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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

解雇裁判控訴審第一回報告

2007年11月23日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 ☆ 「君が代・強制」解雇裁判通信 第69号 2007年11月9日

 「定年後の雇用」と「思想良心の自由」を守る注目の「解雇裁判」
 ~控訴審第一回口頭弁論開かれる(10/30)


 青空が美しく、爽やか風が心地よい秋晴れの10月30日、午前10時から、東京高裁101法廷で、「解雇裁判」控訴審(宗宮英俊裁判長)の第一回口頭弁論が開かれ、蔵野、太田、近藤の各控訴人が「それぞれの思い」を込めた6分間の意見陳述を行い、さらに、川口弁護士が「これまでの自由な都立高校の様子とそれが都教委によって破壊された経緯」を、また、水口弁護士は「控訴理由書を補足し強調したい点と訴訟進行についての意見」を弁論しました。
 全部で35分のほどの意見陳述や弁論でしたが、それぞれ持ち味を生かした陳述や弁論となっており、当初の「控訴人の不起立理由と《人となり》を裁判官に理解してもらう」という目的は達成できたのではないかと思います。
 また、心配された「一回結審」ということもなく、宗宮裁判長の「慎重な訴訟指揮」が伺えたことも大きいことでした。
 早い時間帯ということもあり、傍聴人数が心配されましたが、93人のところ96人が並び抽選になったのは、裁判所へはよいメッセージとなったようです。なお、後から来た人を入れると、今回の傍聴希望者は106名でした。今後とも傍聴をお願い致します。

 「生徒たちが他人と違うかもしれない意見や疑問を、安心して口に出来ない学校を恐れる」
 「おかしいことをおかしいと言える社会に!」

 ==控訴人、「それぞれの不起立理由」を陳述==


▼控訴審における意見陳述の目的
 この目的の第一は「佐村判決」が事実に反することを、控訴人の「人となり」を含めて、高裁の裁判官に理解してもらうことでした。3人の控訴人の陳述で共通していたのは、どの学校でも「卒業式は混乱なく実施されていた」ということです。ここも大事な内容です。

 ☆心に響いた意見陳述
▼二日前、突然の解雇

 蔵野博さん
は、「私は、定年後の最後の3年間を学級担任として過ごしてきた。担任は生徒や保護者と直接向きあう仕事で、常に「教育的指導と助言」を求められる。担任の一方的な指導や道理のない強制では生徒は納得しない。その指導や助言を行うには、教師としての視点と思想が重要だ。それを、私は憲法に求めてきた。通達や職務命令に従い、起立し斉唱することは、私の心情とこれまでやってきたことを否定することである」と述べ、「定年後の人生設計の中心を占めていたのは5年間の再雇用であった。4月1日からの仕事も決まっていた。それが、その二日前、突然、戒告処分と再雇用合格取消の通知を渡された。経済的な損失と精神的な苦痛は大きい」と、過酷な解雇の実態を陳述しました。
▼「私は卒業生の前で自分をごまかせなかった」
 太田淑子さん
は「混乱もなく終わった卒業式での不起立だけで、示威行動と決めつけ、生き甲斐としての仕事を奪うというのは納得出来ない一と言い、「私は、卒業生の前で自分をごまかせなかった、社会に巣立つ青年の前で誠実に振る舞いたかっただけだ」と不起立の理由を述べ、自分の数学の教育実践を通して見た生徒の成長過程を述べました。さらに「教職員が自分の考えを正直に言えなくなれば、生徒は本心を見せなくなる。意見の違いがあって当たり前、たとえ当然と思える事柄でも様々な考え方が存在することを学び、自分と違う意見を.理解しようとする姿勢を身につけてほしい。国旗・国歌について考えるとき、日本の不幸な歴史を学ぶことが大切だ」と、「内心の自由」の説明さえも禁止した都教委の通達を批判しました。
▼「38年間の教員時代を通して、一度も不起立したことがなかった私が、今回だけ不起立したのは何故か」
 元教頭でもある近藤光男さんは、「君が代」をこれまで、「起立し、誰よりも一番大きな声で歌っていた」と言います。それがどうして今回に限って不起立という行為に出たのでしょうか。
 まず、近藤さんは、自分の武道の師と同じ経験をされた元海軍中尉(現在牧師)の「特攻潜水艇」について述べ、「その特攻精神は上官による『命令と強制』によって育まれた」という証言を紹介し、「10・23通達が、これは『命令と強制』によって時代を逆戻りさせようとしているものだと感じたからだ。『おかしいことはおかしい』と言っても処分されることのない安心して暮らせる社会をつくることが大切だ」と不起立の理由を陳述しました。
 また、自分の経験に触れ「被災体験を持っていること、それを語り継いでいく責任がある」と言い、保健体育の教員であったときの「柔道の授業を拒否した生徒に対する実践」を述べました。「戦前の教育がそうであったように、戦争は教室から始まる。教育が行政権力によって支配され、学校が『命令と強制』、服従の場になったときに、悲劇は再び繰り返される」と、鋭い警鐘を鳴らした陳述を行い、最後に「教育公務員だから従えというは、私の全人格を否定されるのに等しい。裁判所が違憲・違法な東京都の行政の誤りを糾してほしい」と訴えました。

