◆ 同一労働同一賃金法案を3野党が共同提出
派遣法に対決する均等処遇の訴え (労働情報)
民主と維新、生活の野党3党は5月26日、「労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案」(同一労働同一賃金法案)を衆院に提出した。
同一賃金法は、
① 雇用形態にかかわらず職務に応じた待遇を受けられるようにする
② 正社員への転換を含め、希望する雇用形態で就労する機会が与えられるようにする
③ 労働者がキャリアプランを作り、職業を自己選択できる
ーを理念に掲げる。
そして、1年以内に派遣労働者の均等待遇を実現するための法制上、財政上または税制上の措置を講ずることやパート、有期労働者などを含め職務に応じた均等待遇を確保するための施策を講じることなどを定めている。
どのような形で同一賃金を実現していくかはともかく、派遺法「改正」案に盛り込まれた「均衡待遇」という形だけの処遇改善に比べれば、一歩も二歩も進んだ処遇改善が提案されている。
◆ 野党共同の意味
均等待遇は職務区分があいまいな日本の雇用では難しいとされ、「均衡」の言葉でごまかされてきた経緯がある。
例えば「正社員は異動はあるが非正規にはない」「人事活用が正社員と非正規では違う」などを理由に賃金格差は「均衡の結果」と言ってきた。
しかし、契約期間が短期であったり、雇い止めにさらされるなどのリスクは非正規の方が大きいのは明らか。リスクを考えれば非正規の方が高条件で良いぐらいだ。
実際、ヨーロッパでは派遣労働者の賃金は高く設定されており、企業が派遣を使うのは「高い金を払ってでも必要な時」だ。つまり、派遣が臨時的一時的な業務であることの担保にもなっている。
維新の狙いは井坂信彦衆議院議員のインタビュー(8ぺージ~)に詳しいが、維新の雇用政策の基本は「雇用の流動化」にあるといえる。となれば、雇用流動化の最たるものである派遣法の改正には「賛成」となるべきだが、対応はどちらかと言えば「反対」寄りだ。
その理由は、同一労働同一賃金が担保されていないことにある。その担保なく雇用が流動化すれば、不安定な労働者が増えるだけの結果を招く。
法案提出後、共同で記者会見した民主党の山井和則衆議院議員は
「世界の派遣労働の常識は2つある。
1つは臨時的・一時的であるということ、
2つめには均等待遇の義務だ。
だが、政府案には均等待遇が入っておらず、均衡の配慮があるだけ。この法案の意味は均等待遇の義務化だ」と述べた。
政府案の欠陥を突き、対抗法案としての狙いが強い。
維新と民主に思惑の違いも垣間見えるが、「野党が共同でこのような法案を提出したことは非常に重要だ」(山井議員)と言う。野党側が同一賃金という原則で一致し派遣法に対峙するという意味では大きな意義がある。
◆ 現状変える一石
連合も派遣法「改正」の労働政策審議会では「均衡ではなく、均等待遇の実現を」と繰り返し主張しており、同一賃金法案提出は労働側にも力になる。
派遣法「改正」案の審議が先行しているが、後ろにはホワイトカラー・エグゼンプション(残業代ゼロ制度)などを盛り込んだ労働基準法改正案の審議も待ち構えている。
一強多弱と椰楡される国会状況の中で、現状を突破する起爆剤になってほしいとの期待を込めて、法案の扱いを注視したい。
『労働情報』913号(2015/6/15)
派遣法に対決する均等処遇の訴え (労働情報)
東海林 智(team rodojoho)
民主と維新、生活の野党3党は5月26日、「労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案」(同一労働同一賃金法案)を衆院に提出した。
同一賃金法は、
① 雇用形態にかかわらず職務に応じた待遇を受けられるようにする
② 正社員への転換を含め、希望する雇用形態で就労する機会が与えられるようにする
③ 労働者がキャリアプランを作り、職業を自己選択できる
ーを理念に掲げる。
そして、1年以内に派遣労働者の均等待遇を実現するための法制上、財政上または税制上の措置を講ずることやパート、有期労働者などを含め職務に応じた均等待遇を確保するための施策を講じることなどを定めている。
どのような形で同一賃金を実現していくかはともかく、派遺法「改正」案に盛り込まれた「均衡待遇」という形だけの処遇改善に比べれば、一歩も二歩も進んだ処遇改善が提案されている。
◆ 野党共同の意味
均等待遇は職務区分があいまいな日本の雇用では難しいとされ、「均衡」の言葉でごまかされてきた経緯がある。
例えば「正社員は異動はあるが非正規にはない」「人事活用が正社員と非正規では違う」などを理由に賃金格差は「均衡の結果」と言ってきた。
しかし、契約期間が短期であったり、雇い止めにさらされるなどのリスクは非正規の方が大きいのは明らか。リスクを考えれば非正規の方が高条件で良いぐらいだ。
実際、ヨーロッパでは派遣労働者の賃金は高く設定されており、企業が派遣を使うのは「高い金を払ってでも必要な時」だ。つまり、派遣が臨時的一時的な業務であることの担保にもなっている。
維新の狙いは井坂信彦衆議院議員のインタビュー(8ぺージ~)に詳しいが、維新の雇用政策の基本は「雇用の流動化」にあるといえる。となれば、雇用流動化の最たるものである派遣法の改正には「賛成」となるべきだが、対応はどちらかと言えば「反対」寄りだ。
その理由は、同一労働同一賃金が担保されていないことにある。その担保なく雇用が流動化すれば、不安定な労働者が増えるだけの結果を招く。
法案提出後、共同で記者会見した民主党の山井和則衆議院議員は
「世界の派遣労働の常識は2つある。
1つは臨時的・一時的であるということ、
2つめには均等待遇の義務だ。
だが、政府案には均等待遇が入っておらず、均衡の配慮があるだけ。この法案の意味は均等待遇の義務化だ」と述べた。
政府案の欠陥を突き、対抗法案としての狙いが強い。
維新と民主に思惑の違いも垣間見えるが、「野党が共同でこのような法案を提出したことは非常に重要だ」(山井議員)と言う。野党側が同一賃金という原則で一致し派遣法に対峙するという意味では大きな意義がある。
◆ 現状変える一石
連合も派遣法「改正」の労働政策審議会では「均衡ではなく、均等待遇の実現を」と繰り返し主張しており、同一賃金法案提出は労働側にも力になる。
派遣法「改正」案の審議が先行しているが、後ろにはホワイトカラー・エグゼンプション(残業代ゼロ制度)などを盛り込んだ労働基準法改正案の審議も待ち構えている。
一強多弱と椰楡される国会状況の中で、現状を突破する起爆剤になってほしいとの期待を込めて、法案の扱いを注視したい。
『労働情報』913号(2015/6/15)
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