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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

菅政権の「2021骨太の方針」の概要と批判

2021年08月16日 | ノンジャンル
 ◆ コロナに便乗 ショックドクトリン (週刊新社会)
経済ジャーナリスト 野崎佳伸

 政府は6月18日、新たな経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)と成長戦略を閣議決定した。
 ◆ ワクチン敗戦とオリ・パラの記述なし

 本年の骨太方針は菅内閣では初めてとなる。副題に挙げられた「4つの原動力」は、グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策だ。いずれも菅義億首相の、昨秋の所信表明演説、年頭の施政方針演説を踏まえたものだ。
 全4章の内の第1章では、新型コロナの克服とポストコロナの経済社会のビジョンについて語る。
 ワクチン接種については、高齢者への接種は7月末に、全ての対象者には10~11月までに終えるとするが、「今後も小さな流行の波は発生しうるが、これを大きな流行にしないよう」「効果的な感染防止策を継続・徹底する」と記す。
 ワクチン敗戦とオリ・パラ開催強行については何の記述もない。

 そして、「緊急時対応をより強力な体制と司令塔の下で推進する」ため「法的措置を速やかに検討する」と、相変わらずの「火事場泥棒政治」ぶりを発揮している。
 ◆ 原発再稼働、マイナンバーカードを全国民に

 第2章では先述の「4つの原動力」の推進が宣言されるが、「脱炭素化に向けて」の項では、相変わらず原子力について「可能な限り依存度を低減しつつ、安全最優先の原発再稼働を進める」とし、「道路整備等による避難経路の確保」「安全性に優れた炉の追求」などと無反省に語る。
 デジタル化についても「2022年度末にほぼ全国民にマイナンバーカードが行き渡ることを目指す」と、ここでも火事場泥棒ぶりが露見する。
 「活力ある地方」の項では、「我が国の労働分配率は長年にわたり低下傾向」と正直に語り、最低賃金については「より早期に全国加重平均1000円を目指す」と改めて書き込んだ。
 それを受けて本年10月改定は、時給28円増の930円となりそうだ。


 ◆ 「GoToトラベル事業」も再スタート

 同項「観光・インバウンドの再生」では「GoToトラベル事業」を、感染拡大防止
策を徹底した上で、としつつも相変わらず前のめりで、先ずは県内・圏内限定で再スタートさせることを目論んでいるのではないか。
 「少子化克服」の項は、歴代政権の対策が一向に功を奏しなかったことには頬かむりした上で、代り映えしない対策がテンコ盛りされている。目立たせたかったのは、菅首相の提唱した「不妊治療への保険適用」で、この文字は第1章でも強調されている。
 ◆ 中国への警戒感は露骨

 本章の5では「4つの原動力を支える基盤づくり」が列挙されているが、その中に「経済安全保障の確保」「戦略的な経済連携の強化」「外交・安全保障の強化」という場違いなものが含まれている。
 これらは何れも米中対立、日米同盟強化を踏まえて中国への警戒感をあらわにしたものだ。いわく
 「基本的価値やルールに基づく国際秩序の下で、同志国との協力の拡大・深化を図り」、
 「留学生・研究者等の受入れの審査強化」、
 「半導体、レアアースを含む重要鉱物、電池、医薬品等の先行的な重点項目について必要な措置を実施するとともに、電力、ガス、石油、通信、航空、鉄道、造船を含む海上物流、医療を始めとする重要業種について必要な対策を講ずる」。
 「本年4月の日米首脳会談で立ち上げられた『日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ』に基づき、米国との連携・取組を強化」、
 「『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向け、日米同盟を基軸としつつ、ASEAN、豪州、インド、欧州、太平洋島しょ国など基本的価値を共有する国・地域との協力を深化」、
 「国家安全保障戦略等に基づき、宇宙・サイバー・電磁波といった新領域を含む統合運用、多様な経空脅威への対処能力、必要な装備品・弾薬の確保や維持整備等防衛力を大幅に強化」
 などの言葉が躍る。


 ◆ 社会保障は検討し、削減狙う

 第3章は「経済・財政一体改革」について語られる。
 「2022年度から団塊の世代が75歳以上に入り始めることを見据え、全ての世代が安心できる持続可能な全世代型社会保障の実現。給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、保険料賦課限度額の引上げなど能力に応じた負担の在り方なども含め、医療、介護、年金、少子化対策を始めとする社会保障全般の総合的な検討を進める。」と言う。
 要は現役世代への配慮に名を借りた高齢者いじめ、世代間の分断を目指すというのである。
 ◆ 財政健全化にこだわる

 財政健全化では次のように強弁する。
 「将来世代の不安を取り除くためにも、社会保障の持続可能性を確保し、全ての団塊世代が75歳以上になるまでに財政健全化の道筋を確かなものとする。そのため、骨太方針2018で掲げた財政健全化目標(2025年度の国・地方を合わせたPB黒字化を目指す、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す)を堅持する」。
 しかし、自民党内の反発も強く、次の一文も続く。緊縮財政堅持では横並びのマスコミ各社が問題にするのはこれだ。
 「ただし、感染症でいまだ不安定な経済財政状況を踏まえ、本年度内に、感染症の経済財政への影響の検証を行い、その検証結果を踏まえ、目標年度を再確認する」。
 ◆ 予算は生活第一で配分を

 第4章は次年度予算編成に向けた考え方が示される。
 「成長と雇用の好循環」という用語は初登場だろう。目立つのは「グリーン、デジタル、地方活性化、子供・子育てへの重点的な資源配分(メリハリ付け)を行う」という一文だ。
 ◆ 成長政策とは

 安倍政権は「アベノミクス」を掲げ「三本の矢」と称する政策、①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③投資を喚起する成長戦略を進め、持続的な経済成長を目指し、①②を経済財政諮問会議で、③を日本経済再生本部で決定してきた。
 再生本部の下に、調査審議する組織として「産業競争力会議」、「未来投資会議」を設置し、いずれも、新自由主義政策を推進してきた。
 菅政権は日本経済再生本部とその下部組織「未来投資会議」を廃止し、「成長戦略会議」(議長は首相ではなく官房長官に)一本に改組した。
 この間、一貫して会議のメンバーだったのは竹中平蔵氏であり、今回の成長戦略会議に新たに入ったのが、菅首相が懇意なデービット・アトキンソン氏(小西美術工藝社社長)である。
 同氏は、最低賃金を引き上げ、生産性の低い中小企業を淘汰すべきとの論者である。
 7月14日、中央最賃審議会は全国平均で時給28円の引き上げの目安をまとめた。経営者側の反対を抑えたことは評価するにしても、労働者の生活改善には程遠く、地域間格差221円もそのままで地方創生の掛け声に反する。中小企業支援と併せ、全国一律1500円の最賃が求められる。
 今年の成長戦略は、骨太の方針と連動しているが、個別の政策では
   ①マイナンバーカードの普及などデジタル化への投資・環境整備、
   ②脱炭素化を見据えた環境(グリーン)戦略、
   ③テレワークの定着、兼業・副業の解禁による働き方改革、
   ④半導体などへの技術支援を含む経済安全保障、
   ⑤ワクチンの国内開発・生産支援
 等を揚げている。

 ①は監視社会化、②は原発再稼働、③は雇用破壊、④中国との軋礫などの問題をはらんでいる。
 今後とも、新自由主義政策の推進が主眼であることには変わりない。

『週刊新社会』(2021年7月27日)

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