★ 全国学カテスト「毎年必要か」
~宮城県知事が問題提起 (東京新聞【ニュースの追跡】)
文部科学省の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)に労力や費用がかかるとして、全国知事会長の村井嘉浩宮城県知事が「毎年やる意味があるのか」と問題提起した。知事会で各都道府県へのアンケートを行い、月内にも学力テストの方向性について議論を始めるという。(山田雄之)
★ 教員・費用負担に…知事会議論へ
「なくしてほしいと言っているわけではない。毎年やって都道府県だけ順位を出すことに、果たしてどれだけ意味があるのか」。村井知事は10月9日の県の定例記者会見で、こう問題意識を語った。
国民スポーツ大会(旧国民体育大会)の「廃止」に言及した4月に続き、既存の取り組みに一石を投じた形だ。
村井氏によると、夏の全国知事会議で意見交換をした際、学力テストに伴う労力や費用面から「毎年実施」を疑問視する声が上がった。村井氏も基本的に小中学校の教育は市町村が担うとし、「(県)全体のレベルを見るだけなら、数年に1回やれば大体の傾向が見える」と持論を述べた。
2007年度から始まった学力テスト。小学6年と中学3年の全員が対象で、本年度は計約186万人が参加した。国語と算数・数学の2教科を基本に、小中ともおおむね3年に1度、理科が加わる。中3は英語を行う年もある。
都道府県ごとの正答率が公表されるため、教科ごとの順位が分かる。
文科省は27年度から紙での試験を廃止、オンラインで出題・解答する新方式(CBT)に全面移行する方針だ。
全国知事会は今年9月以降、各都道府県知事宛てにアンケートを行い、テストを行う頻度が適当か、目的が果たされているのかなどを質問。11月25日の知事会議でその結果を示し、方向性を議論するという。
「こちら特報部」は、文科省に村井氏の問題提起について聞いた。
担当者は「学力テストの目的は、全国的な学力把握ではない」と述べて、競争や序列化を招かないようにしていると説明。
「児童生徒の学習の習熟度を把握・分析し、不得意分野を学校で指導してもらい、義務教育の水準向上などに役立ててもらいたい」として「毎年実施」は必要とした。
★ 自治体競争過熱「学ぶ楽しさ妨げられ」
教育現場の受け止めはどうか。
ある県の教育委員会の担当者は「文科省の言う意義は分かるが、順位が過度に取り沙汰され、子どもの学習意欲が減退する場合もある」と明かす。
別の県の担当者は「CBTの導入で教員の負担が増すならば、毎年実施は難しいとの考えも出てくる」と述べ、今後を見極めたいとした。
これまでも学力テストが「過度な競争を助長する」との批判はあった。
静岡県では小学6年の一部成績が全国最下位となった13年、当時の川勝平太知事が「下位の成績の校長名を公表したい」と表明し、物議を醸したことも。
小中とも全国トップクラスの正答率が続く石川県では22年に多くの学校で試験直前に「事前対策」が行われていたことが発覚し、問題となった。
指導改善につなげるという学力テスト本来の理念と、実態が懸け離れていないか。
熊本大の苫野一徳准教授(教育学)は「競争主義は教育界に残っている。競争が前面に押し出されると、勝ち負けが目的化し、学習自体を楽しんだり、熱中したりすることが妨げられてしまう。苦手分野を知るのであれば抽出調査で把握できるのではないか」と話す。
教育評論家の親野智可等氏は「自治体間で点取り競争が過熱し、真の学力が分からないテストになっている。日頃の学校のテストで不得意分野は十分に把握できる」と述べて、こう続ける。
「実施費用を教員の労働環境改善に充てた方が、むしろ児童生徒のためになる。学力テストの廃止もしくは一部を抽出した調査への変更を、早急に検討するべきだ」
『東京新聞』(2024年11月15日【ニュースの追跡】)
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