☆★☆ 「君が代」強制反対に刑事罰!? ☆★☆
◇ 判決 5月29日(木)15:00~東京高裁102号法廷
「エゾコザクラ」 《撮影:佐久間市太郎(北海道白糠定、札幌南定、数学科教員)》
◎ 板橋高校事件-大詰めを迎えた控訴審~結審から判決へ
1 保護者への平穏な説明を「威力」と認定した06年1審不当判決
2004年3月の都立板橋高校卒業式に来賓として招待されていた元社会科教員の藤田勝久さんが、開式前に保護者に対して君が代強制の不当性を説明した行為について、2006年5月30日、東京地裁刑事第9部は、「威力業務妨害」罪にあたるとして罰金20万円の不当判決を言い渡した(求刑は懲役8月)。
しかしながら、卒業式そのものは、参列した誰もが「良い卒業式だった」と感じた立派な式であった。例年と大きく異なったのは、2003年10月の都教委通達で君が代斉唱時の起立・斉唱が教職員に強制されることとなり、さらに板橋高校では教育現場での君が代斉唱を強力に推進していた都議会議員が参列し、その取材のためにTBSのカメラが学校内に入っていたことであった。
そして、式開始直後の君が代斉唱時には、大部分の卒業生が自主的にいっせいに着席し、これに直面したくだんの都議は、都議会で卒業生不起立の「犯人」探しを都教委に要求し、都教委はこれに応じて「犯人」の「調査」を開始した。
やがて、来賓として招待されていた藤田さんが、卒業式開始前に保護者(卒業生は入場前だった)に対して「この卒業式で君が代斉唱時に立って歌わない教員は処分されてしまいます」と呼びかけたことがやり玉にあげられた。そのため藤田さんは「威力業務妨害罪」の罪名で自宅を家宅捜索され、2004年12月に在宅起訴された。起訴後、弁護団は大幅拡充され、約1年間の審理を経たが(検察側証人6名、弁護側証人7名)、その結論は残念ながら前記不当判決であった。
2 控訴審のたたかいのポイントと審理経過
本件は現在、東京高裁第10刑事部に係属しており、この3月に結審予定である。
1審では藤田さんの「保護者への呼びかけ」や「校長らによる退出命令への抗議」は、その目的・態様・結果のあらゆる面からみて威力業務妨害罪の「威力」にあたらず、また卒業式への悪影響といった「業務妨害」の結果もその危険性も存在しなかったとして、構成要件該当性がないゆえに無罪である、との主張を基調としていた。
また、そうした法的評価の前提として、藤田さんがこの問題を取りあげた週刊誌コピーを事前に配布したり、保護者へ呼びかけた際に、教頭がこれを制止したとされているのは事実無根であることを主張した。
ところが1審判決は、多数の目撃証人の供述や、都教委の指導主事が録音していた音声記録の内容とも全く反する内容の教頭証言に信用性を認めて「制止行為」の存在を認定し、さらに「管理者の意に反する言動をした以上は『威力』にあたる」として、たんなる表現活動であった平穏な呼びかけまでが、犯罪手段としての「威力」であるとの非常識かつ危険な法的判断を行った。
控訴審では、①事実関係(コピー配布や呼びかけへの制止の有無)に関して、さらにあらたな有力目撃証人を発掘し、これを裁判所に採用させることに成功した。また、②控訴理由の柱に法令適用の違反をたて、1審からの構成要件該当性判断の主張に加えて、違法性阻却事由の判断の誤りとして、被告人の「呼びかけ」や「抗議」が正当行為や正当防衛の各要件を備える、との主張を展開した。そして、違法性に関わる主張の前提をなすものとして、10.23通達違憲の画期的予防訴訟判決を大いに強調しつつ、表現の自由を中心とする憲法論から藤田さんの無罪を説く市川教授(立命館大学)意見書や、思想良心の自由・表現の自由などを踏まえた法益保護論から精繊に各控訴理由の論証を行った曽根教授(早稲田大学)意見書を提出し、これらにつき検察官の同意をえたうえ、曽根教授の証人尋問をかちとった。
こうして控訴審の審理においては、おおむね弁護団が獲得目標とした証拠調べが実施され、3月に論告・弁論が予定されている。この間の東京地裁・高裁の各種判決の動向からすれば、決して楽観視できる状況ではないが、少なくともi審判決のずさんな安易な論理を見直し、威力業務妨害罪の適用範囲の無限拡大に歯止めをかける内容の判断が下されることを弁護団は期待している。
「守れ言論活かそう憲法!4.7市民集会」集会資料より
◇ 判決 5月29日(木)15:00~東京高裁102号法廷
