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拉致問題・国旗国歌という特定の価値観で教科書を採択するよう誘導する都教委

2018年07月29日 | 暴走する都教委
 ◆ 中学道徳教科書で都教委、政治色濃い"調査"資料を公表
   〝国旗・国歌〟記述執拗に明示、採択で各地教委に圧力
(マスコミ市民)
永野厚男(教育ジャーナリスト)

 道徳教科化に伴い7~8月、全国の教育委員会が初の文部科学省検定済・中学校道徳教科書(2019年度使用)の採択を行うのを前に、東京都教育委員会は6月28日の定例会で、『教科書調査研究資料』(以下、資料)を公表した。
 昨年採択の小学校道徳や、ここ数年の小中の社会、高校の歴史・公民と同様、「国旗・国歌の扱い」「北朝鮮による拉致問題」など、政治色の濃い独自の調査項目を設定している。
 資料はまず、改定教育基本法から〝公共の精神を尊ぶこと〟〝国を愛する態度〟などだけを取り出し強調。同法前文にある「個人の尊厳を重んじ」、第2条の「学問の自由を尊重」「個人の価値を尊重」は掲載していない。
 そして「(8社・30冊の道徳)教科書の違いや特徴がより明確になると考えられる項目を選択し、・・・調査研究を行」うと称し、「調査項目の具体的な内容」に、
①国旗・国歌の扱い、
②オリンピック・パラリンピックの扱い、
③北朝鮮による拉致問題の扱い
 などを明記した。
 これら調査目的を、
 ①は「学習指導要領に基づき、国旗・国歌に対する正しい認識をもたせ、それらを尊重する態度を育てることが大切」、
 ②は「文化・スポーツに親しみ、国際社会に貢献できる日本人を育成する」、
 ③は「生徒が人権尊重の理念を正しく理解できるようにするため」と、資料は明記。
 だが③では、人権侵害の顕著なヘイトスピーチなど在日外国人差別問題は、一切調査していない。
 資料は①について、王貞治氏が「(自分は)国に守られてきたという意識が多少なりともあっていいだろうと思う」「皆が・・・国と自分との関係をもっとおおらかな気持ちで、礼節をもって考えてみてもいいのではないか」と語る廣済堂(こうさいどう)あかつきと、学校図書の2社の2年教材「国」にある、「後楽園球場で日本シリーズが行われるときなど、試合前に国旗が掲揚される」が、「国旗が掲揚されるときには、総員脱帽とまではいかなくても、起立ぐらいはしたら」などの記述を引用。〝君が代〟と〝愛国心〟が一体化し、政治色の濃い教材だ。
 一方、資料は、日本教科書株式会社(改憲政治団体の日本会議系・日本教育再生機構理事長の八木秀次(やぎひでつぐ)・麗澤(れいたく)大学教授が作成・発行に関与)の2年「キスからもらった勇気」が「日本で治療を行ったポーランドの孤児たちが、日本を去る日に別れを惜しみながら『君が代』を歌ったことに関する記載」をしている、と明記した。
 また教育出版(日本教育再生機構理事の貝塚茂樹・武蔵野大学教授らが執筆)の1年「最強の敵 最大の友」が「国旗のついた水泳キャップやジャージを着用した…萩野公介さんと瀬戸大也さんの写真が掲載されている」と、細かく調査している。
 これらの教材は内容項目上、「キスから・・・」が「公正・公平・社会正義」で、「最強の・・・」が「友情・信頼」であり、〝君が代〟や国旗は付随的に出ているのに過ぎない。それなのに、水泳キャップの小さい国旗等、細かいところまでチェックする意図は?
 ③について、資料が「調査の結果、記載の無いことを確認した」と、わざわざ記載しているのと併せ、都立学校のベテラン教諭は「都教委の官僚には保守系政治家ら〝上〟に対し、国旗・国歌、拉致問題をちゃんと調べました、と弁明する意図がある。水泳帽の小さい日の丸旗の有無を調査しても、道徳教育には何も役立ちません」と語る(【注】参照)。
 このように、資料の政治性・偏向ぶりは明白だが、定例会では中井敬三(けいぞう)教育長、元NHKキャスターの宮崎緑氏、柔道家の山口香(かおり)・筑波大学体育系教授ら教育委員は、誰も意見はもとより質問すらしなかった。
 資料は、地方教育行政法第21条6号を独自に解釈し、公立学校の教科書採択権限を、「所管の教育委員会に属する」と主張。「区市町村教委は本資料を参考にした上で、・・・教科書を採択」するよう求めている。
 保守的な教育委員の多い区市町村教委が特定の出版社の教科書を採択するのに有利な材料を、都教委は提供した、と言えよう。
 【注】 この6月28日の定例会で都教委が出した『平成31年度使用 高等学校用教科書調査研究資料』は、北朝鮮による拉致問題も五輪もない、江戸時代以前の古文・漢文を扱う「古典A」「古典B」まで、②③を調査し、「調査の結果、記載の無いことを確認した」と明記。約10人の傍聴者の多くがあきれ果てていた。
『マスコミ市民』(2018年8月)

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