▼代理人による弁論
◆川口弁護士は

「かつての都立高校には『自由な雰囲気』があり、それを生徒も誇りに思っていた。どんな意見でも意見として尊重され、頭から否定されることのない環境がここにはあった。この環境は、教師たちに意識的に形成され、保たれてきたものだった」と、都立高校の良き姿を描き出し、
「このような都立高校の姿を一変させたのが10・23通達であった」と、その違いを具体的に明らかにしました。また、
「たった一回の不起立で、今後数年間の雇用を奪われるというケースは、日本全国でも、控訴人たち、東京都の教師のみである」と、過酷な処分を告発しました。
◆水口弁護士は、
 都立高校における「国旗・国歌」について、これまでの状況と経緯に触れ、「佐村判決」が認定した、「通達を発し、指導、監督、監視する必要があった云々」ということは、「事実に反することだ」と述べ、本件通達が発令された背景事実の正確な認識を裁判所に促す弁論を行いました。また、訴訟進行について次回までに提出する書面と立証趣旨を述べ、最後に「この問題は、再雇用を希望している全ての都立学校の一万二千人の教職員の思想・良心の自由、そして生活に直接に関わる重大な問題である」と強調し、弁論を締め括りました。

 ☆ 報告集会に70人
 報告集会は弁護士会館504号室で、予定より早く11時頃から始まりました。まず、全体の報告を水口弁護士が行い、続いて川口弁護士が弁論の特徴を話し、3人の陳述者の感想が述べられた後、8名の弁護士がそれぞれ挨拶を行いました。
 特に9月に弁護士登録をしたばかりという2人の弁護士の「是非この弁護団に加わりたかった」、「強制だけはおかしいと思い加わった」という挨拶には、感慨と共に、心強さを感じました。
 控訴人5名のユニークな「決意表明」、予防、不採用、抗告訴訟の訴え、また、藤田さんから「藤田裁判」の訴えがありました。
 最後に河合都高教組副委員長から「今後ともこの裁判を支援する」というメッセージがあり、報告集会は12時に終了しました。
 カンパの訴えも行われ、3万4千352円のカン。ハを頂きました。有り難うございました。また、「解雇裁判記録集」も19冊売れました。

 ★ 今後の「解雇裁判」日程
  第2回口頭弁論2月12日(火)15時~101号法廷

 なお、12月21日までに被控訴人(都側)の答弁書と控訴人らの認証書面、準備書面を提出する。
 また、次回口頭弁論までの間に進行協議を入れる。

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