◆ 「NO WAR」掲げた勇気ある女性
~堤防に開いた小さな穴 (レイバーネット日本)
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世界がロシアのウクライナ侵略を非難する中、ロシアだけはプーチン支持に固まっています。ところがロシア国営テレビ放送の女性スタッフ、マリナさんが勇気ある行動に出ました。ニュースの生放送番組中に「NO WAR」と書いた手描きのプカードをかざし、戦争反対を訴えたのです。
ロシアでは戦争開始からすぐにプーチンが反政府行動を弾圧し、政府を批判する者を容赦なく逮捕しています。マリナさんも逮捕されました。身が気遣われます。
逮捕を見越してあらかじめ本人が作成したと思われる動画がユーチューブに流れています。
マリナさんは「ウクライナで起きていることは犯罪だ。すべての責任はプーチンにある」と述べ、「国民が沈黙してきたことがこのような結果を生んだ。抗議行動に出よう。当局は私たち全員を逮捕することはできない」とロシア国民に勇気を奮って抗議することを呼びかけました。
同じ言葉を思い出します。1980年のポーランド。
独裁政権下で政府の言いなりになる御用組合しかなかった時代に、港町グダンスクの造船所の女性クレーン技師アンナ・ワレンティノビッチさんが解雇されました。組合の幹部が私腹を肥やしたのを指摘したためです。
彼女にクビを言い渡した上司は「あんたをクビにしないと、私がクビをきられる」と言い訳しました。
彼女は反論しました。「私はクビを拒否する。あなたも拒否すればいい。あなたにクビを告げる役目の人も拒否すればいい。会社は全員をクビにするわけにはいかない」
アンナさんは真面目で人情味あふれ、みんなの人気者でした。彼女の復職を求める抗議集会が開かれ、数百人が参加しました。
このとき塀を乗り越えて造船所に入り集会で演説した36歳の失業者がいます。彼の呼びかけで独立労組「連帯」が結成されました。最初のメンバーは65人。
やがて1000万人にも膨れ上がり、独裁体制を倒す原動力となったのです。
労組結成を呼びかけたワレサは大統領となり、ノーベル平和賞を受賞しました。
今また女性です。彼女を孤立させてはならない。「すごいなあ」と感心するだけでなく、彼女を応援しましょう。
世界が彼女に注目しているとロシア当局に知らしめることが、彼女の身の安全を保障することにつながります。
たった一人の行動とはいえ、堤防に開いた小さな穴のようなものです。
やがてロシア国内を揺るがし、戦争を止め、独裁者を追放する大きなうねりになるかもしれません。
私たちも一人一人が「私もマリナ」と思って、行動しませんか。
画像(写真下)はポーランドの独立労組「連帯」が生まれたグダンスクの造船所の入口です。7年前に現地で撮影しました。門に掲げてある白地に赤で「連帯」と書かれた横断幕が自主労組の印です。(3月15日・伊藤千尋さんのFBより)
『レイバーネット日本』(2022/3/15)
http://www.labornetjp.org/news/2022/0315ito
~堤防に開いた小さな穴 (レイバーネット日本)
伊藤千尋(フリージャーナリスト)
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世界がロシアのウクライナ侵略を非難する中、ロシアだけはプーチン支持に固まっています。ところがロシア国営テレビ放送の女性スタッフ、マリナさんが勇気ある行動に出ました。ニュースの生放送番組中に「NO WAR」と書いた手描きのプカードをかざし、戦争反対を訴えたのです。
ロシアでは戦争開始からすぐにプーチンが反政府行動を弾圧し、政府を批判する者を容赦なく逮捕しています。マリナさんも逮捕されました。身が気遣われます。
逮捕を見越してあらかじめ本人が作成したと思われる動画がユーチューブに流れています。
マリナさんは「ウクライナで起きていることは犯罪だ。すべての責任はプーチンにある」と述べ、「国民が沈黙してきたことがこのような結果を生んだ。抗議行動に出よう。当局は私たち全員を逮捕することはできない」とロシア国民に勇気を奮って抗議することを呼びかけました。
同じ言葉を思い出します。1980年のポーランド。
独裁政権下で政府の言いなりになる御用組合しかなかった時代に、港町グダンスクの造船所の女性クレーン技師アンナ・ワレンティノビッチさんが解雇されました。組合の幹部が私腹を肥やしたのを指摘したためです。
彼女にクビを言い渡した上司は「あんたをクビにしないと、私がクビをきられる」と言い訳しました。
彼女は反論しました。「私はクビを拒否する。あなたも拒否すればいい。あなたにクビを告げる役目の人も拒否すればいい。会社は全員をクビにするわけにはいかない」
アンナさんは真面目で人情味あふれ、みんなの人気者でした。彼女の復職を求める抗議集会が開かれ、数百人が参加しました。
このとき塀を乗り越えて造船所に入り集会で演説した36歳の失業者がいます。彼の呼びかけで独立労組「連帯」が結成されました。最初のメンバーは65人。
やがて1000万人にも膨れ上がり、独裁体制を倒す原動力となったのです。
労組結成を呼びかけたワレサは大統領となり、ノーベル平和賞を受賞しました。
今また女性です。彼女を孤立させてはならない。「すごいなあ」と感心するだけでなく、彼女を応援しましょう。
世界が彼女に注目しているとロシア当局に知らしめることが、彼女の身の安全を保障することにつながります。
たった一人の行動とはいえ、堤防に開いた小さな穴のようなものです。
やがてロシア国内を揺るがし、戦争を止め、独裁者を追放する大きなうねりになるかもしれません。
私たちも一人一人が「私もマリナ」と思って、行動しませんか。
画像(写真下)はポーランドの独立労組「連帯」が生まれたグダンスクの造船所の入口です。7年前に現地で撮影しました。門に掲げてある白地に赤で「連帯」と書かれた横断幕が自主労組の印です。(3月15日・伊藤千尋さんのFBより)
『レイバーネット日本』(2022/3/15)
http://www.labornetjp.org/news/2022/0315ito
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