☆ 靖国へ勝手に祀(まつ)るな (東京新聞【本音のコラム】)
鎌田 慧(かまたさとし・ルポライター)
かつて植民地にされて名前も日本名、日本軍に組み込まれて戦死した韓国人が靖国神社に合祀(ごうし)されている。遺族はそれは勝手な行為で人格権を侵害された、として訴えていた。
17日、最高裁は除斥期間が過ぎているとして上告を棄却した。「時効」で逃げた判断回避。訴えに正面から向き合わない悲しい決定だ。
東条英機など、朝鮮半島を侵略した加害者としての戦犯も合祀されている。
戦死を美化する神社に「招魂」された本人および遺族の屈辱と苦痛を無視した判決だった。
ただ4人のうち三浦守裁判官だけが「朝鮮との歴史的関係、戦死等に至った経緯、戦前における靖国神社の役割などに鑑みると、被合祀者を敬愛追慕する上で平穏な精神生活を維持することが妨げられたという主張には相応の理由がある」と人間的に対応、高裁での審理のし直しを主張した。
国は靖国神社へ合祀する戦没者の名簿を遺族に無断で提供してきた。
靖国は一宗教団体でしかない。横流しはプライバシー権の侵害であり、政教分離の規定に違反する。
遺族の訴えは、日本人にとっても見逃すことのできない精神的な問題だ。
世の中がキナ臭くなってくると靖国神社がクローズアップされる。
1985年の中曽根康弘首相の参拝以来、政治家の公式参拝が強まっている。
戦争は宗教を利用したがる。明らかな憲法違反だ。
『東京新聞』(2025年1月21日【本音のコラム】)
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