◆ 「みんなの党」の正体 差別と貧困の新自由主義
参院選は、「菅首相のオウンゴールで民主党はカン敗」などいう寸評総括が見受けられる。そして、民主党批判の風を一手に受けて大躍進した「みんなの党」が選挙後も台風の目になっている。渡辺喜美代表が発するワンフレーズの裏にあるものは何か。
◆ 耳当り良く毒混ぜる
みんなの党は、参院選でアジェンダ「2010成長戦略」(政策課題)を打ち出した。その内容は、「新自由主義」政策の徹底と新保守主義である。小泉構造改革路線を継承し、手法は曖昧さ排除・受け狙いの小泉劇場型である。
だが、自民党流の国家主義的表現を避け、ビジネスタッチで政策を羅列する。その意味で、国家経営的な新鮮さと期待を持たせる手法を取り入れている。
「大きい政府か小さい政府か」「配分重視か活力重視か」「日米中三角形か日米同盟基軸か」などと二者択一を迫る。渡辺代表は、歯切れ良く民主党や他党の曖昧さを一刀両断にする。これが一般受けする要因でもある。
国政をどう導こうとするかという点では、その行き着く先は差別と競争、貧困の拡大である。しかし、露骨な新自由主義的政策の羅列は避け、耳当たりのよい項目を並べながら毒を混ぜている。
政策の柱「小さな政府」では、天下りや外郭団体などの特権廃止などを並べ、一般公務員10万人削減、年功序列賃金見直し、給与2割・ボーナス3割カットなど、公務員の大量リストラと競争原理の徹底導入を打ち出す。実行されれば、行政職場は、公的サービスの提供どころか、それぞれが生きるための弱肉強食の場と化す。
国会改革では衆議院180、参議院142削減し、一院制を目ざす。その結果、少数意見・少数政党を完全に排除した政治が生まれる。
◆ 改憲の姿勢を隠さず
また、官から民へ民営化、脱官僚と政治主導、権限移譲の「地域主権型道州制」などを打ち出す。
国は通貨・安全保障・外交などの最低限の役割を担い、道州は基礎的自治体で対応できないインフラ整備、災害対策などの広域行政を担当する。換言すれば、国の課題以外の行政サービスは国・地方挙げて民間企業の金儲けの市場に開放するというのだ。
経済・雇用では、名目4%成長で10年で所得5割アップと大風呂敷を広げ、そのために産業構造の転換、新たな分野開拓や市場・金融などの流動化へ規制緩和を打ち出す。
こうした、成長の大風呂敷に労働者保護の項目は僅かしかない。雇用拡大と子育て支援のために残業規制の強化や雇用保険改革などを挙げるが、正規・非正規の流動性、派遣労働は必要と開き直る。職場、労働条件の安定的な確保はなく、社会的施策は後追い、企業の儲けだけ保障する。
外交・安全保障政策については、日米安保体制を堅持、自衛隊の国際活動への積極的参加など集団的自衛権に踏み込み、「日米対等」を強調、憲法見直しと憲法審査会始動を求める。露骨な「改憲」政党なのである。
民主党の主張と重なる部分が多く、人気を背景に政権に新自由主義政策の断行を迫るだろう。そうなれば、社会はますます弱肉強食・格差拡大に向かう。
『週刊新社会』(2010/7/27【道しるべ】)
◆ みんなの党 経済政策は新自由主義の復権
参議院選挙で、民主党・自民党双方への不満層の受け皿となってみんなの党が伸びた。二大政党を、大きな政府・官僚主導・増税と描き出し、小さな政府・民間主導・経済成長を対置する。
選挙公約の第一番は「国と地方の公務員人件費の2割以上削減」。安倍・福田両内閣の行革担当大臣だった渡辺喜美が代表であり、公務員攻撃が第一の売りなのだが、挫折した鳩山内閣の「脱官僚」を支持した層を取り込んだ。テレビに露出するたびブチ上げた、国会議員歳費3割・ボーナス5割カットの即時実施や、無料パス・議員年金の廃止なども同様。
一方、「世界標準の経済政策」との大風呂敷で打ち出す経済成長戦略の第一は、「年率4%以上の名目成長により10年間で所得を5割アップ」というものだ。欧米資本主義の平均成長率4・3%を引合いに出しているのだが、日本の名目成長は92年度以降3%に達したことがない。規制・官僚統制を撤廃しさえすれば直ちに成長するという、例の新自由主義構造改革派の経済学の焼き直しだ。
財政では「政治家や官僚が食いつふしている税金」を「生活重視」に回す。加えて日本の国家財政は、大きな金融資産を有しており、民営化を進めればまだまだ「埋蔵金」が出てくるとする。
成長政策の羅列は、規制緩和と国際化(開国)であり、供給サイドの強化だ。
「格差を固定しない」雇用政策では、働き方の自由を損ない、雇用を奪う「派遣禁止法」には反対。
そして、日本銀行のマネー供給拡大でデフレは解消するという金融政策。
要するに聞き古された、新自由主義路線の再版なのだ。あれかこれかの二分法、「増税の前にゃるべきことがある」とのワンフレーズ、「覚悟」の強調なども、小泉風。
民主党内の新自由主義グループと連動して、昨年来の政権交代の新自由主義的修正が役回りだ。(義)
『週刊新社会』(2010/7/27【経済監視塔】)
