=日刊ゲンダイ【人生100年時代の歩き方】=
☆ コンプライアンス川柳に学ぶ2025年の働き方
~「ふてほど」を 真に受けたら 痛い目に
ハイテクノロジーコミュニケーションズ(HTC)が制作した標語付き「2025年コンプライアンスカレンダー」から
☆ 「1月」 プレッシャー 上からかけるな 背中押せ
「部下の成長を阻害するような圧力をかけるのではなく、『支援する文化をつくろう』という思いが込められています」
10月、上司の次席検事から「話にならない」「修習生以下」などと罵倒され、さらに月平均100時間超の残業で5年前に自殺した若手検事の遺族が国を訴えた。検察庁は自殺について内部調査した結果、「原因は分からない」と結論付け、遺族に報告していた。
昨年の標語コンテストの最優秀賞「どう隠す 知恵絞るのは そこじゃない」が強烈に思い浮かんでくる。
☆ 「2月」 アップデート 機器だけでなく 危機感も
「サイバーセキュリティーや情報漏洩のリスクに対する危機感を持つことで、企業の安全性を守ることが可能です」
企業における情報漏洩は、メールの誤送付などヒューマンエラーが大半を占める。会社支給のパソコンを居酒屋に置き忘れるなどは典型例だ。
☆ 「3月」 3時間 続く説教 惨事感
「長時間の説教は、聞く側だけでなく話す側のエネルギーも無駄にします。また、労働基準法違反に抵触する場合があり、パワハラとみなされるリスクがあります」
☆ 「4月」 悪いこと 隠さんとしても すぐ拡散
「『隠そうとする行為』自体が現代ではリスクを高める結果を招くことを意識した標語です。SNSや内部告発制度が浸透する中で、企業は透明性を重視し、問題を早期に是正する姿勢を取るべきです」
11月、サッカーなでしこリーグ2部ディオッサ出雲FCの男性監督がブラジル人選手にセクハラをしたとして告発された。女子選手はポルトガル語で「男性器」を意味する言葉などを投げかけられたという。ディオッサは調査報告書をリーグに提出したが、内容は非公開として批判を浴びている。
☆ 「5月」 ブラックが 濃すぎて社員 不眠症
「過重労働や長時間労働の『ブラック化』が従業員に与える影響を皮肉とともに表現しています。特に心身の健康を損なうリスクがあることを伝え、労働環境の改善を求めるメッセージを込めました」
10年度から20年度までの「脳・心臓疾患」で労災認定を受けた事案のうち、1カ月の残業時間80時間以上が全体の9割超を占めた。特に29歳以下の80時間以上の割合が高かった。
☆ 「6月」 テレワーク カフェに耳あり ベンチに目あり
「テレワークの普及により、公共の場で仕事をする機会が増えましたが、それに伴う情報漏洩リスクを啓発する標語です。見られている、聞かれているという意識を常に持ち、企業情報の管理を徹底することを訴えています」
カフェで業務を行う場合、他の社員の目が届かないため不正行為が起きやすい。パソコンやUSBメモリーに不正にコピーして情報漏洩するリスクが増えている。
☆ 「7月」 ミス隠す 時だけアイデア わいてくる
「『責任を追及される恐怖』を取り除き、ミスをオープンに共有する文化が組織全体の改善や学びにつながると伝えています」
一連の自動車メーカーの認証不正。今年はIHIと日立造船(共に子会社)、川崎重工業がエンジン検査で不正だらけだったことが発覚している。
☆ 「8月」 抜け道を 探せばハマる 落とし穴
「規則や法律の『抜け道』を探す行為が、逆に大きなリスクを招く可能性を示唆しています。正しい行動を取ることが、結果的に組織を守る近道です」
今も引きずる自民党の裏金問題。裏金の温床となった企業・団体献金を禁じれば一発解決だが、自民党は頑として抵抗している。
☆ 「9月」 パワハラが 無くなり社員に 出るパワー
「社員が生き生きと働ける環境が組織全体の活力につながります。ネガティブな圧力を排除し、ポジティブなエネルギーを引き出しましょう」
☆ 「10月」 護りたい 正しい声を 上げる人
「正しいことを訴えたり、組織の改善を求めたりする声を守り抜くという強い思いが込められています。こうした声が抑圧されると、企業は改善の機会を失い、重大なコンプライアンス違反が放置されるリスクが高まります」
公益通報者保護法施行から18年。兵庫県の事例しかり、鹿児島県警の元生活安全部長ら内部告発者の保護はほど遠い。
☆ 「11月」 酒じゃない セクハラしたの あなたです
「セクハラが『お酒のせい』にされることが多い現実への警鐘を込めています。実際、コロナ明け以降、特に飲酒の上でのセクハラが増える傾向にあります」
昨年も本社社長がセクハラで辞任したENEOSで、今年はグループ会社の会長が女性社員の体にタッチ。本人は「酔って覚えていない」と言い訳している。
☆ 「12月」 摘み取るか 罪に育つか 不正の芽
「不正の兆候を見逃すと、やがて大きな問題に発展する可能性があります。不正の“芽”の段階で対処することが企業の信頼を守る鍵です。小さな問題に気づき、迅速に対応することが大きなリスクを防ぎます」
見て見ぬふりは悪事に加担したことと一緒。職場をより良いものにするには、自分自身が小さな“芽”に敏感になることが大事かもしれない。
『日刊ゲンダイ』(2024年12月7日)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/364506/3
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