(公訴棄却申立の理由)
申立の理由
被告人弁護人らが本件公訴の棄却を求める理由は、以下に述べるとおりである。
第1章 総論
1 本件起訴の本質
本件起訴の本質は,学校現場に対する「日の丸・君が代」強制に反対する言論の弾圧という点にある。すなわち,2003年度(平成15年度)都立板橋高校卒業式当日,同校元教員であった被告人は,卒業式開始前に,保護者に対してほんの数十秒間,今回の卒業式が従来と異なることを訴え,「国歌斉唱」時にできれば着席してほしいと話しかけた。この被告人の行った行為は,何ら犯罪を構成するものではない。
ところが,東京都教育委員会(以下,「都教委1という。)と東京都議会議員土屋敬之氏は,同校卒業式において,「国歌斉唱」の際,卒業生の大部分が着席するという事態に直面し,それを「誰かが仕組んだもの」との観点から犯人探しをし,卒業生の不起立と被告人の卒業式開始前において保護者に対し国歌斉唱時の着席を呼びかけていた行為とを結びつけたのである。
「日の丸・君が代」強制政策貫徹のために,被告人のかかる行為を「犯罪」として,大々的に宣伝,刑事事件化したのが本件である。
2 卒業式当日の経過及び取材
都教委は,2003年(平成15年)10月23日に,教育長名で,実際上卒業式などの学校行事における「日の丸・君が代」を強制する通達(10・23通達)を発令して以降,学校現場に対する「日の丸・君が代」強制を強引に進めていた。
都立板橋高校は,上記通達が出される前は,「国歌斉唱」時に教職員や生徒の中に起立しない者が多かった(なお,その場合でも教職員が処分されることはなかった)。
都教委は,東京都議会の中でも最も学校現場に対する「日の丸・君が代」強制に熱心である土屋敬之都議が同校卒業式に来賓として参加すること,さらには同校卒業式をマスコミが取材することから,都教委は,同校卒業式,ことに「国歌斉唱」時に,教職員・生徒の起立・不起立をめぐる何かしらのトラブルがあることを事前に予測し,指導主事5人をいわば監視役・目撃者役として同校卒業式に送り込んでいた。
しかし,被告人が卒業式開始前に,保護者らに対して「国歌斉唱」時の着席を呼びかけたことから慌てて被告人を式場から退出させたものの,今度は卒業式中,「国歌斉唱」時において,誰に指示されることもないのに卒業生の大半が着席してしまったのである。このことは,学校現場への「日の丸・君が代」強制をすすめる都教委及ぴ来賓であった土屋都議にとってはきわめて衝撃的な出来事であった。
さらに彼らにとって痛恨の出来事は,土屋都議が卒業式後,マスコミに卒業式に関する感想をインタビューされたことであった。土屋氏はTVカメラの前で「(卒業式は)完壁にきれいにやっていた。」と答えざるをえず,そのインタビューの模様は,全国に放送された。このことによって,都議会における「日の丸・君が代」強制の急先鋒である土屋氏の面目は丸つぶれにされてしまったのであった(弁44「平成16年6月8日第二回定例会本会議議事録」)。
3 本件起訴に向けた意図
そこで都教委は,卒業生が「国歌斉唱」時に着席した事件の黒幕を被告人と考えた。都教委は,被告人の行為を「犯罪」とすることによって,学校現場への「日の丸・君が代」強制に批判的な意見に対して冷水を浴びせ,そうした批判的な意見を押さえ込もうとしたのである。
被告人の客観的な行為を直ちに犯罪として特定することなく,被告人の行為の中から「犯罪」になりうることを探索するという捜査になったために,捜査上の罪名や罪となるべき被告人の行為は時を経る毎に変化していったのである。
まさに本件は,卒業式の「現場」では刑事事件として取り上げようがなかった卒業式開始前の被告人の正当な表現行為を,学校現場への「日の丸・君が代」強制に執着する都教委に呼応して公安警察・検察庁が「刑事事件」に仕立て上げ,「日の丸・君が代」強制に反対する言論を弾圧する目的でなされた特殊な政治目的の起訴なのである。
このような起訴は,刑訴法1条はもちろん,憲法の保障する思想・信条の自由(憲法19条),表現の自由(同21条1項)を侵害する不平等な起訴であって憲法14条1項にも反し,適正手続(同31条)に反するものであるから,刑訴法429条4号,憲法14条1項,同19条,同21条1項,同31条により,直ちに公訴棄却すべきである。
(公訴棄却申立書の結語)
以上の通り,被告人の行為は何らの犯罪も構成しないばかりか,被告人の行為当時,現場にいた誰しもが犯罪であるとも思っていなかった行為である。それにもかかわらず,土屋都議・都教委・公安警察・検察が一体となって被告人の「日の丸・君が代」強制に反対する言論内容に着目し,一方では被告人の行為を敵視し刑事事件化するために捜査権・公訴権を濫用し,他方では卒業式開催中に,卒業生らに対して君が代を起立して斉唱するように大声で執勘に迫り,さらには卒業生らが着席している模様を写真撮影までした土屋都議の行為については,起訴はおろか何らの捜査すら行わないという,不公平な起訴であることが明らかである。
このような起訴は,憲法14条1項,同19条,同21条1項,同31条,刑訴法1条に違反するものであって,公訴権を濫用したものであるから,刑訴法429条4号,憲法14条1項,同19条,同21条1項,同31条によって,直ちに判決で公訴を棄却すべきである。
申立の理由
