▲ 「憲法を守る立場」を捨てた東京高裁判決
4月17日(木)13時15分、増田都子元教諭が土屋たかゆき(板橋)、古賀俊昭(日野)、田代ひろし(世田谷)の三都議と展転社を訴えた名誉棄損損害請求訴訟控訴審の判決が言い渡された。東京高裁第7民事部大谷禎男裁判官の判決は、被告の1審敗訴部分を取消し原告の請求をすべて棄却する、逆転全面敗訴のひどいものだった。
左から和久田弁護士、増田さん、大野さん
この裁判は三都議が2000年11月10日展転社から出版した「こんな偏向教師を許せるか!」に名誉毀損とプライバシー侵害に当たる多くの記述があるとして、2002年に増田さんが提訴した訴訟である。
昨年4月27日東京地裁は11か所の名誉棄損と2か所のプライバシー侵害を認め、76万円の支払いを命じる増田さん側の一部勝訴判決を下した。
この判決に対し、増田さん側は、事実認定の部分で憲法、教育基本法8条、学習指導要領の精神に沿い日米安保、米軍基地問題、天皇の戦争責任など具体的な社会的問題を取り上げた紙上討論授業をしており「偏向教育」「偏狭な思想」という表現を用いるのは不合理だと高裁で主張した。
一方、三都議側は、基礎事実の主要部分が真実であれば論評内容の正当性や合理性は問うことなく免責される「公正な論評」の法理を主張した。
裁判官は判決理由で、被告側の主張を全面的に支持し、「原告の授業方法は生徒を原告の政治的思想に沿う意見を持つように誘導するもの」とし、三都議の記述は「教育者としての適格性を問題とする意図によるもの」なので論評としての域を逸脱したものとはいえないという判断を示した。
被告側の主張を全面的に採用しているため、増田教諭が私語がひどく3度注意しても授業を妨害する生徒にテストの点数から1点減点したことと「生徒の意見の誘導」を混合し「生徒が増田教諭と異なる意見を表明すると減点した」と意図的に事実誤認して、書籍を出版しても「真実と信じるについて相当な理由がある」とまで書いている。また都議が都教委から違法に入手したプライバシー情報を書籍に掲載した点について、都議が「違法性を認識していなかったから入手行為を違法と評価することはできない」、都議は「特別職の地方公務員なので高度の守秘義務があるとはいえない」などと書いている。
2時半から裁判所2階で行われた記者会見で和久田修弁護士は「都教委はただでさえ現場の教員を締め付けているが、今日の判決はその流れを追認するものだ。授業のなかでの教師の意見を封殺することになりかねない危険なものだ」と感想を述べた。
原告の増田さんは「憲法・47年教育基本法下の教員は、憲法の思想という特定の思想をしっかり教えなければならない。憲法の理念を具体的な事例を使い生徒の骨肉になるようしっかり教えたことを『洗脳教育』『マインドコントロールだ』などと論評してもいいという判決はとんでもない。教授の自由を否定するものだ」と怒りをあらわにした。
また支援者の元校長・大野昭之さんは「わたしは朝鮮戦争のさなかに教員となり『暴力的な団体には加入しない』という誓約をさせられた。増田さんの時代は『日本国憲法を守る』という誓約をしたはずだ。三権分立の司法が憲法を守る立場を捨てたことはまことに残念だ」と述べた。
1審判決は、11か所については「論評の範囲を逸脱している」として名誉棄損を認め最低限の歯止めをかけるものだったが、高裁判決は最低ラインすら踏み破るものだった。
判決報告集会では「不当判決を認めない」というシュプレヒコールが鉄建公団訴訟原告団・国鉄闘争共闘会議の座り込み闘争に参加した多くの支援者とともに高裁に向かってこだました。
立川テント村反戦ビラ訴訟や4月16日のイラン人難民ジャマルさん訴訟でも逆転敗訴が続き「司法の反動化」の流れが強まっている。この日2時過ぎから強まってきた雨は、「天の声」を語っているように感じられた。
原告本人の声はこちらから
☆対三都議訴訟はいつも右派が大量動員し、裁判所前の喧騒が甚だしい。しかしこの日は国労闘争団の方が多数参加し、根津さん河原井さん支援者も別の訴訟で集まっていた。一方西村修平氏ら「主権回復を目指す会」の街宣ライトバンも来ていなかった。ただ被告・土屋たかゆき、古賀俊昭の両都議は姿をみせた(代理人の出席は必要だが、被告本人は参加しなくてもよい)。
裁判所2階の記者会見室に初めて入った。朝毎読など全国紙、北海道、東京など地方紙、NHKと民放5社、共同・時事の通信社、合計15社のブースがある記者クラブに付属したような部屋だった。幹事社を通して判決文をコピー・配布することになっているが、22pもある判決が20部近くすごい早さでコピーされた。これはすごいシステムだ。
『多面体F』(2008年04月18日)
http://blog.goo.ne.jp/polyhedron-f/
