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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

国連へ追加レポート「公共の福祉」という名の言論弾圧(2/3)

2014年06月27日 | 板橋高校卒業式
 ◎ 政府回答(184~186)の根本的な誤りを指摘する(2)
   ~板橋高校卒業式事件から「表現の自由」をめざす会


 2,板橋高校卒業式事件のケースと規約19条
 (1)規約19条1項の適用

 6. 元教員は、学校で国旗国歌が強制されるべきではないとの「意見」を持っていた。都教委は、事件の半年前に、全教職員対象に、卒入学式等の学校行事において、国旗に向かって起立し国歌を斉唱せよという職務命令を懲戒処分を背景に、発出していた。
 7. 「すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有し」(『規約』19条1項)、それは、「いかなる例外や制約をも認めない権利」である(『一般的意見34』para9)。
 8. 「憲法で保障された思想と良心の自由に対する権利についての議論」や、「学校行事等における国旗称揚および国歌斉唱の強要に関する議論」は、社会的関心事に該当する。(『Voorhoof第1意見書』 *1)
 (2)規約19条2項の適用
 9. 元教員は、卒業式の開式前に1分足らずの間保護者席に向かって、学校で国旗国歌が強制されるべきではないとの意見を表明した。
 10. 「すべての者は、表現の自由についての権利を有する」(『規約』19条2項)。そして「2項は表現のすべての形態およびその発表手段を保護する」(『一般的意見34』para12)。
 11. 「第2項の範囲は、大いに攻撃的と見なされるような表現にさえ及ぶ」のである。(『一般的意見34』para11)
 12. 「最も重要なことは、被告が体育館で待っていた保護者に意見を述べる間、被告の行為には無秩序や暴力を引き起こすような危険性を示す徴候はまったくみられなかったことである。・・・日本の裁判所の認定(参照:2011年7月7日『最高裁判決』)は、式開始の15分以上も前に保護者にリーフレットを配布し意見を述べようと前に進み出た彼の言葉による平穏な抗議という事実要素とその性質を、明らかに誇張するものである」(『Voorhoof第2意見書』 *2)。
 (3)規約19条3項の適用
 13. 元教員の意見表明に対する権利制限と刑法の適用は、規約19条3項の条件を満たしていない。
 14. 元教員の表現行為に対する制限は、「曖昧で無制限」かつ「立法で定義されていない」公共の福祉概念(『第5回日本審査総括所見』para10)によって行われたが、それは『規約』により「許容された2つの限定的な制限領域」には含まれていない。(『一般的意見34』para21)
 15. 権利制約の根拠として使われた「公共の福祉」概念は、19条3項に規定される「法律により定められ」、「制限された目的のためにのみ適用され」、「特定の必要性事由に直接関連していなければならない」、のいずれの条件も満たしていない。(『一般的意見34』para22)
 16. 「公共の福祉」は、元教員を「沈黙させようとする攻撃」に使われ、「人権の擁護に対する口封じが正当化」された。(『一般的意見34』para23)
  元教員に対する威力業務妨害罪の認定は、不必要かつ過剰な制裁であり、『最高裁判決』に言う「表現の態様」という表向きの根拠とは別の理由があったと、私たちは考えている。
 17. 「制限は法律によって定められなければならない」(『一般的意見34』para24)とされる。しかし卒業式が「静穏な雰囲気の中で執り行われるべき」とする(第6回審査日本政府報告para6)法律はない。法律が存在していなかったからこそ「公共の福祉」が権利制限の理由とされたのである。
 18. 「公共の福祉」は、「十分な正確性を以て明文化」されておらず、「無制約な裁量権を公権力に与える」結果となっている。(『一般的意見34』para25)
 19. 元教員は、学校での国旗国歌に対する敬意の強制に反対する意見を表明したが、『一般的意見34』には「旗及びシンボルに対して敬意を払わないこと」に対する法規制に懸念が表明されている。ところが、当局にとって卒業式が「旗及びシンボルに対して敬意」を強制する場であったからこそ、なおさら「静穏な雰囲気」を乱したという規約以外の理由で、意見表明を禁止しより厳しい処罰(『一般的意見34』para38)を適用した。
 20. 元教員に対する刑事罰の適用は、「いかなる場合でも刑法の適用は最も深刻な事件においてのみ容認されるべき」(『一般的意見34』para47)という原則を外れており、国旗国歌の強制に不安や抵抗感を持っている「関係者や他の者の表現の自由の行使を不当に制限しかねない萎縮効果」(『一般的意見34』para47)をもたらした。
 (続)

 *注
 『自由権規約19条』(意見及び表現の自由)
 【19条1項】
  1.すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有する。
 【19条2項】
  2.すべての者は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。
 【規約19条3項】
  3.2の権利の行使には、特別の義務及び責任を伴う。したがって、この権利の行使については、一定の制限を課することができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る。
   (a)他の者の権利又は信用の尊重
   (b)国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護

 『一般的意見34 全文』(日弁連訳)
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/kokusai/humanrights_library/treaty/data/HRC_GC_34j.pdf
 フォルホーフ教授の『鑑定意見書』は、下記のアドレスから読むことができます。
 *1) (英文)http://wind.ap.teacup.com/people/html/20100420voorhoof.fujita.legalopinion.pdf
     (和訳)http://wind.ap.teacup.com/people/html/20100531voorhoof.doc
 *2) (英文)http://wind.ap.teacup.com/people/html/20130328voorhoof.japan.fujita.pdf
     (和訳)http://wind.ap.teacup.com/people/html/20130329voorhoof.japan.fujita.doc

※「レポート全文(英文)」
http://wind.ap.teacup.com/people/html/20140602repliestothelistofissues.pdf
※「レポート全文(和文)」
http://wind.ap.teacup.com/people/html/20140602repliestothelistofissuesjapanese.pdf
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