◆ 神奈川県教委が「教科書会社に訂正勧告を」と文科省に要請
「朝日新聞」(2012年7月28日)は、神奈川県教育委員会が「教科書出版社に訂正勧告を」という要望書を文科省に出したと報じました。
これについて、横浜教科書採択連絡会のSさんの報告を転載します。
《経緯》 横浜市教委が2009年度に横浜市内8採択地区で採択し、現在の中学2、3年生が使用中の自由社版歴史教科書(旧版)には、多数の客観的誤りがあります。
この誤りや盗作年表については、市民や団体から市教委への是正措置請願や自由社への訂正要求が、再三出されてきました。しかし、市教委は「訂正は発行者が行う」ことだとして、自由社の編集者も訂正は「新しい歴史教科書をつくる会」が決めることだ(!?電話取材にて)として、なんら手を打たず、生徒を放置したままの状態が続いています。
今年1月、横浜市の市民Aさんは、中学2、3年生が使用中の旧版の自由社版歴史の記述中、同じ記述が2010年度検定で娯りとして修正された10箇所を挙げて、訂正を旧版使用中の学校に通知するよう求める「要求書」を、採択した横浜市教委に提出しました。しかし、市教委はこの「要求書」を不採択としました。
そこでAさんはこの不採択について.市町村教委を指導する立場である神奈川県教委に「審査請求」を行いました。県教委は、この件での市教委への指導は権限外であるとしてこれを退けましたが、この状態を放置しておけないとして、6月25日付で文科省あての異例の「要望書」を提出することになったものです。
「要望書」の内容は、自由社を特定したものではなく、一般論として書かれています。
発行者は、新版で検定修正された場合は、旧版の訂正申請を行い、旧版を使用している学校に訂正通知を出し、内容の正確性の確保に努めるべきである。しかしながら特段訂正申請や通知をしていない発行者もあるので、文科省は検定規則14条第4項による訂正勧告を行うよう要望しています。
教育行政を預かる立場として、できる範囲での努力をした県教委の行為は、評価していいのではないでしょうか?
Aさんは、この県教委の対応をもとに、再度横浜市教委に請願を提出しました。7月27日の市教委でこの請願は、教育長専決処理になり、目下回答待ちの状態です。
自由社を採択したわけではない県教委さえ放置しておけないと動いたのに、横浜市教委はどうするのか、今後が注目されます。
神奈川県教委が文科省に出した要望書を次に掲載します。
文部科学大臣殿
◆ 教科書発行者に対する給与済み図書の記載内容に関する訂正申請の勧告実施を求める要望書
このことについて、適切かつ迅速な対応をしていただきたく、次のとおり、要望いたします。
教科書記述の正確性を確保し、生徒の学習を質的に保障するため、教科書発行者に対する訂正申請の勧告を行い、現に使用している学校への訂正の通知を促すこと。
<提案理由等>
このたびの要望書を提出する契機となった中学校社会科(歴史的分野)の教科書に限定して、提案の理由等を述べる。
平成23年度に中学校において、教科用図書の採択替えが行われた。それに先立つ平成22年度教科用図書検定において、いくつかの歴史的事象の記述について、平成20年度あるいは平成16年度の検定では合格となっていたものに検定意見が付され、修正表を提出し、再審査を経て検定済みとなるケースが、複数の発行者で見られた。これにより、中学校では次のような事態が起きている。
一つの学校において、前回(平成21年)と今回(平成23年)の採択替え で同じ発行者の教科書を採択している場合、同じ学校の同じ教育課程で学ぶ生徒の「教科の主たる教材」である教科書で、同一の歴史的事象について、学年によって異なる記載内容で学習している。
また、発行者の異なる教科書を採択していても、前回の採択図書で学ぶ生徒は、その記載内容について、訂正されないまま学習している。その結果、生徒の学習活動に大きな支障をきたし、あわせて高等学校の入学者選抜における、学力検査の問題作成にも影響を及ぼすこととなる。
