傍聴者4人が入室すると、記者たちは皆、教育長及び教育委員たちをカメラに収めていました。??今日の議題のなかに最重要かつ特異な議題があるのかな…。記者は10人ほど。通常は数人の傍聴なので倍ほどの記者数。公開の定例会が終了し、一般傍聴者が退出した後、記者にだけ説明する場合があるようなので、今日もそれがあったのかもしれません…。明日の各紙朝刊で判明するでしょう。
★ 答申やプランに怒り
公開議題は、
議案が
都立高校(中等教育学校後期課程及び特別支援学校高等部を含む)用教科書採択について。
報告が
①公立学校におけるいじめ防止に係る取組の推進状況の検証、評価及びいじめの防止等の対策を一層推進するための方策について(答申)
②都立高校におけるチャレンジサポートプラン(案)について
③TOKYOデジタルリーディングハイスクール事業(TOKYO教育DX推進校)の研究報告について
でした。
都立高校用教科書採択については、各学校からあがってきたものに異論をはさむ意見はなく、そのまま承認、採択となりました。
非公開議題は、議案が
④都教委の権限に属する事務の管理及び執行の状況の点検及び評価(2023年度分)について
⑤教員の懲戒処分等について4件(議案になる懲戒処分は戒告ではない重い処分)、
報告にも懲戒処分が1件ありました。
議案となった重い懲戒処分は、今回も破廉恥行為なのか。
★ ① 公立学校におけるいじめ防止に係る取組の推進状況の検証、評価及びいじめの防止等の対策を一層推進するための方策について(答申)
文科省の動きに合わせ2014年度から設置された、都教委いじめ問題対策委員会。同会は2年ごとに、いじめ防止に係る取組の推進状況の検証、評価及び今後の方策を答申してきました。今回の答申は2022年11月以降5回の会議を開催し、審議を重ねたうえでの答申ということです。
検証の結果、
「ほとんどの生徒がいじめは良くないと認識していることは、小学校段階から、継続的にいじめやいじめ防止に関する授業を行なってきた成果といえる」
「都教委が作成した教職員向けデジタルリーフレットや研修の取組は、非常に効果的と考える」
等、7点にわたって「成果」が示されました。
その上で今後「一層推進するための方策」として、
「各校において年3回以上実施する教員研修について、学校や区市町村教委が…研修内容や研修方法、研修資料等を工夫する」
「各学校が年3回以上実施するいじめに関する授業について、未然防止の観点に重点を置き、児童・生徒が主体的に考えることができるように授業のあり方を検討する」
等を挙げました。
授業は、小・中学校では道徳で、高校は人間科で行なうのだそうです。
しかし、なぜか、いじめを目撃した時点ですぐに皆で考え合うという設定は、答申にはありません。
いじめアンケートの実施(多分、年間3回以上 本答申には記載なし)、授業を年3回、教員研修を年3回行なっても、いじめがなくならないのはなぜかについて、果たして14人の委員は考えたのだろうかと疑問に思います。委員だけでなく、都教委の中枢にいる人たちも教育長・教育委員たちも。
なお、答申はスクールカウンセラーなどの専門職の活用を言いますが、都(小池都知事)は、昨年度末にこれまで働いてきたスクールカウンセラーのうち250人の首切り(不採用=雇止め)をしました。
その点について答申は一言も触れません。触れるべきでしょう。
ところで、いじめが悪いのは、授業をしなくても子どもたちは知っています。いじめをしてしまう子は、自身の心が満たされていないが故にいじめをはけ口にしてしまうのです。
充実した学校生活、自分の居場所がある学校ならば、いじめは起きません。都教委が学校を支配する以前の1990年代に、私は在職していた中学校でそれを体験したので断言するのです。
都教委が学校支配を止め、以前のように教員たちが論議し学校をつくるようになれば、教員が働き甲斐を感じ、子どもたちに目が向くようになるはずです。子どもたちが楽しいと感じる取組に全力で当たるようになるでしょう。そうすれば、ハレンチ行為に走る教員も減るでしょう。