参院選は、「菅首相のオウンゴールで民主党はカン敗」などいう寸評総括が見受けられる。そして、民主党批判の風を一手に受けて大躍進した「みんなの党」が選挙後も台風の目になっている。渡辺喜美代表が発するワンフレーズの裏にあるものは何か。
◆ 耳当り良く毒混ぜる
みんなの党は、参院選でアジェンダ「2010成長戦略」(政策課題)を打ち出した。その内容は、「新自由主義」政策の徹底と新保守主義である。小泉構造改革路線を継承し、手法は曖昧さ排除・受け狙いの小泉劇場型である。
だが、自民党流の国家主義的表現を避け、ビジネスタッチで政策を羅列する。その意味で、国家経営的な新鮮さと期待を持たせる手法を取り入れている。
「大きい政府か小さい政府か」「配分重視か活力重視か」「日米中三角形か日米同盟基軸か」などと二者択一を迫る。渡辺代表は、歯切れ良く民主党や他党の曖昧さを一刀両断にする。これが一般受けする要因でもある。
国政をどう導こうとするかという点では、その行き着く先は差別と競争、貧困の拡大である。しかし、露骨な新自由主義的政策の羅列は避け、耳当たりのよい項目を並べながら毒を混ぜている。
政策の柱「小さな政府」では、天下りや外郭団体などの特権廃止などを並べ、一般公務員10万人削減、年功序列賃金見直し、給与2割・ボーナス3割カットなど、公務員の大量リストラと競争原理の徹底導入を打ち出す。実行されれば、行政職場は、公的サービスの提供どころか、それぞれが生きるための弱肉強食の場と化す。
国会改革では衆議院180、参議院142削減し、一院制を目ざす。その結果、少数意見・少数政党を完全に排除した政治が生まれる。
◆ 改憲の姿勢を隠さず
また、官から民へ民営化、脱官僚と政治主導、権限移譲の「地域主権型道州制」などを打ち出す。
国は通貨・安全保障・外交などの最低限の役割を担い、道州は基礎的自治体で対応できないインフラ整備、災害対策などの広域行政を担当する。換言すれば、国の課題以外の行政サービスは国・地方挙げて民間企業の金儲けの市場に開放するというのだ。
経済・雇用では、名目4%成長で10年で所得5割アップと大風呂敷を広げ、そのために産業構造の転換、新たな分野開拓や市場・金融などの流動化へ規制緩和を打ち出す。
こうした、成長の大風呂敷に労働者保護の項目は僅かしかない。雇用拡大と子育て支援のために残業規制の強化や雇用保険改革などを挙げるが、正規・非正規の流動性、派遣労働は必要と開き直る。職場、労働条件の安定的な確保はなく、社会的施策は後追い、企業の儲けだけ保障する。
外交・安全保障政策については、日米安保体制を堅持、自衛隊の国際活動への積極的参加など集団的自衛権に踏み込み、「日米対等」を強調、憲法見直しと憲法審査会始動を求める。露骨な「改憲」政党なのである。
民主党の主張と重なる部分が多く、人気を背景に政権に新自由主義政策の断行を迫るだろう。そうなれば、社会はますます弱肉強食・格差拡大に向かう。
『週刊新社会』(2010/7/27【道しるべ】)
◆ みんなの党 経済政策は新自由主義の復権
参議院選挙で、民主党・自民党双方への不満層の受け皿となってみんなの党が伸びた。二大政党を、大きな政府・官僚主導・増税と描き出し、小さな政府・民間主導・経済成長を対置する。
選挙公約の第一番は「国と地方の公務員人件費の2割以上削減」。安倍・福田両内閣の行革担当大臣だった渡辺喜美が代表であり、公務員攻撃が第一の売りなのだが、挫折した鳩山内閣の「脱官僚」を支持した層を取り込んだ。テレビに露出するたびブチ上げた、国会議員歳費3割・ボーナス5割カットの即時実施や、無料パス・議員年金の廃止なども同様。
一方、「世界標準の経済政策」との大風呂敷で打ち出す経済成長戦略の第一は、「年率4%以上の名目成長により10年間で所得を5割アップ」というものだ。欧米資本主義の平均成長率4・3%を引合いに出しているのだが、日本の名目成長は92年度以降3%に達したことがない。規制・官僚統制を撤廃しさえすれば直ちに成長するという、例の新自由主義構造改革派の経済学の焼き直しだ。
財政では「政治家や官僚が食いつふしている税金」を「生活重視」に回す。加えて日本の国家財政は、大きな金融資産を有しており、民営化を進めればまだまだ「埋蔵金」が出てくるとする。
成長政策の羅列は、規制緩和と国際化(開国)であり、供給サイドの強化だ。
「格差を固定しない」雇用政策では、働き方の自由を損ない、雇用を奪う「派遣禁止法」には反対。
そして、日本銀行のマネー供給拡大でデフレは解消するという金融政策。
要するに聞き古された、新自由主義路線の再版なのだ。あれかこれかの二分法、「増税の前にゃるべきことがある」とのワンフレーズ、「覚悟」の強調なども、小泉風。
民主党内の新自由主義グループと連動して、昨年来の政権交代の新自由主義的修正が役回りだ。(義)
『週刊新社会』(2010/7/27【経済監視塔】)
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