本来、教科書は小・中学校等において、「教育課程の構成に応じて組織排列された教科の主たる教材として、教授の用に供せられる児童又は生徒用図書」(教科書の発行に関する臨時措置法)であり、諸学校における児童生徒の学習を保障する重要な要素のひとつである。
今回の教科書の改訂では、そうした役割を有する教科書について、教育基本法及び学校教育法の示す教育理念や目標等を適切に踏まえ、新学習指導要領の趣旨・内容を的確に反映した質・量ともに充実したものとしていくことが強く求められていた。
この点に関しては、教科用図書検定調査審議会から出された報告書「教科書の改善についてー教科書の質・量両面での充実と教科書検定手続きの透明化ー(報告)」(平成20年12月25日)の中でも、教科用図書検定基準に関し、教科書記述の正確性について言及されているところである。
こうしたことに基づくならば、どの教科も教科書の発行者は、その記述内容に関して、検定後または既に給与済みとなっても、必要に応じて訂正申請を行い、文部科学大臣の承認を得た上で、現に使用している学校に訂正通知を出して、最新の情報に更新し、正確性の確保に努めるべきであり、それが児童生徒の学習を支える発行者としての責任と自覚である。
しかしながら、現在においてもなお、特段訂正申請及び通知をしていない発行者もある。
そこで、訂正申請及び通知は発行者が行う(教科用図書検定規則第14条、15条)ことになっていることから、発行者の社会的責任と自覚をあらためて促すよう、教科用図書検定制度の統括者であり、「その訂正の申請を勧告することができる」(教科用図書検定規則第14条第4項)権限を持つ文部科学大臣に、上記の点について強く要請する。
この要望書は、発行者名を明記していませんが、自由社を指していることは明白です。
さらに、「複数の発行者」としているのは扶桑社の改訂版を指しています。その意味では、扶桑社版を2、3年生が使用している、大田原市・杉並区・今治市などにも当てはまる問題であり、これらの地域でも取り組みが求められます。(2012.08.10 T.Y)
『子どもと教科書全国ネット21 事務局通信』(№79 2012/8/10)
「朝日新聞」(2012年7月28日)は、神奈川県教育委員会が「教科書出版社に訂正勧告を」という要望書を文科省に出したと報じました。
これについて、横浜教科書採択連絡会のSさんの報告を転載します。
《経緯》 横浜市教委が2009年度に横浜市内8採択地区で採択し、現在の中学2、3年生が使用中の自由社版歴史教科書(旧版)には、多数の客観的誤りがあります。
この誤りや盗作年表については、市民や団体から市教委への是正措置請願や自由社への訂正要求が、再三出されてきました。しかし、市教委は「訂正は発行者が行う」ことだとして、自由社の編集者も訂正は「新しい歴史教科書をつくる会」が決めることだ(!?電話取材にて)として、なんら手を打たず、生徒を放置したままの状態が続いています。
今年1月、横浜市の市民Aさんは、中学2、3年生が使用中の旧版の自由社版歴史の記述中、同じ記述が2010年度検定で娯りとして修正された10箇所を挙げて、訂正を旧版使用中の学校に通知するよう求める「要求書」を、採択した横浜市教委に提出しました。しかし、市教委はこの「要求書」を不採択としました。
そこでAさんはこの不採択について.市町村教委を指導する立場である神奈川県教委に「審査請求」を行いました。県教委は、この件での市教委への指導は権限外であるとしてこれを退けましたが、この状態を放置しておけないとして、6月25日付で文科省あての異例の「要望書」を提出することになったものです。
「要望書」の内容は、自由社を特定したものではなく、一般論として書かれています。
発行者は、新版で検定修正された場合は、旧版の訂正申請を行い、旧版を使用している学校に訂正通知を出し、内容の正確性の確保に努めるべきである。しかしながら特段訂正申請や通知をしていない発行者もあるので、文科省は検定規則14条第4項による訂正勧告を行うよう要望しています。
教育行政を預かる立場として、できる範囲での努力をした県教委の行為は、評価していいのではないでしょうか?
