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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

過労死・過労自殺は「人間の尊厳」の否定である

2009年03月25日 | 格差社会
 【2・28人権シンポ集会資料から】
 ◆ 過労死・過労自殺は「人間の尊厳」の否定である

2009年2月28日
働くもののいのちと健康を守る東京センター
色部 祐

1、史上最高値となった過労死・過労自殺の労災認定

 厚生労働省の昨年5月の発表によれば、過労死の2007年の労災認定数は392件であった。
 一方、精神障害等の認定数は268件であり、その内、自殺の件数は81件であった。
 1997年の認定件数は、過労死73件であり、精神障害等は2件(内自殺2件)であるから、過労死は5.37倍、過労自殺を含む精神障害は実に134倍となる。
 過労死の認定は、請求件数の40%前後、精神障害等は約30%未満であり、それゆえ半分以上の請求人は認定されずに涙を飲んでいる実態である。
 また労災認定の困難さから請求を断念する被災者・遺族は相当数に登り、従って認定件数は実際に過労死、過労自殺を含む精神障害で倒れた労働者の氷山の一角に過ぎないと言える。

2、なぜ増大するのか

 労働を通じて脳・心臓疾患が発症し死亡する、また労働を通じてうつ病に罹患し、また自殺に至ると言う日本の労働者の「異常」な実態が指摘されてから、すでに30年以上はた経つが、犠牲者は減少するどころか増え続けている事実は、これまた「異常」であると言わざるを得ない。
 その原因を簡潔的に挙げれば次の諸点であろう。
 1)休息を奪い、睡眠を奪う長時間・過密労働
 2)24時間稼動社会に対応したさまざまな産業・職種での深夜・交代制勤務など非生理的労働の広がり
 3)一連の労働法制の改悪による不安定雇用、非正規労働者の増大と正規雇用労働者の減少などによる労働条件・労働環境の低下
 4)国際競争に打ち勝つことなどを大義名分とした、職場でのパワーハラスメント、セクシャルハラスメント等の人権蹂躙の拡大
 5)成果主義的人事管理による労働者間の競争の激化と連帯感の希薄化
 6)長時間労働や社会保障の改悪による受診機会の喪失、受診抑制の広がり
 7)日本の企業の「企業の社会的責任」(CSR)、「法令遵守」(Compliance)の欠如など
3、国際人権規約に照らして考える
 国際人権規約B規約第8条は、「何人も隷属状態に置かれない」と述ぺ、さらに「何人も強制労働に服することを要求されない」と指摘している。
 更に第9条は「すべての者は、身体の自由及び安全についての権利を有する」と謳っている。
 過労死・過労自殺の実態は、課題・ノルマ遜行のため長時間労働に迫いやられ、成果主義的人事管理の下で上司から人格を侵害する罵声を浴びせられ、分断された職場の同僚からの支援も無く、孤立の中での労働を余儀なくされているのである。
 家族との団欒の時間も奪われ、子供たちの成長にも目配りをすることもままならない。
 土日も働き、帰宅してもコンピュターに向かい、業務遂行をする。連日5時間未満の睡眠で心身の不調を自覚するも、医療機関に受診する機会を得られず、その結果、脳・心臓疾患の発症やうつ病による自殺へと追いやられていく。
 過労死・過労自殺は「突然死」であり、その多くは愛する家族に看取られること無く、最後の別れの言葉を交わらせること無く旅立っていく。
 まさに人間の尊厳が蹂躙された実態でなくてなんであろうか。

4、国際水準から日本の労働実態を見直す
 過労死・過労自殺を速いテンポで減少させ、また防止するためにの有力な手立ての一っは、国と企業が国際的基準から学び、日本の職場と社会の中に国際人権規約の精神を生かしていくことであろう。
 その立場の実践こそ、国際社会の中で日本が「名誉ある地位を占める」ことに繋がっていくことだと確信する。
※「過労死」の定義:
 仕事による過労・ストレスが原因のひとつになって、脳・心臓疾患、精神疾患等が発病し、死亡または重度の障害を残すこと。(過労死弁護団全国連絡会議)
※「過労自殺」の定義:
 過労による大きなストレスを受け、疲労が蓄積され、場合によっては「うつ病」を発症し、自殺にいたること(過労死弁護団全国連絡会議)

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