4月17日(木)13時15分、増田都子元教諭が土屋たかゆき(板橋)、古賀俊昭(日野)、田代ひろし(世田谷)の三都議と展転社を訴えた名誉棄損損害請求訴訟控訴審の判決が言い渡された。東京高裁第7民事部大谷禎男裁判官の判決は、被告の1審敗訴部分を取消し原告の請求をすべて棄却する、逆転全面敗訴のひどいものだった。
左から和久田弁護士、増田さん、大野さん
この裁判は三都議が2000年11月10日展転社から出版した「こんな偏向教師を許せるか!」に名誉毀損とプライバシー侵害に当たる多くの記述があるとして、2002年に増田さんが提訴した訴訟である。
昨年4月27日東京地裁は11か所の名誉棄損と2か所のプライバシー侵害を認め、76万円の支払いを命じる増田さん側の一部勝訴判決を下した。
この判決に対し、増田さん側は、事実認定の部分で憲法、教育基本法8条、学習指導要領の精神に沿い日米安保、米軍基地問題、天皇の戦争責任など具体的な社会的問題を取り上げた紙上討論授業をしており「偏向教育」「偏狭な思想」という表現を用いるのは不合理だと高裁で主張した。
一方、三都議側は、基礎事実の主要部分が真実であれば論評内容の正当性や合理性は問うことなく免責される「公正な論評」の法理を主張した。
裁判官は判決理由で、被告側の主張を全面的に支持し、「原告の授業方法は生徒を原告の政治的思想に沿う意見を持つように誘導するもの」とし、三都議の記述は「教育者としての適格性を問題とする意図によるもの」なので論評としての域を逸脱したものとはいえないという判断を示した。
被告側の主張を全面的に採用しているため、増田教諭が私語がひどく3度注意しても授業を妨害する生徒にテストの点数から1点減点したことと「生徒の意見の誘導」を混合し「生徒が増田教諭と異なる意見を表明すると減点した」と意図的に事実誤認して、書籍を出版しても「真実と信じるについて相当な理由がある」とまで書いている。また都議が都教委から違法に入手したプライバシー情報を書籍に掲載した点について、都議が「違法性を認識していなかったから入手行為を違法と評価することはできない」、都議は「特別職の地方公務員なので高度の守秘義務があるとはいえない」などと書いている。
2時半から裁判所2階で行われた記者会見で和久田修弁護士は「都教委はただでさえ現場の教員を締め付けているが、今日の判決はその流れを追認するものだ。授業のなかでの教師の意見を封殺することになりかねない危険なものだ」と感想を述べた。
原告の増田さんは「憲法・47年教育基本法下の教員は、憲法の思想という特定の思想をしっかり教えなければならない。憲法の理念を具体的な事例を使い生徒の骨肉になるようしっかり教えたことを『洗脳教育』『マインドコントロールだ』などと論評してもいいという判決はとんでもない。教授の自由を否定するものだ」と怒りをあらわにした。
また支援者の元校長・大野昭之さんは「わたしは朝鮮戦争のさなかに教員となり『暴力的な団体には加入しない』という誓約をさせられた。増田さんの時代は『日本国憲法を守る』という誓約をしたはずだ。三権分立の司法が憲法を守る立場を捨てたことはまことに残念だ」と述べた。
1審判決は、11か所については「論評の範囲を逸脱している」として名誉棄損を認め最低限の歯止めをかけるものだったが、高裁判決は最低ラインすら踏み破るものだった。
判決報告集会では「不当判決を認めない」というシュプレヒコールが鉄建公団訴訟原告団・国鉄闘争共闘会議の座り込み闘争に参加した多くの支援者とともに高裁に向かってこだました。
立川テント村反戦ビラ訴訟や4月16日のイラン人難民ジャマルさん訴訟でも逆転敗訴が続き「司法の反動化」の流れが強まっている。この日2時過ぎから強まってきた雨は、「天の声」を語っているように感じられた。
原告本人の声はこちらから
☆対三都議訴訟はいつも右派が大量動員し、裁判所前の喧騒が甚だしい。しかしこの日は国労闘争団の方が多数参加し、根津さん河原井さん支援者も別の訴訟で集まっていた。一方西村修平氏ら「主権回復を目指す会」の街宣ライトバンも来ていなかった。ただ被告・土屋たかゆき、古賀俊昭の両都議は姿をみせた(代理人の出席は必要だが、被告本人は参加しなくてもよい)。
裁判所2階の記者会見室に初めて入った。朝毎読など全国紙、北海道、東京など地方紙、NHKと民放5社、共同・時事の通信社、合計15社のブースがある記者クラブに付属したような部屋だった。幹事社を通して判決文をコピー・配布することになっているが、22pもある判決が20部近くすごい早さでコピーされた。これはすごいシステムだ。
『多面体F』(2008年04月18日)
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