《4・20全国集会資料から》
◆ 河原井・根津「君が代」裁判のいま
――教育の自由を求めて―― 2014年4月
1.10・23通達から11年、いま学校は
2003年入学式までの東京の学校は、校長によって「日の丸・君が代」が持ち込まれても、「君が代」で不起立する教員はかなりいました。ですから、その年の10月に「10・23通達」(=「君が代」起立の職務命令に違反したら処分するとの通達)が発出された直後の卒業式では、高校を中心に200名以上の教職員が不起立をし、抵抗しました。教育活動は教職員と子どもたちでつくって行く、との気風があったのです。
しかし、処分の脅しによって不起立者は年々少なくなり、また、学校は都教委が直接支配し、子どもや保護者の意見を取り入れた教育ができないところとなっていきました。いま、子どもたちは「日の丸・君が代」だけでなく、意見の分かれる問題に関して、都教委の「正解」を刷り込まれています。
河原井、根津がクビを覚悟し不起立を続けてきたのは、子どもたちに対する教員としての責任からのことでした。
日々の教育活動において、子どもたちが事実を知り、それを通して自己の思想を形成し、主張し行動できるよう成長を願ってきたのですから、その子どもたちに対し、「君が代」起立・尊重の刷り込みを通して「指示には考えずに従え」と教えることなどできるものではありませんでした。
自身が不起立をする中で、むしろ、不服従してもいいのだと、子どもたちに自らの行動で示すことの大切さも感じてきました。
2.「君が代」不起立で受けた処分と判決
河原井在籍校・処分 根津 在籍校・処分 最高裁判決
04年3月 七生養護・戒告 調布中・不起立だが処分なし河:×
04年4月 七生養護・減給1月 立川二中・会場外担当 河:○
05年3月 七生養護・減給6月 立川二中・減給6月 河:○、根:×
05年4月 調布養護 立川二中・停職1月 根:×
06年1、3月 調布養護・停職1月 立川二中・停職3月 河:○、根:×
07年3月 八王子東養護・停職3月 鶴川二中・停職6月 14.3.24地裁・河:○、根:×
08年3月 八王子東養護・停職6月 南大沢学園養護・停職6月 地裁係争中
09年3月 八王子東養護・停職6月 あきる野学園・停職6月 地裁係争中
○=処分取り消し ×=処分取り消さず
2012年1.16最高裁判決以前の東京の「君が代」不起立処分は、
不起立1回が戒告、不起立2回で減給(1/10)1ヶ月、不起立3回で減給(1/10)6ヶ月、不起立4回で停職1ヶ月、
不起立5回で停職3ヶ月、不起立6回で停職6ヶ月。以降、停職6ヶ月が3回まで繰り返された。
3.最高裁判決は
判断に際し、
ア.「職務命令は憲法19条(思想及び良心の自由)に違反しない」
イ.「戒告を超えてより重い処分を選択することについては、慎重な考慮が必要」
ウ.「過去の処分歴等、学校の規律と秩序を害する具体的事情が処分の不利益よりも重い場合は重い処分も可」
の3つの判断基準を設けました。
「職務命令は憲法19条に違反せず、合憲」が判決の基本。法治国家でありながら、公務員には憲法19条は適用しないということです。
その上で、しかし、やむにやまれぬ気持からの不起立には温情を寄せ、根津を除くすべての人についてイを適用し、処分(停職3件、減給29件)を取り消しました。河原井の処分も、減給1ヶ月から停職1ヶ月を取り消しました。
しかし、根津については過去の処分歴の中に「積極的妨害」があったとし、ウを適用して減給6ヶ月から停職3ヶ月までの処分を取り消しませんでした。
2012年1月16日の最高裁判決は、河原井・根津の06年事件、2013年9月の最高裁判決は河原井・根津の04,05年事件が該当しました。
▼根津の処分歴:
①1994年卒業式で職員会議の決定を破って校長が揚げた「日の丸」を降ろし、減給1ヶ月処分
②③1995年は学級だよりが、1999年には授業用教材プリントが「不適切な内容」だとして訓告処分
④2002年、従軍「慰安婦」問題を取り上げた家庭科の授業に端を発した攻撃の中で、「(根津を指導する)協議会へ出席せよ」との職務命令に違反したとして減給3ヶ月処分
⑤2005年、「君が代」不起立処分の後、強行された「服務事故再発防止研修」の際に質問したことが「進行を妨害した」として減給1ヶ月処分。
4.最高裁判決の問題点
◇「教育の自由」判断を逃げ、教職員個人の問題に固定化させたこと
