【東京「君が代」裁判第一次訴訟判決原告団・弁護団声明】
● 自分の頭で考えない裁判官は悪い教育の見本
~最高裁ピアノ判決をなぞっただけの「君が代」処分取消裁判
1 本日、東京地方裁判所民事第19部(中西茂裁判長)は、都立学校の教職員172名が卒業式等の国歌斉唱時に校長の職務命令に従って起立斉唱・ピアノ伴奏しなかったために懲戒処分(1名が減給、171名が戒告)されたことにつき、処分の取消しと国家賠償を求めた事件(東京「君が代」裁判・処分取消請求第1次訴訟)について、教職員らの請求を棄却した。
2 本件は、東京都教育委員会(都教委)が2003年10月23日付けで全都立学校の校長らに通達を発し(10・23通逮)、卒業式・入学式等において国歌斉唱時に教職員らに対し、指定された席で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱すること、伴奏すること等を命じて、「日の丸・君が代」の強制を進める中で起きた事件である。都教委は、10・23通達により、式次第の内容から会場設営等に至るまで事細かに定め、これまで生徒を主人公として築き上げてきた学校ごとの創意工夫を否定し、全ての都立学校に、「日の丸・君が代」を中心とする式を強制した。その徹底のために全校長から全教職員に職務命令を出させ、式当日には教育庁職員を全都立学校に派遣して教職員・生徒の言動を監視し、従わなかった教職員を処分することで教育現場から排除しようとしたのである。
原告らは、自己の歴史観・人生観・宗教観等や長年の教育経験から、都教委の「日の丸・君が代」一律強制は教育の本質に反するとの思い、過去の侵略戦争の象徴であった日の丸・君が代に敬意を表することは出来ないという真摯な思い等から、通達及び職務命令に従って起立・斉唱・伴奏することが出来なかったものである。
都教委は、卒業式等の国歌斉唱時に起立斉唱またはビアノ伴奏せよという校長の職務命令に違反したとして、原告らを戒告・減給等め懲戒処分とした。なお、この処分は毎年、卒業式等の度に繰り返され、10・23通逮以降、本日まで、職務命令違反として懲戒処分された教職員は、のぺ410名にのぼる。
3 判決は、国歌斉唱時の起立等を命じる校長の職務命令が憲法19条に違反するかという争点については、2007年2月27日のピアノ事件最高裁第三小法廷判決と同様に、原告らが国歌斉唱時の起立を拒否することは、原告らにとっては思想・良心に基づく一つの選択ではあろうが、一般的には卒業式等の国歌斉唱時に不起立行為等にでることが、原告らの歴史観ないし世界観又は信条と不可分に結びつくものではなく、また、校長の職務命令は、原告らの思想・良心それ自体を否定するものではなく、原告らに対し特定の思想を持つことを強制・禁止したりするものでもないとして、憲法19条違反とは認めなかった。
続いて、判決は、地方公共団体が設置する教育委員会が、教育の内容及び方法について遵守すべき基準を設定する場合には、公立学校を所管する行政機関として、その管理権に基づき、学校の教育課程の編成や学習指導等に関して基準を設定し、必要性、合理性が認められる範囲内において具体的な命令を発することができるとして、都教委による10・23通遼及びその後の指導について、都立高校を直接所管している都教委が必要と判断して行ったものである以上、改定前教育基本法10条の「不当な支配」に該当するとまでは言えないと判示した。
さらに、原告らが、本件懲戒処分は、都教委の裁量権を逸脱・濫用していると主張した点についても、都教委がなした戒告・減給処分は、比例原則には反せず、社会観念上著しく妥当を欠くとはいえないとして、本件懲戒処分が都教委の裁量権を逸脱したものとは言えないと判断した。
4 わたしたちは、このような不当判決に対し、強く抗議の意思を表明する。
まず、判決が「日の丸・君が代」を職務命令をもって強制することを憲法19条違反と認めず、安易にピアノ事件最高裁判決と同様の判示を行ったことについては、憲法の番人としての裁判所の権威を失墜させたと評さざるを得ない。
