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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

日本学術会議任命拒否問題を、岡田正則早稲田大学教授が語る

2020年12月31日 | 平和憲法
  《教科書ネット21ニュースから》
 ◆ 日本学術会議への人事介入問題 民主主義が破壊される
   任命拒否にあった当事者の一人岡田政則さん(早稲田大学教授)に聞く

 <今回の問題は「学問の自由への侵害」などと言われていますが、問題の本質はなんだとお考えでしょうか。>
 安倍政権になって、政府が自分たちの権力行使について、ブレーキをかけようとする仕組みを次々と壊してきました
 先ずは、2013年以降、霞が関の官庁人事を内閣府人事局が管理する、つまり、官邸が管理することによって官僚が政権に逆らわないようにしました。
 政権の方針に反するような官僚は切って捨てるという、恐怖政治をまず官僚機構のなかでつくって、官僚の合理性によって歯向かうことがないようにしたわけです。
 2つ目は、内閣法制局の破壊です。
 安保関連法の閣議決定の時、当時の内閣法制局長官が「憲法違反だ」として止めようとした。
 これに対して、安倍政権は長官の首を切り、外交官だった人を長官に持ってきて、ブレーキ役を放棄させるという状況をつくり出しました。
 3つ目は、モリ・カケ・サクラ問題で、公文書管理を破壊しました。
 文書を改ざんする、廃棄する、隠すということは、国民監視を排除するということに他ならないわけで、現在でも、出すべき文書を出さない、残すべき文書を廃棄してしまう、こういうことが平気で行われています。
 4つ目が、地方自治の破壊です。
 辺野古埋立てをめぐって、沖縄県を見せしめにして、地方自治体が政府に対してどんなに抵抗をしても無駄なんだ、しかも、政府側が違法行為をやっても、すべて文句を言えないようにしています。
 5つ目は、検察官人事です。
 これは黒川さんが麻雀賭博で辞めさせられましたが、本質は官邸が検察組織全体をコントロールしたというのが実情です。
 公文書改ざん・廃棄は刑法上の犯罪です。そのような権力犯罪を検察官が起訴しなければならないのに、政権の関係者あるいはお友達だということで、起訴されない状況をつくってきました。
 6つ目が、今回の学術会議への人事への介入です。
 これは学術会議が独立の立場で政権の政策などを批判的に検討する、そういうことをできなくしようとすることだと思います。
 学術会議を無力化する、あるいは破壊するということができれば、次は大学とかメディア、弁護士会のような公共団体、裁判所、さらには一般市民の活動にまで広がります。
 補助金や施設は政権に従順に従うことが前提条件だ、となる危険性が大きいわけです。
 <菅首相の国会答弁は、後付けで、2転3転している状況があります。>

 首相自身がきちんとした考えをもって、任命拒否したわけではなく、まず学術会議を破壊しようというのが狙いでしょう。違法行為をやってから、なんとかごまかそうとしているわけです。
 首相には任命の可否を判断する基準がありませんから、制度上拒否権は与えられていないのです。6名排除の理由をなんとか後付けでしていますが、結局、自分自身に基準がないわけですから、とってっけたように「総合的・俯瞰的」と言いました。
 これが全然説明にならなければ、「多様性の確保」と言い、6人を排除したらかえって多様性が確保できないことを突っつかれると、今度は「学術会議が事前に名簿を持ってきて調整しなかったからだ」と、違法な行為を嘘で塗り固めようとしているのが現状です。
 また、菅首柑は、任命拒否を正当化する根拠として憲法15条1項を持ち出してきました。
 この条文は、国民の公務員選任権・罷免権を謳っていますが、国民が学術会議法を通じて学術会議会員の選任権と罷免権を付託しているのは学術会議であって、首相ではありません。
 <政府がお金を出すのだから拒否があってもいいとか、理由を言う必要はないとかこのような意見に対してどのようにお考えですか。>
 日本社会の中で特権的な人たちをたたいて、政権が支持を集めるというやり方がこの間続いています。
 例えば、公務員、高齢者、生活保護受給者、在日外国人などに対して、「こうした輩の特権に血税が無駄使いされている」というキャンペーンでたたいて、今の政治の矛盾の矛先が政権の方に向かないようにしています。
 こういう中で、「学者という既得権益をもっている連中をたたいてやるのが皆のためだ」、「学術会議は政府から10億円ももらって、反政府的なことをやっている」、といったフェイクを政権自体が垂れ流して、フラストレーションをあおっています
 それで、政権は喝采をあびるという構図だと思います。