「君が代」被処分者は教員ゆえに、その誰もが共通して都教委の不当介入を問題にし、「教育の自由」(憲法23条・学問の自由、26条・教育を受ける権利)を主張しているのに、最高裁はこの判断を逃げました。「君が代起立」の職務命令により起立する教員の姿を子どもたちに見せ起立をさせることが、果たして教育といえるのか。国民の間で意見の分かれる「日の丸・君が代」について、子どもたちに一方の意見を隠し考えさせないようにして、もう一方の国家の意見を教え込むことが教育といえるのか。このことの判断なしに、職務命令が合憲か否かの判断は、出せるはずがありません。
にもかかわらず、最高裁はそれをせず、起立は「慣習」であり「儀礼的所作」であり、「(学習指導要領に沿った)職務命令にはその必要性があり、違法とは言えない」とし、不当介入=「教育の自由」の問題から逃げたのです。だから私たちは、「君が代」裁判が国策裁判であると訴えています。
◇「秩序」維持判断は教育行政に処分のフリーハンドを与えた
最高裁判決は、「過去の処分歴等、学校の規律と秩序を害する具体的事情が処分の不利益よりも重い場合は重い処分も可」と判じ、「過去の処分歴等」に「不起立前後の態度等」を含むとしました。これまでの最高裁判決は、判断基準「ウ」を根津一人に使ってきましたが、狙いは今後徹底的に抵抗しようとする教職員を脅すことにこそ、あったのです。最高裁判決は、教育行政に最高裁お墨付きの処分のフリーハンドを与えたのです。
すでに都教委は不起立4~6回目の田中聡史さん(板橋特別支援学校)に対し、「最高裁判決を踏まえて判断した。戒告では秩序の維持が困難」(朝日新聞)として、減給1ヶ月処分を強行しました。都教委が最高裁判決を使って抵抗を続ける教職員を弾圧していることを、私たちは大きく問題にしていく必要があります。
5.河原井・根津の裁判の今後
3月24日、東京地裁判決(古久保裁判長)は、07年事件(河原井;停職3ヶ月処分、根津:停職6ヶ月処分)に対しまたもや、河原井の処分は取り消しましたが、根津の請求は棄却しました。
06年事件では、河原井の慰謝料が認められましたが、今回は認められませんでした。
根津は「過去の処分歴」によって何度でも停職処分が適法とされる。どんな方便を以って、それを正当化できるというのでしょうか。
08年、09年事件はまだ、地裁で動き出したばかりです。ご支援をお願いします。
◆ 河原井・根津「君が代」裁判のいま
――教育の自由を求めて―― 2014年4月
1.10・23通達から11年、いま学校は
2003年入学式までの東京の学校は、校長によって「日の丸・君が代」が持ち込まれても、「君が代」で不起立する教員はかなりいました。ですから、その年の10月に「10・23通達」(=「君が代」起立の職務命令に違反したら処分するとの通達)が発出された直後の卒業式では、高校を中心に200名以上の教職員が不起立をし、抵抗しました。教育活動は教職員と子どもたちでつくって行く、との気風があったのです。
しかし、処分の脅しによって不起立者は年々少なくなり、また、学校は都教委が直接支配し、子どもや保護者の意見を取り入れた教育ができないところとなっていきました。いま、子どもたちは「日の丸・君が代」だけでなく、意見の分かれる問題に関して、都教委の「正解」を刷り込まれています。
河原井、根津がクビを覚悟し不起立を続けてきたのは、子どもたちに対する教員としての責任からのことでした。
日々の教育活動において、子どもたちが事実を知り、それを通して自己の思想を形成し、主張し行動できるよう成長を願ってきたのですから、その子どもたちに対し、「君が代」起立・尊重の刷り込みを通して「指示には考えずに従え」と教えることなどできるものではありませんでした。
自身が不起立をする中で、むしろ、不服従してもいいのだと、子どもたちに自らの行動で示すことの大切さも感じてきました。
2.「君が代」不起立で受けた処分と判決
河原井在籍校・処分 根津 在籍校・処分 最高裁判決
04年3月 七生養護・戒告 調布中・不起立だが処分なし河:×
04年4月 七生養護・減給1月 立川二中・会場外担当 河:○
05年3月 七生養護・減給6月 立川二中・減給6月 河:○、根:×
05年4月 調布養護 立川二中・停職1月 根:×
06年1、3月 調布養護・停職1月 立川二中・停職3月 河:○、根:×
07年3月 八王子東養護・停職3月 鶴川二中・停職6月 14.3.24地裁・河:○、根:×
08年3月 八王子東養護・停職6月 南大沢学園養護・停職6月 地裁係争中
09年3月 八王子東養護・停職6月 あきる野学園・停職6月 地裁係争中
○=処分取り消し ×=処分取り消さず
2012年1.16最高裁判決以前の東京の「君が代」不起立処分は、
不起立1回が戒告、不起立2回で減給(1/10)1ヶ月、不起立3回で減給(1/10)6ヶ月、不起立4回で停職1ヶ月、
