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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

コロナ禍緊急にUAゼンセン内で「人員余剰職場」と「人手不足職場」のギャップを埋める取り組み

2020年08月15日 | 格差社会
  《労働情報-特集:Corona vs Union【UAゼンセン】》
 ◆ 「休業者」人手不足職場に
   ~就労マッチングを労組が支援

原田光康 UAゼンセン総合サービス部門事務局長

 新型コロナの感染のなか、緊急かつ時限対応として就労マッチング支援に取り組みました。
 UAゼンセンは179万人の組織で、製造産業、流通、そして私たち総合サービスという3つの部門で構成しています。
 緊急事態宣言が出るなか、サービス産業の現場には、要請を受け休業するところ、営業時間を短縮して営業継続するところ、社会生活を維持する上で必要な施設として、医療、介護、物流など事業継続をしていかなければならないところに分かれました。
 営業できない、営業時間が短くなると、就労する時間も短くなってきます。

 フードサービス(外食)の業種では、正社員はもちろんですが、短時間(パート、アルバイト)の組合員のみなさんが働く場、所得を得られる場が少なくなりました。
 ホテル・レジャーパチンコの業種では、休業するところが多くありました。
 とくに短時間の人たちには休業補償が限定的なところもあったと思います。
 時間契約で、毎月シフトを作りながら働いているわけですが、休業や営業時間短縮でシフトが削られてしまう。
 外食の企業は製造業などと比べて財務体質がぜい弱な企業も多く、当初は休業補償と雇用調整助成金の差額が生じることに強い懸念もあったようです。
 私たちは、そうした人たちの働く場を何とか確保したいという思いがありました。

 今回、小売業の現場では、在宅勤務が拡がるなかでさらに人員不足になっていました。食品スーパーで働く主婦パートには、学校の休業により子どもの面倒を見るために仕事を休まなければならなかった人も多くいました。
 そのような中、UAゼンセン内で、「人員が不足している職場」「人員に余剰がでている職場」があるので、雇用需給のギャップを埋める企業間マッチングをできないかということで緊急的かつ時限的な取り組みとして行いました。
 どのような雇用形態で実施するかにも難しさがあります。
 一部、正社員で出向という形もありましたが、数的に多かったのは副業での就労でした。
 就労を希望する従業員を自社で抱えている労働組合から、おおよその人数や地域を総合サービス部門に報告いただいて、その内容を流通部門につなげて、流通部門から人が必要であろう小売業の所属組合に情報を提供し、最終的には会社同士で雇用をつなげてもらうというしくみです(=下の図参照)。
 外食で4組合、ホテルで1組合、その他サービス業界で1組合から依頼を受け、つなぎました。
 大手総合スーパーの協力で80名超、他にも地域のスーパー、ホームセンター等でも引き受けていただき、計110名くらいの方がこの取り組みで就労することができました。
 送り出し側がどこまで情報を提供できるかに、マッチングがうまくいくかどうかのカギが一つあったと思っています。
 最初は就労形態・期間・人数・就労地域(県単位)をエントリーシートに記入してもらいました。
 しかしながら、それだけでは情報が十分ではないことから、その後、就労地域は市区町村レベルまで記入してもらうことにしました。
 あとは、外食業のパートタイマーが副業的に行った先のスーパーでの業務のウエイトが高くなると、副業といっても別々の就労ですので「人が流出してしまわないか」という懸念を送り出し企業側が持ったのではないかと感じる面もありました。
 ※ UAゼンセン就労マッチングの流れ(図)
総合サービス部門所属組合
    ↓
UAゼンセン総合サービス部門
    ↓
UAゼンセン流通部門
    ↓
流通部門所属組合


 ― この種の経験はこれまでにも?

 このようなやり方をしたのは初めてです。これまでも外食業のお店が閉店した場合やスーパーでもスクラップ&ビルドはどうしてもあります。正社員は店舗間等の異動がありますが、短時間組合員は暮らしている地域で働いているので、私たちの加盟組合の中で、サービス業の職場を中心に地域内で紹介していました。
 ― 今回、組合員からの声で動いたのですか。

 組合員というよりは組合です。最初は居酒屋を運営する加盟組合から「何とか就労できる場を紹介してもらえないだろうか」という話が出てきました。
 ― 経営とのやりとりで問題になったことは事前にありましたか。

 特に受け入れ先で、どういう労使のやりとりとか伝わり方をしているかということは、なかなか絵に描いたようにはいかず、労働組合の姿勢も含め濃淡はかなりありました。出向の場合も労働条件は組合として関与せず、企業間同士で決めてもらいました。
 副業の場合は、受け入れ側が条件を出し、それに応じるかどうかになります。労働組合として「従前の労働条件は維持してほしい」という思いはあります。相手があって難しいことですが、関与していくべきだと思います。
 また、受け入れ先としては、労働組合のある職場の人材を受け入れるので安心感があったという点は強調したいところです。
 ― 「期間を決めて済んだら元の職場に戻す」といった取り決めはあるんですか。
 出向であればそのような対応は必要ですが、副業型の場合はなかなか難しいです。

 ― 副業一般で考えると労働時間管理も気になりますが。

 今回はあくまでも緊急事態下における対応であって、UAゼンセンは、副業を積極的に認めているわけではありません。
 ― 「居酒屋から食品スーパーに」といった時、違う仕事に就くとまどいとかはあまりなかったんでしょうか。
 受けとめは一人ひとり違うでしょうが、同じ接客サービス業なので、比較的なじみやすかったのではないでしょうか。就労された方には今後ヒアリングしてみたいと思っています。
 ― 今後広げていく場合の課題は。

 今回のとりくみを検証した上で、何ができるのかを考えていきたいと思います。スクラップ&ビルドというのはどうしてもあるので、短時間の人たちの就労の場を提供できる仕組みなどは考えていかないと「何のために組合員になったのか」ということにもなりかねません。
 ゼンセン同盟時代から無料職業紹介に取り組んできた歴史もあります。倒産には至らないものの外食チェーンでは店舗数を絞る動きにあるため、ITも活用しながら、この産業を中心に就労で随きる常設のしくみづくりも考えたいと思っています。
(聞き手・まとめ 編集部)

『労働情報』(2020年8月)

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