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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

改正教基法違憲訴訟控訴審

2008年12月27日 | 平和憲法
 ◎ 「1回開いて結審」はなし!
   改正教基法違憲訴訟控訴審始まる

渡辺容子

 改正教基法は違憲だと訴える控訴審の第1回の口頭弁論が行なわれました。1審と違って裁判長は名を名乗りました。
 私たちの意見陳述が終わり、予想通り裁判官は合議に。やはり審理しないで結審かと思いきや、次も開くと言うのです。
 マスコミは取り上げないけれど、私たちは今日もがんばっています。

 筆者らは教育基本法が「改正」されてしまっても、あきらめずに異議申し立てをしていこうと、改正教基法が違憲であると本人訴訟で提訴しました。東京地裁では不当にもたった1回の口頭弁論で何も審理せずに結審されたので裁判官を忌避していましたが最高裁で却下され、東京高裁に控訴しました。

◆ 裁判長が名乗った!もしかして人間?

 10月28日、東京高等裁判所809号法廷で改正教基法違憲訴訟の控訴審第1回口頭弁論が行われました。
 裁判官は、裁判長・原田敏章、氣賀澤耕一(右陪席)、加藤謙一(左陪席)の3名。
 裁判官は、開始予定時刻2時前に入廷しましたが、6名の被控訴人(国、自民党国会議員4名、公明党国会議員1名)のうち公明党国会議員の答弁書が、筆者ら4名の代表のうち3名に届いていないことが分かり、その確認のため、5分ほど時間を取られました。また被控訴人代理人のうち数名は遅刻し、2時5分、開廷が告げられました。

 今まで、筆者らは、第1回の時は開廷と同時に「すみません」と手を挙げ、裁判長が口を開くよりも先に自己紹介を求めていたのですが、何やかやと理由をつけて拒否する裁判長が多いため、その時間がもったいないということになり、今回は黙っていました。
 すると原田裁判長は初めに筆者ら4名の名前を一人一人確認し、期せずして自己紹介したような形になりました。こんな裁判長は初めてです。
 「ていねいな人だな。もしかして・・・」と、ちょっぴり期待感が膨らんできましたが、「いや、だまされてはいけない」と打ち消しました。なにしろ、今までの裁判官がひどかったからです。

 「この裁判長なら」と思い、筆者は「外の表には裁判官の名前が4つ書いてあったので、3人のお名前を教えていただきたい」とお願いすると、裁判長はごく自然に、「原田です。(右陪席を指して)氣賀澤です。(左陪席を指して)加藤です」と教えてくれました。
 これが普通の人間の対応です。さわやかでした。
 この前の裁判長は裁判官の名前の読み方がわからないと言っているのに(「長」さんは、「おさ」さんなのか「ちょう」さんなのか?)完全に無視したのです。

 原田裁判長は「控訴人は控訴状、被控訴人は答弁書を陳述しますね」と言いました。Jさんが「ちょっと待って下さい、口頭で陳述する時間を取ってくださっていますよね」と確認すると、「あとでまとめてやって下さい」と言いました。

◆ 一審の審理不尽を指摘、抽象的憲法判断の必要性を訴える

 それから裁判長は「口頭で陳述してください」と筆者らに言い、Jさんが控訴理由書の要点を陳述。
 たった1回の口頭弁論で結審した地裁判決は原告らの主張に対する誤解を前提に議論を組み立てており、取り消されるべきであるとし、まず審理不尽の4点を指摘しました。

 (1)被告太田明宏は答弁書において、訴状の「請求の趣旨」のうち改正教育基本法の憲法違反及び結論に対して「主張はすべて争う」としているのに、審理しなかった
 (2)原告は訴状及び準備書面(5)において、「やらせタウンミーティング」の違法性を主張したのに、なんら審理しなかった。
 (3)原告が主張した改正教基法の違憲性について、何ら審理しなかった。
 (4)原告、被告双方が引用し、主張が対立している「警察予備隊訴訟最高裁大法廷判決」について審理しなかった。

 次に、Jさんは原告らの主張に対する事実誤認について述べました。

 原判決には「教育基本法の内容が原告らの政治的思想信条に反するものであり、原告らがその内容に不快の念等を抱いたとしても」とあるが、原告らは改正された教基法は憲法の内容に反しており、教基法改正は違憲立法行為であると主張しているのであり、裁判所としては「改正教基法が現憲法に適っている」と判断するならば客観的に条文に照らして判断すべきであるとしました。

 さらに、今年の4月に名古屋高裁で出た「自衛隊のイラク派兵違憲判決」において相当程度抽象的な憲法判断は、政府のなし崩し的解釈改憲の歴史に歯止めをかける司法の快挙であったとし、憲法81条に定められた違憲立法審査権は抽象的憲法判断をも含むものであると主張しました。

 教基法が改正されたことによって、教育関連3法が改正され、国の権限が復活され、教員への管理強化がすすみ、また、2008年4月に改訂された学習指導要領は道徳教育を重視するように変えられ、国家の「あるべき教育」を家庭に押し付けるものであると主張しました。

◆憲法76条を忘れた裁判官、目を覚まして!

