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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

杉並の不当な教科書採択取り消し裁判

2007年06月10日 | 平和憲法
 ◎ 強制退去~
 「杉並の不当な教科書採択取り消し裁判」第3回口頭弁論


 (前略)

●裁判所の弁論調書は小学校のPTA便り以下

 続けて、原告の女性が、準備書面(22)で、第2口頭弁論調書に対する異議申立と要求を行いました。裁判所の弁論調書は内容について記載されておらず、なにが審議されたかわからないこと、これでは小学校のPTA便りのほうがもっと記録がしっかりしていること、原告側の記録に基づいて第2口頭弁論で審理された内容を列挙するので調書に付け加えてほしいこと、などの要望を伝えた上で、次回からは原告の手を煩わせることなく、このような仕事は本来の職務である書記官が担うべく裁判長は指導してほしい旨、要請がありました。原告の訴えに対し、松井裁判長は苦笑しながら聞いていました。原告側が要望していた準備書面(12)について、松井裁判長が陳述を許可すると、原告席から拍手が起こりました。原告の女性が「真実を選ぶことはポジティブな行為」とする準備書面(12)を読み上げました。
   
 本件を担当する3名の裁判官。左から、内田さん、裁判長の松井さん、大倉さん。
 原告は、市民と裁判官は対等の立場として裁判官を「さん付け」で呼んでいる。(画/原告の渡辺容子さん)


 「市民運動に人生を捧げているのでもなく、戦後補償問題の専門家でもない派遣労働者の私の『意見』を聞いてください。

 私が改正前の教育基本法10条の存在を知ったのは、つい昨年でした。もし、『つくる会』の教科書がすばらしい教科書で真実しか述べていないのであったとしても、政治家が圧力をかけて特定の教科書を採択させるは不当なので裁判をする意義はあると思いますが、自分自身が裁判に関わるかどうかについてはためらいがあったと思います。日本政府が『慰安婦問題』に関して国際法論争で、国連人権委員会やILOの『日本政府に法的責任あり』という判断に反論を繰り返してきている事実を、無知な私は最近知りました。衝撃的な事でした。
 『自分の所属する国家の戦争責任を認めることは自分とかつての国家との連続性を断つことによって他者の信頼を回復していくポジティブな行為』と哲学者の高橋哲哉さんが言っています。この裁判の被告(特に安倍氏)も『自分の所属する党、議員の会、の教科書への不当介入を認めることは、自分と党・議員の会とのつながりを断つことによって原告の信頼を回復していくポジティブな行為』だということをわかってくれるとよいかと思います。それには裁判官の皆様が、行政の圧力に屈せずに真実を選ぶことは、たとえその道は困難をきわめても裁判官生命を蘇らせるポジティブな行為、つまりそれぞれの方々が、ご自身で後日この裁判を振り返ったとき、決して悔やむことのない正しい行為であったと思えるかどうか、そのことを考えていただくことに関係してくると思います」

●混乱のなか、強制退去

 原告の女性の訴えに対し、ほかの原告から「そうだ」という声があり、傍聴席から大きな拍手がありました。松井裁判長からまた「ちょっとやめてください」との注意がありました。そのあと、松井裁判長がよく聞き取れない声で、突然「口頭弁論を終結・・・次回期日は8月……」と言って立ち上がり、退廷しました。原告席から「ちょっと待ってください!」という声が上がり、すぐに「(裁判官を)忌避します」「忌避します」という声が複数の原告からあがりました。原告の女性の1人は松井裁判長が終結の発言をする前に、これは結審だと思い、「忌避申立」をしたそうです。傍聴していた男性もそのことを確認しているそうです(女性は松井裁判長が「口頭弁論を終結……」といった直後にすぐに「忌避します」と発言し、そのあとに松井裁判長が次回期日を告げた)。松井裁判長の声が小さく、全部言い終わらないうちに立ち上がっているような感じだったので、驚いている間にすべてが終わってしまい、傍聴人はことの次第をよく飲み込めないうちに気がついたら裁判官がいなくなっていたという感じでした。

