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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

差別と向き合い尊厳を獲得するまでの長いいのちの闘い

2022年03月24日 | 人権

 ◆ 差別と大量殺裁 (東京新聞【本音のコラム】)
鎌田 慧(かまたさとし・ルポライター)

 自転車で自宅から十五分ほどのところに、ハンセン病の療養施設・多磨全生(ぜんしょう)園がある。いまは森に囲まれたゆったりした地域だが、社会から強制的に排除され、収容された元患者の犠牲的な労働によって形成された。
 ここに住んでいた在日の作家・故国本衛さんとたまたま知り合ったご縁で、わたしはハンセン病市民学会の会員になった。その前にも「癩者(らいしゃ)の息子だ」と宣言して活動し続け、最近、被害家族の賠償請求裁判の先頭にたって勝訴に導いた、林力さんにも影響を受けている。
 林さんが九州産業大教授だった時に、部落差別問題の学内集会に呼ばれ『父からの手紙』を頂いた。それではじめて療養所にいる人たち全員が仮名で暮らしている差別の現実を知らされた。
 ハンセン病市民学会が最近出版した『ハンセン病問題から学び、伝える』(清水書院)は、元患者、家族、教員の体験談や「らい予防法違憲訴訟」の歴史、冤罪(えんざい)で死刑にされた菊池事件などハンセン病問題の貴重な入門書だ。
 いま毎日、ミサイルで街を破壊するロシア軍侵攻の映像をテレビで観(み)ながら、人間の命を奪う殺戮(さつりく)でしか勝利を確認できない、権力者の驕慢(きょうまん)への怒りは抑え難い。
 ハンセン病患者が、差別と向き合い尊厳を獲得するまでの長いいのちの闘い。ひとのいのちの愛(いと)おしさを、プーチンは知らない。
『東京新聞』(2022年3月22日【本音のコラム】)


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