Aさんは、この県教委の対応をもとに、再度横浜市教委に請願を提出しました。7月27日の市教委でこの請願は、教育長専決処理になり、目下回答待ちの状態です。
自由社を採択したわけではない県教委さえ放置しておけないと動いたのに、横浜市教委はどうするのか、今後が注目されます。
神奈川県教委が文科省に出した要望書を次に掲載します。
文部科学大臣殿
子教第50号/平成24年6月25日
神奈川県教育委員会 委員長 平出彦仁
神奈川県教育委員会 委員長 平出彦仁
◆ 教科書発行者に対する給与済み図書の記載内容に関する訂正申請の勧告実施を求める要望書
このことについて、適切かつ迅速な対応をしていただきたく、次のとおり、要望いたします。
教科書記述の正確性を確保し、生徒の学習を質的に保障するため、教科書発行者に対する訂正申請の勧告を行い、現に使用している学校への訂正の通知を促すこと。
<提案理由等>
このたびの要望書を提出する契機となった中学校社会科(歴史的分野)の教科書に限定して、提案の理由等を述べる。
平成23年度に中学校において、教科用図書の採択替えが行われた。それに先立つ平成22年度教科用図書検定において、いくつかの歴史的事象の記述について、平成20年度あるいは平成16年度の検定では合格となっていたものに検定意見が付され、修正表を提出し、再審査を経て検定済みとなるケースが、複数の発行者で見られた。これにより、中学校では次のような事態が起きている。
一つの学校において、前回(平成21年)と今回(平成23年)の採択替え で同じ発行者の教科書を採択している場合、同じ学校の同じ教育課程で学ぶ生徒の「教科の主たる教材」である教科書で、同一の歴史的事象について、学年によって異なる記載内容で学習している。
また、発行者の異なる教科書を採択していても、前回の採択図書で学ぶ生徒は、その記載内容について、訂正されないまま学習している。その結果、生徒の学習活動に大きな支障をきたし、あわせて高等学校の入学者選抜における、学力検査の問題作成にも影響を及ぼすこととなる。
本来、教科書は小・中学校等において、「教育課程の構成に応じて組織排列された教科の主たる教材として、教授の用に供せられる児童又は生徒用図書」(教科書の発行に関する臨時措置法)であり、諸学校における児童生徒の学習を保障する重要な要素のひとつである。
今回の教科書の改訂では、そうした役割を有する教科書について、教育基本法及び学校教育法の示す教育理念や目標等を適切に踏まえ、新学習指導要領の趣旨・内容を的確に反映した質・量ともに充実したものとしていくことが強く求められていた。
この点に関しては、教科用図書検定調査審議会から出された報告書「教科書の改善についてー教科書の質・量両面での充実と教科書検定手続きの透明化ー(報告)」(平成20年12月25日)の中でも、教科用図書検定基準に関し、教科書記述の正確性について言及されているところである。
こうしたことに基づくならば、どの教科も教科書の発行者は、その記述内容に関して、検定後または既に給与済みとなっても、必要に応じて訂正申請を行い、文部科学大臣の承認を得た上で、現に使用している学校に訂正通知を出して、最新の情報に更新し、正確性の確保に努めるべきであり、それが児童生徒の学習を支える発行者としての責任と自覚である。
しかしながら、現在においてもなお、特段訂正申請及び通知をしていない発行者もある。
そこで、訂正申請及び通知は発行者が行う(教科用図書検定規則第14条、15条)ことになっていることから、発行者の社会的責任と自覚をあらためて促すよう、教科用図書検定制度の統括者であり、「その訂正の申請を勧告することができる」(教科用図書検定規則第14条第4項)権限を持つ文部科学大臣に、上記の点について強く要請する。
<問い合わせ先> 教育局支援教育部子ども教育支援課
教育指導グループ 松田
電話 045-210-8217(直通)
教育指導グループ 松田
電話 045-210-8217(直通)
この要望書は、発行者名を明記していませんが、自由社を指していることは明白です。
さらに、「複数の発行者」としているのは扶桑社の改訂版を指しています。その意味では、扶桑社版を2、3年生が使用している、大田原市・杉並区・今治市などにも当てはまる問題であり、これらの地域でも取り組みが求められます。(2012.08.10 T.Y)
『子どもと教科書全国ネット21 事務局通信』(№79 2012/8/10)
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