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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

オーストラリアの「平和の少女像」訪問記

2022年03月14日 | 平和憲法
  《月刊救援から 【現場カラミル】》
 ◆ シドニー「平和の少女像」を訪問して


 カナダ、ドイツ、アメリカなど各地に現在広がっている、戦時性奴隷の歴史を残し日本政府への公式な謝罪と賠償を求めるための「平和の少女像」(以下少女像)が、オーストラリアにもあることを知る人は多くはないかもしれない。
 シドニーでは、オーストラリアに住む韓国系の人々と韓国に住む活動家たちがシドニーでの建立運動を始めたが、右翼日本人の設置反対署名などによる妨害で、一時建立計画は難航した。最終的には、シドニー内の中華街で有名な街・アッシュフィールドにあるユナイティング教会(オーストラリアでは社会正義について熱心に取り組むことで知られる教会)の現地オーストラリア人のビル神父が、建立運動側に連絡を取り、紆余曲折の末二〇一六年にこの教会の敷地内に置かれることになる。
 SBSというオーストラリアニュースの媒体で、良質な取材と分析を基にしたこの件の顛末についての記事が公開されているのだが、反対運動をやっていたのは日本の在特会メンバーと幸福実現党のメンバーだという。
 実際は基本的に日本に住んでいる日本人によってこの建立妨害が組織されていたことを暴いていた。
 私は現地で少女像に直接会いたいと思い、韓国人の友人と一緒に教会に向かった。
 アッシュフィールドの街中を抜けて、駅から一〇分もしないで見つかった教会の敷地の中、聖堂への入り口の脇に、少女像は、ひっそり座っていた。
 そこには、英・中・韓の言葉で少女像建立の意味と、もう一つの方にはハングルだけで、この像の歴史と像自体の細かい解説がしてあり、韓国人の友人がその場ですぐ日本語に翻訳しながら読んでくれた。
 突然の訪問にもかかわらず教会から挨拶に来てくれたビル神父は、上記の建立をすることになった経緯を話してくれた。
 性奴隷のことは本当にひどいことだ、解決されなければいけないと強調しつつ、白人社会がオーストラリア先住民にしたことも解決されていないという認識も表明した。
 私は日本が戦時にアジア各国に行った犯罪、それが教育でもきちんと教えられていないこと等や、それに対する自分の立場を表明しつつ、攻撃的な日本人たちもいる中で、それでもこの像を受け入れたこと、その努力に感謝したい旨を伝えた。
 中国の民主化運動のシンボルである「民主の女神像」も、この教会の入り口近くに立っている。これから別の像も受け入れる予定だという。
 終始穏やかに話すビル神父の後ろで、私たちの会話や様子を教会の方が携帯で写真や動画を撮っていて、撮った写真などをのちにメールに送りますね、と言ってくれたのだけども、撮影することで神父に対する暴力を防衛する意味もあったのかもしれないと深読みしてしまったが、かつて日本人の訪問者から暴力を受けたと聞いたので、あながち考えすぎではないかもしれない。
 前述したSBSの記事の中にも、像を受け入れることが公表されてから、メールや電話、直接の嫌がらせ行為がこの教会と神父に絶え間なくあったと書いてあつた。
 それほど、この日本軍の戦時性奴隷のことを公に議論することや少女像をサポートすることは、身に危険が降りかかってくることなのだと、教会の側の人たちも認識しているように思えた。
 それでも、突然の訪問者である私と友人と会って話してくれた神父の姿勢に感銘を受ける。
 日本政府はいまだに加害の歴史を隠蔽していること、アジアの人々への虐殺や強制徴用、軍による性奴隷制被害者への真摯な謝罪(恒久的な)と賠償もきちんと向き合っていないこと、人としての尊厳を求め続ける人たちの側に私は立つということを、こちらオーストラリアでもしつこく言っていきたいと改めて思わせる訪問だった。
 ビル神父の話を聞いた後、先住民コミュニティ支援の食料品を詰める作業を聖堂内で手伝わせてもらい、近くのカフェにて友人と腰を休めた。(ほしのめぐみ)
『月刊救援 634号』(2022年2月10日)

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