被告人弁護人らが本件公訴の棄却を求める理由は、以下に述べるとおりである。
第1章 総論
1 本件起訴の本質
本件起訴の本質は,学校現場に対する「日の丸・君が代」強制に反対する言論の弾圧という点にある。すなわち,2003年度(平成15年度)都立板橋高校卒業式当日,同校元教員であった被告人は,卒業式開始前に,保護者に対してほんの数十秒間,今回の卒業式が従来と異なることを訴え,「国歌斉唱」時にできれば着席してほしいと話しかけた。この被告人の行った行為は,何ら犯罪を構成するものではない。
ところが,東京都教育委員会(以下,「都教委1という。)と東京都議会議員土屋敬之氏は,同校卒業式において,「国歌斉唱」の際,卒業生の大部分が着席するという事態に直面し,それを「誰かが仕組んだもの」との観点から犯人探しをし,卒業生の不起立と被告人の卒業式開始前において保護者に対し国歌斉唱時の着席を呼びかけていた行為とを結びつけたのである。
「日の丸・君が代」強制政策貫徹のために,被告人のかかる行為を「犯罪」として,大々的に宣伝,刑事事件化したのが本件である。
2 卒業式当日の経過及び取材
都教委は,2003年(平成15年)10月23日に,教育長名で,実際上卒業式などの学校行事における「日の丸・君が代」を強制する通達(10・23通達)を発令して以降,学校現場に対する「日の丸・君が代」強制を強引に進めていた。
都立板橋高校は,上記通達が出される前は,「国歌斉唱」時に教職員や生徒の中に起立しない者が多かった(なお,その場合でも教職員が処分されることはなかった)。
都教委は,東京都議会の中でも最も学校現場に対する「日の丸・君が代」強制に熱心である土屋敬之都議が同校卒業式に来賓として参加すること,さらには同校卒業式をマスコミが取材することから,都教委は,同校卒業式,ことに「国歌斉唱」時に,教職員・生徒の起立・不起立をめぐる何かしらのトラブルがあることを事前に予測し,指導主事5人をいわば監視役・目撃者役として同校卒業式に送り込んでいた。
しかし,被告人が卒業式開始前に,保護者らに対して「国歌斉唱」時の着席を呼びかけたことから慌てて被告人を式場から退出させたものの,今度は卒業式中,「国歌斉唱」時において,誰に指示されることもないのに卒業生の大半が着席してしまったのである。このことは,学校現場への「日の丸・君が代」強制をすすめる都教委及ぴ来賓であった土屋都議にとってはきわめて衝撃的な出来事であった。
さらに彼らにとって痛恨の出来事は,土屋都議が卒業式後,マスコミに卒業式に関する感想をインタビューされたことであった。土屋氏はTVカメラの前で「(卒業式は)完壁にきれいにやっていた。」と答えざるをえず,そのインタビューの模様は,全国に放送された。このことによって,都議会における「日の丸・君が代」強制の急先鋒である土屋氏の面目は丸つぶれにされてしまったのであった(弁44「平成16年6月8日第二回定例会本会議議事録」)。
3 本件起訴に向けた意図
そこで都教委は,卒業生が「国歌斉唱」時に着席した事件の黒幕を被告人と考えた。都教委は,被告人の行為を「犯罪」とすることによって,学校現場への「日の丸・君が代」強制に批判的な意見に対して冷水を浴びせ,そうした批判的な意見を押さえ込もうとしたのである。
被告人の客観的な行為を直ちに犯罪として特定することなく,被告人の行為の中から「犯罪」になりうることを探索するという捜査になったために,捜査上の罪名や罪となるべき被告人の行為は時を経る毎に変化していったのである。
まさに本件は,卒業式の「現場」では刑事事件として取り上げようがなかった卒業式開始前の被告人の正当な表現行為を,学校現場への「日の丸・君が代」強制に執着する都教委に呼応して公安警察・検察庁が「刑事事件」に仕立て上げ,「日の丸・君が代」強制に反対する言論を弾圧する目的でなされた特殊な政治目的の起訴なのである。
このような起訴は,刑訴法1条はもちろん,憲法の保障する思想・信条の自由(憲法19条),表現の自由(同21条1項)を侵害する不平等な起訴であって憲法14条1項にも反し,適正手続(同31条)に反するものであるから,刑訴法429条4号,憲法14条1項,同19条,同21条1項,同31条により,直ちに公訴棄却すべきである。
(公訴棄却申立書の結語)
以上の通り,被告人の行為は何らの犯罪も構成しないばかりか,被告人の行為当時,現場にいた誰しもが犯罪であるとも思っていなかった行為である。それにもかかわらず,土屋都議・都教委・公安警察・検察が一体となって被告人の「日の丸・君が代」強制に反対する言論内容に着目し,一方では被告人の行為を敵視し刑事事件化するために捜査権・公訴権を濫用し,他方では卒業式開催中に,卒業生らに対して君が代を起立して斉唱するように大声で執勘に迫り,さらには卒業生らが着席している模様を写真撮影までした土屋都議の行為については,起訴はおろか何らの捜査すら行わないという,不公平な起訴であることが明らかである。
このような起訴は,憲法14条1項,同19条,同21条1項,同31条,刑訴法1条に違反するものであって,公訴権を濫用したものであるから,刑訴法429条4号,憲法14条1項,同19条,同21条1項,同31条によって,直ちに判決で公訴を棄却すべきである。
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