なお、いじめ防止推進法第28条第1項が規定する「いじめ重大事態」について、答申は一言も触れていません。2年前の答申のときは、町田市の小学生がいじめで自殺に及んだ時でしたのに、触れませんでしたし、この10年、答申は東京で実際に起きた「重大事態」について常に触れてきませんでした。ですから私はなんのための答申?と思わざるを得ません。
ネットで検索したら次のような報道がありました。
東京新聞Web(2020.10.23)は「いじめ61万件 過去最多を更新 『重大事態』も2割増の723件」、
読売新聞Web(2023.10.4)は「『いじめ』1割増、過去最多の68万件 重大事態923件・『指導死』は2人」。
この報道は東京とは関係ない、とでもいうのでしょうか。答申は「いじめの認知件数が増えてきていることから、軽微ないじめも積極的に認知することができるようになってきている」と記します。一面それは事実であっても、東京の学校、都・市教委が「重大事態」を見逃し、保護者からの苦情申し立てによってそれが明らかなった事例が後を断っていないことを答申は(都教委は)真摯に受け止めるべきです。
★ ② 都立高校におけるチャレンジサポートプラン(案)について
このプランは、「誰一人取り残さない教育の実現に向けて、困難を抱える生徒に対する具体的な支援策」を示すのだと言います。「困難を抱える生徒」とは、
不登校・中途退学を経験した生徒、
日本語指導が必要な生徒、
ヤングケアラー、発達障害の(可能性がある)生徒とのこと。
都民からの声も聴き(8月22日から9月20日まで)、来年度から開始するとのことです。来年度は、「ユースソーシャルワーカーの派遣による課題を抱える生徒への支援の実施」等を挙げています。
プランは定時制課程について、「困難を抱える生徒が多く在籍する定時制課程では、昼夜間定時制課程やチャレンジスクールでは入学希望に十分に応えられていない一方、夜間定時制課程では極端な小規模化が進むなど、受入環境に課題が生じてい」ると言い、立川高校だけでなく小山台高校、桜町高校、大山高校、北豊島工科高校、蔵前工科高校、葛飾商業高校の夜間定時制課程の募集停止(2028年度末閉課程予定)を明記しています。
倍率が1倍を超えるチャレンジスクールに合格しなかった生徒は進学先がない、となってしまいます。これについて、教育委員は誰ひとり質問も異論も出しませんでした。
夜間定時制ならば進学できるという生徒は、都教委の言う「誰一人取り残さない教育」の対象にしないということなのか。怒りしかありません。
★ ③ TOKYOデジタルリーディングハイスクール事業(TOKYO教育DX推進校)の研究報告について
「デジタルを活用することで蓄積される様々な教育データを集計・分析し、分析結果を指導改善や授業改善に活用する。そのための実践的な取組を行い、その効果や有効性について検証するとともに、研究成果を可視化及び展開することで、エビデンスに基づく生徒への指導を推進する」ことを目的として、この2年間、都教委が指定した19の推進校で実践的な研究をしてきた。今年度からはさらに4校を追加し、「教育データ利活用実証研究校」に指定して研究を進めるとのことです(都教委HPに記載あり)。
すでに全ての都立高校に導入されているシステムは、統合型校務支援システム(成績や出欠、保健情報等を一元管理、蓄積するシステム)、及び定期考査採点・分析システム(各生徒の紙の答案用紙をPDF化し、デジタル採点するシステム)とのこと。
保健室来室記録で不登校を未然に防げるとか、採点・分析により各生徒に復習すべき問題の提示も可能となるなど、利点ばかりを強調します。
データの収集・保管は高校の3年間だけなのでしょうか。それ以前から、卒業後も、とならない保証があるでしょうか。とても気になります。
『レイバーネット日本』(2024-08-23)
http://www.labornetjp.org/news/2024/0822nezu
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