 次に筆者が、第1回口頭弁論にあたって、公正・中立及び適正な訴訟指揮を求める準備書面(1)を陳述しました。

 日本国憲法76条3項は、「すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」と定めています。
 ところが筆者らがこの間起こしてきた6つの裁判(杉並教科書裁判等)で、裁判官は憲法のこの条文に違反し、法律を勝手に解釈し、まともに審理もせずに門前払い判決を下してきました。
 筆者は裁判官の顔を見ながら、裁判官にこの条文を思い出してもらい、良心を取り戻してもらうため、祈るような気持ちで陳述しました。

◆母親原告、改定による生きづらさ切々と

 次にEさんが、小学生の子どもを持つ母親の立場から、準備書面(2)を陳述しました。

 2008年3月に改定された新学習指導要領は、「日本会議」などの政治家の圧力によって中央教育審議会の答申から大きく変更されてしまったが、それは47年制定の教育基本法が禁じていた「教育への不当な支配」を、改正教育基本法が許してしまったからであること。
 新学習指導要領によって個人の思想信条の自由を踏みにじる愛国心の強制、国家のための個人を作ろうとする目標の設定が行われたこと。
 そして、学校から頻繁に新学習指導要領を解説した冊子や国家の考える「あるべき教育観」を押し付ける内容の小冊子が配られ(証拠として提出)、そのたびに精神的苦痛を感じ、子どもには、なぜこれらの冊子が間違っているかを説明しなければならず、大きな損害を被っていると、よく通る声で真剣に訴えました。

 子どもを持つ母親の危機感がひしひしと伝わってきました。

◆証人申請と進行協議を求め、裁判所の真実究明義務を訴える

 最後にTさんが、準備書面(3)を陳述しました。
 Eさんの訴えた新しい損害が発生したこと、証人尋問の必要性が不可欠であることから、進行協議を求めるとしました。

 民事訴訟法243条1項では「裁判所は訴訟が裁判をするのに熟したときは、終局裁判をする」と定められており、「裁判をするのに熟した」とは、客観的に「熟した」時が必要なのであって、裁判所が真実究明義務を怠り、門前払い判決をしようとして結審する場合は、説明責任が生じると述べました。
 その場合、裁判官は裁判をすること自体を放棄したに等しく、忌避されることを受忍しているものとみなされるとしました。

◆やっぱり合議。結審かと思いきや?!

 陳述を終えると、裁判長は「合議します」と言いました。そこで、すかさずJさんが「何を合議するのですか?」と聞きました。すると裁判長は「それは言えません」と答え、扉の後ろに消えました。

 筆者らは合議に入ったら結審と考え、忌避することに決めていました。しかし、裁判官たちはなかなか出てきません。こっちも合議です。
 「長いね。どうしようか?」「でも絶対結審しかない。やっぱり忌避しよう」ということで、裁判長が扉を開けた瞬間、忌避うちわを掲げて、「裁判官を忌避します」と申し立てました。
 以前、忌避した時、結審前の忌避なのに、結審後の忌避にされてしまったので、目立つように忌避うちわを作ったのです。

 しかし裁判長は忌避を無視して、「証拠申出書を却下しますが、代わりに書面を出してもかまいません」と言いました。
 え!結審じゃないの?と驚いていると、裁判長は答弁書未送達だった被控訴人に答弁書を送るよう指示しました。

 筆者は、「あ、そうか。答弁書未送達だから結審できないのか。これは瓢箪から駒だな」と思いました。裁判長はそんな筆者を見透かすように、「証人尋問を却下しましたので、控訴人には尋問の代わりに何か提出する機会を与えます。また、答弁書に反論する機会を与えます」と控訴人に機会を与えると強調しました。

 答弁書未送達のせいで結審できないことを隠しておきたいのだろうと筆者は思いました。
 被控訴人のチョンボだとしても、弁護士と裁判官はオトモダチ、こんなつまらないミスで専門家たるものが素人に負けたと思いたくなかったのかもしれません。

 そして次回期日を1月27日(火)午後2時からとして閉廷しました。

 その後の報告会では、「すばらしい口頭弁論だったのに傍聴者が少なくて残念だった」という感想が多く出され、Tさんに対して、「教基法が改正されてしまってもあきらめずに裁判所で自分の意見を言ったのは日本中であなた一人。多くの人にこのことを知らせなければ」という賞賛の言葉が贈られました。

 筆者らが本人訴訟で行っている裁判は、マスコミにも取り上げられず、知る人はほとんどいないけれど、この国に真の民主主義が確立されれば、その時は先駆的な裁判として認められると信じ、今日もがんばっています。

『JANJAN』 2008/12/13
http://www.news.janjan.jp/living/0812/0812113318/1.php

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