国歌斉唱時の起立斉唱を拒否することと思想・良心との結びつきを表面的にしか見ようとせず、憲法19条の保障の範囲を狭く押し込めてしまう判決の論理は、精神的自由の根源である思想・良心の自由の保障の意義を没却し、憲法19条を空文化するものである。
また、都教委の10・23通逮及び校長らに対する一連の指導等を、改定前教育基本法10条の「不当な支配」にあたらないと認定した点についても、教育委員会が過度に教育現場に介入する危険性を看過し同条の趣旨を没却することとなり、不当な解釈である。
さらに、判決が、戒告処分であっても実質的に教職員に大きな不利益があることを無視し、行政裁量を過度に保護したことは、行政に対する司法のチェック機能の放棄である。
10・23通達以後の露骨で苛烈な都教委の権力的統制に対し、司法が法と良識に基づいて歯止めを掛けることができなかったことは、誠に残念というほかない。
わたしたちは、この不当判決に対して速やかに控訴を行い、高等裁判所において断固として闘い続ける所存である。
5 10・23通達及び校長の職務命令を明確に違憲・違法と断じた予防訴訟東京地裁判決(2006.9.21)にもかかわらず、ピアノ事件最高裁判決以降、安易に「日の丸・君が代」の強制を合憲とする不当判決が続いているところであり、極めて憂慮すべき事態である。
都教委は、予防訴訟判決後も、「日の丸・君が代」の強制を全く改めようとしておらず、不起立等を理由とする懲戒処分や、不起立を理由にした再雇用拒否、再発防止研修命令等を毎年繰り返している。
しかし、そのような姿勢が誤っていることは、今後の関連訴訟(予防訴訟控断審、君が代強制解雇事件控訴審、君が代嘱託採用拒否事件の控訴審等)や本事件控訴審および上告審で、遠からず明らかになるものと確信している。
今後とも、教育現場での「日の丸・君が代」の強制に反対するわたしたちの訴えに対し、皆様のご支援をぜひともいただきたく、広く呼びかける次第である。
2009年3月26日
● 自分の頭で考えない裁判官は悪い教育の見本
~最高裁ピアノ判決をなぞっただけの「君が代」処分取消裁判
声 明
1 本日、東京地方裁判所民事第19部(中西茂裁判長)は、都立学校の教職員172名が卒業式等の国歌斉唱時に校長の職務命令に従って起立斉唱・ピアノ伴奏しなかったために懲戒処分(1名が減給、171名が戒告)されたことにつき、処分の取消しと国家賠償を求めた事件(東京「君が代」裁判・処分取消請求第1次訴訟)について、教職員らの請求を棄却した。
2 本件は、東京都教育委員会(都教委)が2003年10月23日付けで全都立学校の校長らに通達を発し(10・23通逮)、卒業式・入学式等において国歌斉唱時に教職員らに対し、指定された席で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱すること、伴奏すること等を命じて、「日の丸・君が代」の強制を進める中で起きた事件である。都教委は、10・23通達により、式次第の内容から会場設営等に至るまで事細かに定め、これまで生徒を主人公として築き上げてきた学校ごとの創意工夫を否定し、全ての都立学校に、「日の丸・君が代」を中心とする式を強制した。その徹底のために全校長から全教職員に職務命令を出させ、式当日には教育庁職員を全都立学校に派遣して教職員・生徒の言動を監視し、従わなかった教職員を処分することで教育現場から排除しようとしたのである。
原告らは、自己の歴史観・人生観・宗教観等や長年の教育経験から、都教委の「日の丸・君が代」一律強制は教育の本質に反するとの思い、過去の侵略戦争の象徴であった日の丸・君が代に敬意を表することは出来ないという真摯な思い等から、通達及び職務命令に従って起立・斉唱・伴奏することが出来なかったものである。
都教委は、卒業式等の国歌斉唱時に起立斉唱またはビアノ伴奏せよという校長の職務命令に違反したとして、原告らを戒告・減給等め懲戒処分とした。なお、この処分は毎年、卒業式等の度に繰り返され、10・23通逮以降、本日まで、職務命令違反として懲戒処分された教職員は、のぺ410名にのぼる。
