◎ 元教員への賠償、都に命じる
君が代不起立訴訟で初 - 東京高裁
入学式や卒業式で、国旗に向かった起立と国歌斉唱を義務付けた東京都教育委員会の職務命令に従わず、停職処分を受けた都立養護学校元教員の女性(62)が、都に300万円の損害賠償などを求めた訴訟の差し戻し控訴審判決が7日、東京高裁であった。南敏文裁判長は請求を棄却した一審東京地裁判決を変更し、30万円の支払いを命じた。
原告側代理人弁護士によると、君が代不起立訴訟で、損害賠償が認められたのは初めて。
判決は、「不起立で女性に不利益な処分をすることは、思想や良心の自由に影響を与える」とし、戒告、減給から停職へと機械的に加重して処分すべきではないと指摘。都には、不起立による学校運営への影響など、処分の際に考慮すべきことを認識しなかった過失があるとした。
その上で、「養護学校では、教諭と児童・生徒との触れ合いが教育に欠かせず、女性はその触れ合いを特に重視していた」と判断。停職中、教壇に立てないことによる精神的苦痛は、支給されなかった給与の支払いでは回復できないと結論付けた。
女性は、都を相手に処分取り消しと損害賠償を求めて提訴。
一、二審は訴えを退けたが、最高裁は停職処分を「懲戒権者の裁量の範囲を超えている」として取り消し、賠償請求について高裁に審理を差し戻していた。
『時事ドットコム』(2012/11/07-18:57)
【判決文から】
○ 本件処分の国家賠償法上の違法性
「この(都教委の)違法は,停職処分を取り消すべき違法であるのみならず,不起立行為の性質,実質的影響,停職処分の不利益に対する考慮が尽くされていないという意味で職務上通常尽くすべき注意義務に違反しているというべきであり,国家賠償法上も違法である。」
○ 都教委の過失の有無について
「(国旗国歌法制定時の政府)答弁をみても,国旗に対する起立及び国歌斉唱には,憲法上の思想,良心の自由との関係で微妙な問題があること・・・が意識されていたことが認められる。したがって,外部的行為は悪想,良心の自由の問題ではないとしても,起立斉唱行為を命ずる旨の職務命令に従わず不起立行為を行った者の不起立の理由等を処分の選択に当たって考慮に入れることは要請されていたというべきである。」
「機械的,一律的な加重は慎重であることが要請されていたということができる。」
「体罰事案では,個別の事案ごとに処分を決定し,あらかじめ,体罰の回数に応じて機械的,一律的に処分を加重していくなどとはしていないものと認められる。」
「各行為の具体的状況を何ら顧みることなく,機械的に職務命令違反,すなわち不起立の回数だけで処分を加重していく方式は,過去の他の非違行為ではみられなかった基準といわざるを得ない。」
「本件処分を行うに当たって当然に考慮すべき事項を認識し得る契機は十分にあったのであるから,これらを認識しなかったことには過失があるというべきである。」
○ 控訴人の損害について
「教師の場合は,停職期間中教壇に立てないという不利益を被るが,教育公務員の性質上,この不利益による精神的苦痛は,処分が取り消されたり,その結果,支払われなかった給与が支払われることをもって回復するものとはいうことができない。」
「特に,養護学校では,教諭と児童生徒との人格的触れ合いが教育活動に欠かすことのできないものであると考えられるところ,証拠によれば,控訴人は,児童生徒との触れ合いを特に重視していたと認められることを考慮すると,財産的損害の回復のみによっては,控訴人の精神的損害が慰謝されるものでないことは明らかである。」
君が代不起立訴訟で初 - 東京高裁
入学式や卒業式で、国旗に向かった起立と国歌斉唱を義務付けた東京都教育委員会の職務命令に従わず、停職処分を受けた都立養護学校元教員の女性(62)が、都に300万円の損害賠償などを求めた訴訟の差し戻し控訴審判決が7日、東京高裁であった。南敏文裁判長は請求を棄却した一審東京地裁判決を変更し、30万円の支払いを命じた。
原告側代理人弁護士によると、君が代不起立訴訟で、損害賠償が認められたのは初めて。
判決は、「不起立で女性に不利益な処分をすることは、思想や良心の自由に影響を与える」とし、戒告、減給から停職へと機械的に加重して処分すべきではないと指摘。都には、不起立による学校運営への影響など、処分の際に考慮すべきことを認識しなかった過失があるとした。
その上で、「養護学校では、教諭と児童・生徒との触れ合いが教育に欠かせず、女性はその触れ合いを特に重視していた」と判断。停職中、教壇に立てないことによる精神的苦痛は、支給されなかった給与の支払いでは回復できないと結論付けた。
女性は、都を相手に処分取り消しと損害賠償を求めて提訴。
一、二審は訴えを退けたが、最高裁は停職処分を「懲戒権者の裁量の範囲を超えている」として取り消し、賠償請求について高裁に審理を差し戻していた。
『時事ドットコム』(2012/11/07-18:57)
【判決文から】
○ 本件処分の国家賠償法上の違法性
「この(都教委の)違法は,停職処分を取り消すべき違法であるのみならず,不起立行為の性質,実質的影響,停職処分の不利益に対する考慮が尽くされていないという意味で職務上通常尽くすべき注意義務に違反しているというべきであり,国家賠償法上も違法である。」
○ 都教委の過失の有無について
「(国旗国歌法制定時の政府)答弁をみても,国旗に対する起立及び国歌斉唱には,憲法上の思想,良心の自由との関係で微妙な問題があること・・・が意識されていたことが認められる。したがって,外部的行為は悪想,良心の自由の問題ではないとしても,起立斉唱行為を命ずる旨の職務命令に従わず不起立行為を行った者の不起立の理由等を処分の選択に当たって考慮に入れることは要請されていたというべきである。」
「機械的,一律的な加重は慎重であることが要請されていたということができる。」
「体罰事案では,個別の事案ごとに処分を決定し,あらかじめ,体罰の回数に応じて機械的,一律的に処分を加重していくなどとはしていないものと認められる。」
「各行為の具体的状況を何ら顧みることなく,機械的に職務命令違反,すなわち不起立の回数だけで処分を加重していく方式は,過去の他の非違行為ではみられなかった基準といわざるを得ない。」
「本件処分を行うに当たって当然に考慮すべき事項を認識し得る契機は十分にあったのであるから,これらを認識しなかったことには過失があるというべきである。」
○ 控訴人の損害について
「教師の場合は,停職期間中教壇に立てないという不利益を被るが,教育公務員の性質上,この不利益による精神的苦痛は,処分が取り消されたり,その結果,支払われなかった給与が支払われることをもって回復するものとはいうことができない。」
「特に,養護学校では,教諭と児童生徒との人格的触れ合いが教育活動に欠かすことのできないものであると考えられるところ,証拠によれば,控訴人は,児童生徒との触れ合いを特に重視していたと認められることを考慮すると,財産的損害の回復のみによっては,控訴人の精神的損害が慰謝されるものでないことは明らかである。」
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