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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

ナチスの「全権委任法」の手口を賛美

2013年08月18日 | 平和憲法
 = ヒトラー内閣の「全権委任法」 =
  第一条 政府は、憲法によって規定された方法以外の手続きで、法律を制定することができる。予算・国債募集についても同様で議会の賛成をへずに決定しうる。
  第二条 政府が制定する法律は憲法の規定と相違しうる。
  第三条 政府によって決定される法律は首相が起案し、法律公報に告示する。
  第四条 外国との諸条約は本法の有効期間中は、議会の承認を要しない。
  第五条 この法律の有効期間は、1937年3月3日までである。

 ● 麻生発言 改憲はナチスの手口で
井竿富雄(山口県立大学教授)

 麻生太郎副総理兼財務大臣が7月29日、都内での講演で「ナチスのあの手口を学んだらどうか」という発言をした。
 これに対して、米国の代表的なユダヤ人人権団体をはじめ各国で批判の声が上がっている。ドイツでは「ナチスをほめた」「手本とした」と批判的に報じられた。
 国内の与党幹部から打ち消しの動きがあるが、それは外交関係、国内改憲論議に火種を残さないことを狙ったものだ。麻生氏自身も発言を撤回したが、その釈明は「悪しき例として……あげた」として、その本意を隠蔽した。
 この麻生発言を許さず、改憲勢力の本音を徹底的に暴露する必要がある。山口県立大学教授の井竿富雄さんに、解釈改憲→明文改憲の動きが進む中で、どのように考えるか寄せてもらった。
 ● 権力奪取の意識の顕れ
 「昔は静かに行っておられました。各総理も行っておられた。いつから騒ぎにした。マスコミですよ。いつのときからか、騒ぎになった。騒がれたら、中国も騒がざるをえない。韓国も騒ぎますよ。だから、静かにやろうやと。憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね」(8月1日付、朝日新聞デジタルの記事から)
 7月29日に出た麻生太郎副総理兼財務相の発言である。この麻生発言、靖国神社参拝問題と改憲問題を組み合わせて語っているゆえに、文章に若干の混線がある。発言したのは保守派のシンクタンク「国家基本問題研究所」のシンポジウム席上だったというから、仲間内ゆえの気楽さだったろう。国際的な批判を浴びたため、麻生大臣は弁明を行い、この部分を撤回した。
 ● 有権者に対する貴重な教訓
 しかし、ナチスを引き合いに出して、靖国参拝や改憲を実現しよう、と言ったのは、単なる言い間違いでも失言でもないだろう。そのような政策が「権力奪取」の一環として意識されていたからに他ならない。
 麻生氏はこれまでも、若者の貧困に対して「金がないなら結婚するな」と言い、高齢者医療に対して「さっさと死ねるように」という発言をしてきた。
 恐るべき特権意識差別的思想で一貫した人物である。
 麻生大臣はそのような、強いものしか生き残れない社会体制(ナチスはそういえば、「障害者安楽死政策」を実行した!)に移行する手段・方法としてのナショナリズムであり、改憲だと有権者に分かりやすく教えたのである。
 ● 「茶色の朝」はそこにある
 ナチスの権力纂奪やワイマール憲法の考察については、ドイツ史研究者がこれまで心血を注いで明らかにしてきたのでここでは繰り返さない。問題は、それまでは振り向きさえもされなかった奇怪な集団であったナチスが急激に国会議員を増やしたことである。
 「ある日気が付いたら」は、そこにこそあるのだ。気が付けば「茶色の朝」がそこにいたのである。
 敗戦トラウマと経済的な苦難は、ドイツ国民にナチスを希望と思わせた。ワイマール憲法はドイツ国民自身によって死へと追いやられ、そのあとにはドイツ国民を含む大量の人々の死が続いたのであった。
 ● 自覚的に有権者は学べ
 全国紙も8月3日までに一応批判の社説は掲げた。しかしそれは「改憲論議に有害」か、あるいは「ナチスドイツに憲法はない」などという観点からが多かった。
 アメリカで従軍慰安婦の銅像が建てられたことについての強烈な反応(8月4日の『産経新聞』は「慰安婦は「性奴隷」ではない」とまで社説で叫んだ)とはずいぶん違っている。
 事態をとにかく沈静化して、海外への飛び火を防ぎ、国内的な改憲論議に水をかけないようにすることに腐心する姿が見て取れる。
 この発言に先立ち、麻生大臣はこう言っている。「ヒトラーは、選挙で選ばれたんだから。ドイツ国民はヒトラーを選んだんですよ。間違わないでください。そして、彼はワイマール憲法という、当時ヨーロッパでもっとも進んだ憲法下にあって、ヒトラーが出てきた。常に、憲法はよくても、そういうことはありうるということですよ」これは貴重な教えである。
 日本国憲法のもとにあって、このような政治家が出てくることはありうるという実例を、麻生氏はわが身を賭して有権者に教えてくれた。この教えは必ず実行されなければいけない。
 先日、韓国に向かって日本の大臣が放った「民度」という言葉がある。この言葉が、政治的な意味において日本の有権者に跳ね返ってきた。民主政治は自覚的に有権者が学び守っていくものだということを思い知らされたのである。
『週刊新社会』(2013/8/13)

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