たんぽぽ舎【TMM:No5068】2024年8月19日
☆ 無責任な政権投げ出しを裏金引責と偽装
「メディア改革」連載第158回 浅野健一(アカデミックジャーナリスト)
8月14日午前10時50分ごろ、千葉県流山市にある両親の墓参りに向かう車の中で、NHKラジオを聞いていたら、「総裁再選を目指していた岸田文雄首相が9月の総裁選への不出馬を党幹部に伝えた」と速報。「午前11時半から記者会見する」。NHKのスクープか。民放は遅れて伝えた。
NHKは首相官邸での記者会見を中継。記者会見は30分前に内閣記者会に通告され、林芳正官房長官、官房副長官が同席しない異例の事態だった。司会は7月に就任した小林麻紀内閣広報官だ。
小林氏は外務省の外務報道官だった6月26日の会見で、米兵による少女強かん事件を半年間隠蔽していたことを、「個別具体的な事案の内容に応じて適切に判断して対応している」と居直った官僚だ。
岸田氏は会見で、外交日程が区切りを迎えたと述べ、「総裁選で自民党が変わる姿を示すことが重要で、最も分かりやすい最初の一歩は私が身を引くことだ」「「総裁選には出馬しない。新たなリーダーを一兵卒として、支えていくことに徹する」と発言した。
記者会幹事社の日経新聞・秋山記者が「日本外交の顔が見えてくるようになった今、出馬して政権を維持する選択はなかったのか」と質問。幹事社の質問内容は、内閣記者会の常勤幹事社19社の総意で決まる。
☆ 安倍政治継承で対米隷従の大軍拡
岸田外交は米国隷従で、日本の三権の上にある日米合同委員会で決まったことに従って外交・軍事政策を決めているだけで、外国からは米国の植民地と見なされている。米軍は日本の無条件降伏後79年、占領を続けている。ロシアの「侵攻」を非難しながら、イスラエルの大虐殺は容認する外交のどこが、独自なのか。
他の記者も岸田氏に敬語を乱発し、甘い質問ばかりが続く。政権投げ出し、後は野となれ山となれの無責任辞任表明ではないかという怒りの質問が一つもない。
ここ数日、森山裕総務会長(菅・岸田両氏を決めた密談に参加)と2日連続会談するなど、政権・党幹部と連日、高級料理店で会談していたことなど、具体的な質問をすべきだ。
最後に北海道新聞記者が、「麻生太郎副総裁と相談し、いつ伝えたのか」と聞いたが、「いろいろな方に考えをお伺いしたが、最後は自分で決定するのは当然のこと。私自身が決定した」とだけ回答した。麻生氏との会談の内容を聞いているのに答えない。誰も更問いをしない。
真実は、総裁選を控え、岸田派以外の派閥から不支持を通告されて、総裁二期目を諦めたのだろう。政権の支持率が低迷、党の支持率も下げ止まりで、八方ふさがり状態に陥り、万事休すという状態になった。3年前の菅義偉氏と同じ状況に置きこまれたのだ。
☆ 「党の顔」変更に騙されず自民党解散を
司会の内閣広報官が「この後、総理は予定があるので、会見は終わらせていただきたい。今、挙手いただいている社は、追って書面で御質問を本日中に1問、担当宛てにメールで送ってください。書面にて回答する」と述べて閉会した。いつものパターンだ。
会見はたった20分。安倍晋三、菅義偉両氏の辞任会見に比べても、異常に短い。テレビ中継で見る限り、一方的な会見終了に抗議の声もなかった。官邸での首相・官房長官の会見は内閣記者会の主催だが、官邸報道室がすべて仕切っている。
内閣記者会の規約に違反している。そもそも、フリー記者は12人が登録されているが、抽選で一人入れるだけ。私は登録もできない。キシャクラブメディアの劣化が止まらない。私が記者を始めた1970年代の内閣記者会は、佐藤首相の会見をボイコットすることもあった。
2012年12月の第二次安倍政権以降、内閣記者会はまったく権力監視機能を失った。キシャクラブ制度と自民党は両方、一緒に、解体すべきだ。
岸田氏は会見で、「一兵卒として活動する」と繰り返したが、軍隊用語はやめるべきだ。米雑誌に「軍国主義者」と評された岸田氏。安倍晋三氏より危険で悪質な政治家だ。
「新しい資本主義」「エコノミック・スプリット」(血気)などの用語を使い、経済復興を誇ったが、岸田自公政権で民衆は困窮化している。
岸田氏は「憲法改正については、緊急事態条項の条文化の作業や、自衛隊の明記の論点整理を進めている。着実に実行してまいりたい」と意欲を示した。憲法を無視し、軍国主義化を進める岸田氏に憲法を語る資格はない。
岸田氏は「新総裁の下で真のドリームチームを作ってほしい」と呼び掛けたが、自民党は22年7月8日の安倍氏暗殺の後、統一協会との癒着が発覚した時点で解散すべきだった。私は2年前から、「紙の爆弾」で自民党は解党・解散すべきだと訴えてきた。
https://isfweb.org/post-10700/
https://isfweb.org/post-32871/
岸田総裁は今すぐ党解散届を総務相に出すべきだ。
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