不起立5回で停職3ヶ月、不起立6回で停職6ヶ月。以降、停職6ヶ月が3回まで繰り返された。
3.最高裁判決は
判断に際し、
ア.「職務命令は憲法19条(思想及び良心の自由)に違反しない」
イ.「戒告を超えてより重い処分を選択することについては、慎重な考慮が必要」
ウ.「過去の処分歴等、学校の規律と秩序を害する具体的事情が処分の不利益よりも重い場合は重い処分も可」
の3つの判断基準を設けました。
「職務命令は憲法19条に違反せず、合憲」が判決の基本。法治国家でありながら、公務員には憲法19条は適用しないということです。
その上で、しかし、やむにやまれぬ気持からの不起立には温情を寄せ、根津を除くすべての人についてイを適用し、処分(停職3件、減給29件)を取り消しました。河原井の処分も、減給1ヶ月から停職1ヶ月を取り消しました。
しかし、根津については過去の処分歴の中に「積極的妨害」があったとし、ウを適用して減給6ヶ月から停職3ヶ月までの処分を取り消しませんでした。
2012年1月16日の最高裁判決は、河原井・根津の06年事件、2013年9月の最高裁判決は河原井・根津の04,05年事件が該当しました。
▼根津の処分歴:
①1994年卒業式で職員会議の決定を破って校長が揚げた「日の丸」を降ろし、減給1ヶ月処分
②③1995年は学級だよりが、1999年には授業用教材プリントが「不適切な内容」だとして訓告処分
④2002年、従軍「慰安婦」問題を取り上げた家庭科の授業に端を発した攻撃の中で、「(根津を指導する)協議会へ出席せよ」との職務命令に違反したとして減給3ヶ月処分
⑤2005年、「君が代」不起立処分の後、強行された「服務事故再発防止研修」の際に質問したことが「進行を妨害した」として減給1ヶ月処分。
4.最高裁判決の問題点
◇「教育の自由」判断を逃げ、教職員個人の問題に固定化させたこと
「君が代」被処分者は教員ゆえに、その誰もが共通して都教委の不当介入を問題にし、「教育の自由」(憲法23条・学問の自由、26条・教育を受ける権利)を主張しているのに、最高裁はこの判断を逃げました。「君が代起立」の職務命令により起立する教員の姿を子どもたちに見せ起立をさせることが、果たして教育といえるのか。国民の間で意見の分かれる「日の丸・君が代」について、子どもたちに一方の意見を隠し考えさせないようにして、もう一方の国家の意見を教え込むことが教育といえるのか。このことの判断なしに、職務命令が合憲か否かの判断は、出せるはずがありません。
にもかかわらず、最高裁はそれをせず、起立は「慣習」であり「儀礼的所作」であり、「(学習指導要領に沿った)職務命令にはその必要性があり、違法とは言えない」とし、不当介入=「教育の自由」の問題から逃げたのです。だから私たちは、「君が代」裁判が国策裁判であると訴えています。
◇「秩序」維持判断は教育行政に処分のフリーハンドを与えた
最高裁判決は、「過去の処分歴等、学校の規律と秩序を害する具体的事情が処分の不利益よりも重い場合は重い処分も可」と判じ、「過去の処分歴等」に「不起立前後の態度等」を含むとしました。これまでの最高裁判決は、判断基準「ウ」を根津一人に使ってきましたが、狙いは今後徹底的に抵抗しようとする教職員を脅すことにこそ、あったのです。最高裁判決は、教育行政に最高裁お墨付きの処分のフリーハンドを与えたのです。
すでに都教委は不起立4~6回目の田中聡史さん(板橋特別支援学校)に対し、「最高裁判決を踏まえて判断した。戒告では秩序の維持が困難」(朝日新聞)として、減給1ヶ月処分を強行しました。都教委が最高裁判決を使って抵抗を続ける教職員を弾圧していることを、私たちは大きく問題にしていく必要があります。
5.河原井・根津の裁判の今後
3月24日、東京地裁判決(古久保裁判長)は、07年事件(河原井;停職3ヶ月処分、根津:停職6ヶ月処分)に対しまたもや、河原井の処分は取り消しましたが、根津の請求は棄却しました。
06年事件では、河原井の慰謝料が認められましたが、今回は認められませんでした。
根津は「過去の処分歴」によって何度でも停職処分が適法とされる。どんな方便を以って、それを正当化できるというのでしょうか。
08年、09年事件はまだ、地裁で動き出したばかりです。ご支援をお願いします。
河原井さん・根津さんらの「君が代」解雇をさせない会
国立市北1-2-12 多摩教組気付 Tel/Fax042・574‐3093
http://homepage2.nifty.com/kaikosasenaikai
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