 傍聴席からも次々に抗議の声があがりました。書記官の男性が、松井裁判長は終結の挨拶をしたこと、次回の期日は8月31日午前11時30分からであること、忌避については裁判が終結した後に申立をするので、忌避の申立をするなら書面でやってほしい、といった説明がありました。原告の女性が「(自分は)終結前に忌避をしました」と告げると、書記官は(忌避は全員)終結した後だとする主張を繰り返し、押し問答になりました。原告からは「なんですか、このやり方は」「ここまで誠実にやってきたのに、逃げるのは許せない」との激しい憤りの言葉が投げかけられました。小学生のお子さんのいる原告の女性は「子どもの命がかかっているんだよう。裁判所が止めなければ戦争になってしまう」と必死に訴えましたが、書記官や裁判所の職員は「これで終わります。退席してください」の一点張りでまったく聞く耳を持ちませんでした。

 納得のいく説明をしてほしいという原告と傍聴人の訴えに対し、書記官たちは「裁判は終わりました。退廷してください」と繰り返すだけなので、原告と傍聴人はそのまま傍聴席に留まりました。次の裁判が終わるのを待って、松井裁判長に説明責任を果たしてほしいとの要望をすると、松井裁判長は「傍聴席、静かにしてください」と注意をしました。これまでの2回の口頭弁論のときと同じように、ほかの裁判では次回期日を決めるとき、原告と被告の都合を聞いてから決めているので、そのことについても抗議をすると、松井裁判長は「傍聴席、静かにしてください」との注意を繰り返しました。松井裁判長と2人の裁判官が退廷したあとも、裁判所の説明を求め、電気の消えた暗い法廷の中に数名の原告と傍聴人が残り、裁判所の職員に訴え続けていました。「終わっていないのに終わったことになっているのはおかしい。そのことを説明してほしいだけです」という原告の訴えに対し、裁判所の職員は、法廷を閉めるのであとは民事43部の書記官室で説明をするのでここを退去してほしいと説得していました。「裁判は終わっていないのだから、説明ならこの法廷でしてほしい」とする原告の声が、法廷の外の戸口に立っている筆者の耳に聞こえてきました。

 膠着状態が続き、裁判所の職員が慌しく無線で連絡を取り合い、警備員らしい屈強そうな男性がたくさんやってきて、廊下の向こうの法廷の前に待機しているのが見えました。法廷の中にいる裁判所の職員と外にいる職員が目で合図をし、「最後の警告です。すみやかに退廷してください」と中の職員が警告を発し、次いで外の職員の「執行」という掛け声のもと、待機していた警備員たちが一斉に法廷に入り、午後2時47分、原告と傍聴人数名が強制退去させられました。

●筆者の感想
 強制退去というのをはじめて見ました。ごく一般の市民が、政権与党とその代表である総理大臣に対し、中学校の歴史教科書採択において「(権力による)不当な介入」があったとして、改定前の教育基本法10条に違反にすると訴えた裁判で、このようなことが起こるとは予想もしていませんでした。これまで2回の口頭弁論では、弁護士のいない本人訴訟ということで、審理の進め方など松井裁判長の指導を仰ぎながら大変な労力を伴う準備書面も用意し、真摯に対応してきた原告の熱意に対し、誠実に対応してくれていたように思われた松井裁判長が、突然、一方的とも思えるようなやり方で、結審を告げたことは驚きを禁じ得ませんでした。

 しかも、書記官以外、ほかのだれにも聞こえないような小さな声で、裁判終結と判決期日を言い渡し(と書記官が主張している)、逃げるように法廷を立ち去ったことは、大変残念であるとの感想を持ちました。さらに残念だったのは、裁判所の対応です。裁判の当事者である原告が、いつ裁判が終わったのか教えてほしいと訴えているだけなのに、屈強な男性たちが大勢やってきて女性たちを取り囲み、力ずくで強制退去させたことは大変問題があると思いました。

 「執行」という声を合図に、近くで待機していた裁判所の警備員たちが大勢やってきて女性たちを連れ出す光景は、見ていて恐怖感を伴うものがありました。強制退去された原告の女性たちは、目に涙を浮かべている人や、青ざめている人たちもいました。当事者として、ただ裁判がいつ終わったのか教えてほしいと訴えているだけなのに、犯罪者のように扱い、強制退去をさせる裁判所の対応を見ながら思ったのは、裁判所はいったいなんのためにあるのか、ということでした。

(ひらのゆきこ)

◇ ◇ ◇

『JANJAN』 2007/06/03
http://www.janjan.jp/living/0706/0706026535/1.php

『杉並の不当な教科書採択取り消し裁判の会』

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