「エゾコザクラ」 《撮影:佐久間市太郎(北海道白糠定、札幌南定、数学科教員)》
◎ 板橋高校事件-大詰めを迎えた控訴審~結審から判決へ
小沢年樹 城北法律事務所
1 保護者への平穏な説明を「威力」と認定した06年1審不当判決
2004年3月の都立板橋高校卒業式に来賓として招待されていた元社会科教員の藤田勝久さんが、開式前に保護者に対して君が代強制の不当性を説明した行為について、2006年5月30日、東京地裁刑事第9部は、「威力業務妨害」罪にあたるとして罰金20万円の不当判決を言い渡した(求刑は懲役8月)。
しかしながら、卒業式そのものは、参列した誰もが「良い卒業式だった」と感じた立派な式であった。例年と大きく異なったのは、2003年10月の都教委通達で君が代斉唱時の起立・斉唱が教職員に強制されることとなり、さらに板橋高校では教育現場での君が代斉唱を強力に推進していた都議会議員が参列し、その取材のためにTBSのカメラが学校内に入っていたことであった。
そして、式開始直後の君が代斉唱時には、大部分の卒業生が自主的にいっせいに着席し、これに直面したくだんの都議は、都議会で卒業生不起立の「犯人」探しを都教委に要求し、都教委はこれに応じて「犯人」の「調査」を開始した。
やがて、来賓として招待されていた藤田さんが、卒業式開始前に保護者(卒業生は入場前だった)に対して「この卒業式で君が代斉唱時に立って歌わない教員は処分されてしまいます」と呼びかけたことがやり玉にあげられた。そのため藤田さんは「威力業務妨害罪」の罪名で自宅を家宅捜索され、2004年12月に在宅起訴された。起訴後、弁護団は大幅拡充され、約1年間の審理を経たが(検察側証人6名、弁護側証人7名)、その結論は残念ながら前記不当判決であった。
2 控訴審のたたかいのポイントと審理経過
本件は現在、東京高裁第10刑事部に係属しており、この3月に結審予定である。
1審では藤田さんの「保護者への呼びかけ」や「校長らによる退出命令への抗議」は、その目的・態様・結果のあらゆる面からみて威力業務妨害罪の「威力」にあたらず、また卒業式への悪影響といった「業務妨害」の結果もその危険性も存在しなかったとして、構成要件該当性がないゆえに無罪である、との主張を基調としていた。
また、そうした法的評価の前提として、藤田さんがこの問題を取りあげた週刊誌コピーを事前に配布したり、保護者へ呼びかけた際に、教頭がこれを制止したとされているのは事実無根であることを主張した。
ところが1審判決は、多数の目撃証人の供述や、都教委の指導主事が録音していた音声記録の内容とも全く反する内容の教頭証言に信用性を認めて「制止行為」の存在を認定し、さらに「管理者の意に反する言動をした以上は『威力』にあたる」として、たんなる表現活動であった平穏な呼びかけまでが、犯罪手段としての「威力」であるとの非常識かつ危険な法的判断を行った。
控訴審では、①事実関係(コピー配布や呼びかけへの制止の有無)に関して、さらにあらたな有力目撃証人を発掘し、これを裁判所に採用させることに成功した。また、②控訴理由の柱に法令適用の違反をたて、1審からの構成要件該当性判断の主張に加えて、違法性阻却事由の判断の誤りとして、被告人の「呼びかけ」や「抗議」が正当行為や正当防衛の各要件を備える、との主張を展開した。そして、違法性に関わる主張の前提をなすものとして、10.23通達違憲の画期的予防訴訟判決を大いに強調しつつ、表現の自由を中心とする憲法論から藤田さんの無罪を説く市川教授(立命館大学)意見書や、思想良心の自由・表現の自由などを踏まえた法益保護論から精繊に各控訴理由の論証を行った曽根教授(早稲田大学)意見書を提出し、これらにつき検察官の同意をえたうえ、曽根教授の証人尋問をかちとった。
こうして控訴審の審理においては、おおむね弁護団が獲得目標とした証拠調べが実施され、3月に論告・弁論が予定されている。この間の東京地裁・高裁の各種判決の動向からすれば、決して楽観視できる状況ではないが、少なくともi審判決のずさんな安易な論理を見直し、威力業務妨害罪の適用範囲の無限拡大に歯止めをかける内容の判断が下されることを弁護団は期待している。
「守れ言論活かそう憲法!4.7市民集会」集会資料より
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