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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

原告団・弁護団声明

2007年06月22日 | 日の丸・君が代関連ニュース
声 明

1 本日、東京地方裁判所民事第11部(佐村浩之裁判長)は、都立高校の教員10名が卒業式の国歌斉唱時に校長の職務命令に従わずに1度起立しなかったことのみを理由に、定年退職後の再雇用職員(嘱託員)の合格を取り消され(新規4名・更新5名/1名は非常勤講師)、実質的に解雇された事件(君が代強制解雇裁判)について、教員らの請求を棄却した。

2 本件は、東京都教育委員会(都教委)が2003声10月23日付けで全都立学校の校長らに通達を発し(10.23通達)、卒業式・入学式等において国歌斉唱時に教職員らが指定された席で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱すること等を徹底するよう命じて、「日の丸・君が代」の強制を進める中で起きた事件である。
 都立高校では、10.23通達以前には、国歌斉唱の際に起立するかしないか、歌うか歌わないかは各人の内心の自由に委ねられているという説明を式の前に行うなど、国歌斉唱が強制にわたらないような工夫が行われてきた。
 しかし、都教委は、10.23通達後、内心の自由の説明を一切禁止し、式次第や教職員の座席表を事前に提出させ、校長から教職員に事前に職務命令を出させた上、式当日には複数の教育庁職員を派遣して教職員・生徒らの起立・不起立の状況を監視するなどし、全都一律に「日の丸・君が代」の強制を徹底してきた。
 原告らは、それぞれが長年の教師としての経験・教育観や、個人としての歴史観・人生観等に基づいて、過去に軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきた歴史を背負う「日の丸・君が代」自体が受け入れがたいという思い、あるいは、「日の丸・君が代」の学校行事における強制が受け入れがたいという思いを強く持っており、そうした自らの思想・良心から、校長の職務命令には従うことができなかったものである。

 ところが、都教委は、既に翌年4月から再雇用職員として勤務することが決まっていた原告らに対し、卒業式で校長の職務命令に従わず、国歌斉唱時に40数秒間起立しなかったことのみを理由に、「勤務成績不良」であるとして、新年度のわずか2日前の3月30日に、突然「合格取消し」を通告したのである。
 都教委の「日の丸`君が代」強制の施策は、全国的に見ても突出しており、1度の不起立のみで教員の職自体を奪ったという例は、本件が全国でも初めてと思われる。

3 判決は、国歌斉唱時の起立等を命じる校長の職務命令が憲法19条に違反するかという争点については、本年2月27日のいわゆるピアノ裁判の最高裁第三小法廷判決を引用し、校長の職務命令は、原告らの精神活動それ自体を否定するものではないとして、原告らの思想・良心の自由を制約するとまではいえない、とした。
 また、判決は、原告らが、都教委による10.23通達及びその後の指導は、卒業式・入学式等における国旗掲揚、国歌斉唱の実施方法等について、都立学校の校長らの裁量を許さず、一律に強制するものであって、改定前教育基本法10条の「不当な支配」に該当して違法と主張した点を退け、通達は許容される目的に基づき必要かっ合理的な関与・介入の範囲にとどまるといえ、「不当な支配」にはあたらないとした。
 その上で判決は、原告らが国歌斉唱時に起立等を命ずる校長の職務命令に違反したことは、式典における国歌斉唱の指導効果を減殺するものであり、上司の職務命令に違反したことを「勤務成績不良」と評価して原告らの合格を取り消したことは、任命権者としての裁量を逸脱、濫用するものではない、とした。

4 わたしたち原告団・弁護団は、このような不当判決に対し、強く抗議の意思を表明する。
 まず、判決が「日の丸・君が代」を職務命令をもって強制することを憲法19条違反と認めず、安易にピアノ事件最高裁判決を引用したことについては、憲法の番人としての裁判所の権威を失墜させたと評せざるを得ない。思想・良心の問題はすぐれて個々人の価値観に関わる問題であり、国歌斉唱時に起立して歌うことが「客観的」に見ると原告らの世界観、人生観等に直ちに結びつくものではない、という判決の論理は、憲法上の人権を論ずる枠組みとして根本的に疑問である。裁判所が、自らに与えられた責務を放棄し、思想・良心の自由の保障の意義を骨抜きにし、憲法を空文化させていると批判せざるを得ない。
 また、判決が、都教委の10.23通達及び校長らに対する「指導」を、改定前教育基本法10条の「不当な支配」にあたらないと認定した点についても、事実誤認というほかない。これらの10.23通達や「指導」を、許容される目的に基づき必要かつ合理的な関与・介入の範囲にとどまるとした裁判所の姿勢は、行政への無批判な追随というほかない。
 10.23通達以後の露骨で苛烈な都教委の権力的統制に対し、司法が法と良識に基づいて歯止めを掛けることができなかったことは、誠に残念というほかない。わたしたちは、この不当判決に対して速やかに控訴を行い、高等裁判所において断固として闘い続ける所存である。

5 本判決と、昨年9月21日の東京地裁判決(いわゆる予防訴訟判決)とを比較すれば、後者の判決の方がその事実認定においても論理展開においても、格段に優れた水準にあることは明らかである。
 都教委は、予防訴訟判決後も、「日の丸・君が代」の強制を全く改めようとしておらず、不起立等を理由に懲戒処分を受けた教員や、1度の不起立のみで再雇用を拒否された教員が更に増え続けている。そのような姿勢が誤っていることは、今後の予防訴訟控訴審や、本件君が代解雇訴訟の控訴審、さらには上告審で、遠からず明らかになるものと確信している。
 今後とも、教育現場での「日の丸・君が代jの強制に反対するわたしたちの訴えに対し、国民の皆様のご支援をぜひともいただきたく、広く呼びかける次第である。
2007年6月20日君が代強制解雇裁判原告団・弁護団

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