3 判決は、国歌斉唱時の起立等を命じる校長の職務命令が憲法19条に違反するかという争点については、2007年2月27日のピアノ事件最高裁第三小法廷判決と同様に、原告らが国歌斉唱時の起立を拒否することは、原告らにとっては思想・良心に基づく一つの選択ではあろうが、一般的には卒業式等の国歌斉唱時に不起立行為等にでることが、原告らの歴史観ないし世界観又は信条と不可分に結びつくものではなく、また、校長の職務命令は、原告らの思想・良心それ自体を否定するものではなく、原告らに対し特定の思想を持つことを強制・禁止したりするものでもないとして、憲法19条違反とは認めなかった。
続いて、判決は、地方公共団体が設置する教育委員会が、教育の内容及び方法について遵守すべき基準を設定する場合には、公立学校を所管する行政機関として、その管理権に基づき、学校の教育課程の編成や学習指導等に関して基準を設定し、必要性、合理性が認められる範囲内において具体的な命令を発することができるとして、都教委による10・23通遼及びその後の指導について、都立高校を直接所管している都教委が必要と判断して行ったものである以上、改定前教育基本法10条の「不当な支配」に該当するとまでは言えないと判示した。
さらに、原告らが、本件懲戒処分は、都教委の裁量権を逸脱・濫用していると主張した点についても、都教委がなした戒告・減給処分は、比例原則には反せず、社会観念上著しく妥当を欠くとはいえないとして、本件懲戒処分が都教委の裁量権を逸脱したものとは言えないと判断した。
4 わたしたちは、このような不当判決に対し、強く抗議の意思を表明する。
まず、判決が「日の丸・君が代」を職務命令をもって強制することを憲法19条違反と認めず、安易にピアノ事件最高裁判決と同様の判示を行ったことについては、憲法の番人としての裁判所の権威を失墜させたと評さざるを得ない。
国歌斉唱時の起立斉唱を拒否することと思想・良心との結びつきを表面的にしか見ようとせず、憲法19条の保障の範囲を狭く押し込めてしまう判決の論理は、精神的自由の根源である思想・良心の自由の保障の意義を没却し、憲法19条を空文化するものである。
また、都教委の10・23通逮及び校長らに対する一連の指導等を、改定前教育基本法10条の「不当な支配」にあたらないと認定した点についても、教育委員会が過度に教育現場に介入する危険性を看過し同条の趣旨を没却することとなり、不当な解釈である。
さらに、判決が、戒告処分であっても実質的に教職員に大きな不利益があることを無視し、行政裁量を過度に保護したことは、行政に対する司法のチェック機能の放棄である。
10・23通達以後の露骨で苛烈な都教委の権力的統制に対し、司法が法と良識に基づいて歯止めを掛けることができなかったことは、誠に残念というほかない。
わたしたちは、この不当判決に対して速やかに控訴を行い、高等裁判所において断固として闘い続ける所存である。
5 10・23通達及び校長の職務命令を明確に違憲・違法と断じた予防訴訟東京地裁判決(2006.9.21)にもかかわらず、ピアノ事件最高裁判決以降、安易に「日の丸・君が代」の強制を合憲とする不当判決が続いているところであり、極めて憂慮すべき事態である。
都教委は、予防訴訟判決後も、「日の丸・君が代」の強制を全く改めようとしておらず、不起立等を理由とする懲戒処分や、不起立を理由にした再雇用拒否、再発防止研修命令等を毎年繰り返している。
しかし、そのような姿勢が誤っていることは、今後の関連訴訟(予防訴訟控断審、君が代強制解雇事件控訴審、君が代嘱託採用拒否事件の控訴審等)や本事件控訴審および上告審で、遠からず明らかになるものと確信している。
今後とも、教育現場での「日の丸・君が代」の強制に反対するわたしたちの訴えに対し、皆様のご支援をぜひともいただきたく、広く呼びかける次第である。
2009年3月26日
東京「日の丸・君が代」処分取消訴訟(一次訴訟)原告団・弁護団
微力ながら、連帯して闘っていく決意を表明いたします。
所属 三鷹高校(三月三十一日まで)
八王子拓真高校(四月一日から) 岩橋正人