 日本社会はバラバラにされてきましたから、一人ひとりは非常に心細いし、そうなると、自分に向かってくるかも知れない権力に対して正面から批判することはできません。
 「寄らば大樹の陰」で、バッシングの標的を自分も攻撃して身は安全を確保する、あるいは、SNSというある種無責任なところで、自分の安心を得ている。
 長いものに巻かれうというのは批判されるべき態度だったのですが、今ではそれが身の処し方として当たり前で、若者には現実的なのかもしれません。
 <任命を拒否ざれた研究者、ゼミ学生たちへの誹請中傷が行われ、学問の世界の萎縮や自己規制が広がるのではないかと心配しています。>
 心無い内容の誹諦中傷や個人攻撃がネット上でされているようです。
 最初は知らなかったのですが、NHKの記者から「先生のゼミの学生がツィッター等で攻撃対象にされているようだ」と言われ、学生に聞いたら、「先生に見せないようにちゃんと処理している」との返事でした。
 ゼミのホームページやツイッターでのお知らせに絡んでくる嫌がらせは全部シャットアウトしました。3年生はこれから就職活動ですから、不利になる危険性もあります。気をつけなくてはなりません。
 <多様な個人・団体から声明が出され、かつてない規模と広がりを見せていますね。>
 今回の問題は日本の民主主義や法制度を根本から破壊しかねない事態だ、という認識が広くあると思います。
 政権は人文社会系の6人を攻撃対象とすることによって理系と分断しようと動いたようですが、たくさんの学会等が声明を出し、分断の策略を失敗させました。
 ただ、一般市民の方はまだ別世界の話と感じているのかも知れません
 世論調査で「政府は説明できていない」という評価が圧倒的に多い一方で、任命拒否が「いい」と「悪い」は同程度でした。もう一歩、一般市民の方々に理解してもらう働きかけが必要だと感じています。
 <今回の問題は、日本学術会議の在リ方をめぐる問題にとどまりません。日本の市民社会、民主主義が問われていると思います。>
 日本の民主主義にとって、学問の自由が保障されていなければ非常に危険です。
 例えば、「学問の自由があるから、核兵器・毒ガス兵器やクローン人間をつくるのも自由だ」とは誰も言いません。
 やっていいことと悪いことを決めるのも学問の自由なのです。

 ところが、政権が科学者のやっていいことと悪いことを判断する、科学者には判断させない、ということになれば、それは非常に危険です。
 なぜなら、権力維持のために兵器製造でも非倫理的な研究でも命令しかねないからです。
 「軍事研究を制限するのは学問の自由に反する」という人がいますが、それも学問の自由の中で決めるべき事柄なのです。
 今回やられていることは、あきらかに憲法にも法律にも違反する権力行使を総理大臣がやってしまい、その説明ができないという問題です。
 これは、現代の法治主義・民主制国家の前提として守らなければならないことを、権力者自身が踏みにじっているという問題で、許されないことです。
 また、民主主義の面では、国会との関係も問題です。
 現行の学術会議法を制定するときに、総理大臣は任命拒否をしないという約束を国会でして、成立させたわけです。ところが政府の内部文書で自分勝手なことを決めて、国会での約束を反故にしてしまう。
 このような議会制民主主義を踏みにじる前例を許せば、過去の国会答弁などは全然意味がなくなってしまいます
 説明をしなくても押しきれば、どんな横車も押せる、「お前らは無力なんだ」と、一般市民を追い詰めていく、そういう流れの中にあると思います。
 今回は、「特権を与えるのはよくない」と、違法行為でも躊躇している感じがあるのではないでしょうか。
 署名がとりくまれていますが、1000万人を超えるぐらいの署名が集まるよう広げたいですね。
『子どもと教科書全国ネット21NEWS 135号』(2020年12月15日)


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