
 すなわち、イスラエルとはパレスチナ人の多大な犠牲の上に成立した国家なのである。
 現在にいたるまで、多数のパレスチナ難民ヨルダン、レバノン、エルサレムを含むヨルダン川西岸地区やガザなどで故郷への帰還を果たせぬまま暮らしている。
 1967年の第三次中東戦争の結果、イスラエルは東エルサレム、ヨルダン川西岸地区、ガザを占領した。
 これらの地域でパレスチナ人は移動の権利、水へのアクセス権等の日常生活に不可欠な諸権利を否定されており、またイスラエルの思うままに軍事攻撃にさらされている。
 ガザイスラエルによる封鎖により「野外監獄」の状態にあり、そのなかで人々は将来への希望を見出せないまま暮らすことを強いられている。
 こうした歴史に鑑みると、イスラエル/パレスチナ間題の解決に向けた主要な論点が、①パレスチナ国家の樹立とともに、②難民の帰還権の担保、③1967年に占領した地区の解放であることが浮き彫りになる。
 3.新和平案の問題点

 新和平案はパレスチナ国家の樹立を認める一方、
  ①東西エルサレムをイスラエルの首都とする(=パレスチナ人が将来のパレスチナ国家の首都として主張してきたエルサレムの占有をイスラエルに認める)、
  ②占領下でイスラエルがヨルダン川西岸地区に建設した入植地を基本的にイスラエルの領土とする
  ③難民の帰還権を認めない
 等、パレスチナ人にとって大変屈辱的な内容から構成されている。

 パレスチナ難民の尊厳を著しく奪い、かつ明白に国際法違反のイスラエルの占領、およびその政策に基づいて繰り広げられてきた悪行を認めるものにほかならない。
 同時に国際法の秩序に対する侮辱にもあたる。

 当然ながら、新和平案の発表以来、パレスチナ人は猛反発してきた。
 イスラエルの同盟国である米国はそれに耳を傾ける様子はない。
 そもそも占領者として圧倒的強者の立場にいるイスラエルの同盟国である米国が仲介者として間に入ること自体、大きな矛盾をはらむものである。
 常に米国に追随してきた日本は近年、イスラエルとの経済・技術(とりわけ軍事技術)連携を種極的に進めている。こうした日本の対応もまたイスラエルの立場をより一層支えることになる。
 言い換えると、それはパレスチナ人を苦境に追い込むことに加担する行為である。
 人権に根差した平和構築の観点からイスラエル・パレスチナ問題の解決を促進するためには、新和平案への反対に加えて、占領者を利するような連携をせず、国際法違反の占領を真正面から批判する外交方針をとることが日本に求められているのではないだろうか。
『週刊新社会』(2020年4月28日)

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