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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

ウクライナ問題で、一方的なロシア敵視から距離を取った海外の論評

2022年03月08日 | 平和憲法
  《Peace Philosophy Centre 乗松聡子訳》
 ◆ ダイアナ・ジョンストン:米国の外交政策は残酷な遊びである
   DIANA JOHNSTONE: US Foreign Policy Is a Cruel Sport


 いま起こっている戦争を外交の力で止めなければいけないのは当然ですが、米国/NATOが冷戦後ロシアに対して長きにわたり行ってきた軍事的威嚇、敵視、その強大な軍事同盟の東方拡大、2014年米国が仕掛けたウクライナ政権転覆以来、米国をバックとしたネオナチ勢力が行ってきた犯罪行為・虐殺に対して何の声も上げてこなかった人たちが、今回、突如、対ロシア/プーチン大統領に対する一方的な敵視・糾弾だけの「平和」運動を行ったり声明を出すことには、私は決して賛同できません。
 それは米国NATOという巨悪の存在とその世界覇権のための軍事的侵略行為を許し、推奨することとイコールであるからです。
 私は、オリバー・ストーン監督とピーター・カズニック教授(アメリカン大学)と仕事をする機会を得てきたことから、日本やカナダを含む「西側」の一方的なロシア敵視について距離を取って学ぶことが可能になりました。
 まだまだ学びの途中ですが、私ができることは、日本語では情報源が非常に限られている中、海外の注目すべき論評や分析を日本語で届けることではないかと思っています。
 この記事とともに、オリバー・ストーン監督の2016年ドキュメンタリー映画「ウクライナ・オン・ファイア」を観てください(字幕を作った方に感謝!)。(Peace Philosophy Centre 乗松聡子)
https://rumble.com/vv35um-52215646.html
 ※ DIANA JOHNSTONE: US Foreign Policy Is a Cruel Sport
 https://consortiumnews.com/2022/02/23/diana-johnstone-us-foreign-policy-is-a-cruel-sport/
 By Diana Johnstone in Paris
 Special to Consortium News

 初代エリザベス女王の時代、英国王室の人たちは、獰猛な犬が、捕らえられた熊を苦しめるのを面白がって見物したという。この熊は誰にも危害を加えていないのだが、犬は捕らえられた熊を挑発し、反撃に出るよう仕向けるのである。興奮した動物から流れ出る血は、観客を喜ばせた。
 このような残酷な行為は、非人道的であるということで禁止されて久しい。

 しかし、今日、この熊いじめの一形態ともいえる行為が、それも巨大な国際的規模で、国家全体に対して毎日行われているのである。それは人呼んで、「アメリカの外交政策」である。NATOと呼ばれる、異常な国際スポーツクラブの常套手段なのである。
 米国の指導者たちは、「不可欠な国家」としての傲慢さの中に安住しながら、他国に対しては、自分たちが喜んで苦しめた動物たちに対してエリザベス朝が抱いていたような程度の敬意さえ持っていない。
 米国の熊いじめの標的国は枚挙にいとまがないが、ロシアは常に嫌がらせを受ける代表的な例として際立っている。そして、これは偶然ではない。いじめは意図的に、そして入念に計画されている。
 その証拠として、ランド研究所が米陸軍参謀長に提出した2019年の報告書、"Extending Russia"に注目したい。実は、このランドの研究自体は、かなり慎重な提言をしており、多くの背徳的な仕掛けがうまくいかないかもしれないと警告している。しかし、私はこの報告書の存在そのものが恥ずべきものと思っている。
 その報告書の内容よりも、国防総省がその一番の知識人たちに金を払って、どうしたら米国の指導者が利用できるようなトラブルに他国を誘い込むことができるかを考えさせているというその事実のことだ。
 米国の公式見解は、「ロシアの侵略的な拡張主義が欧州を脅かしている」というものだが、その戦略家たちが内輪で語るときは全く話が異なっている。彼らの目標は、制裁やプロパガンダなどの手段を用いてロシアを刺激することによって、ロシアによくない手段(「過剰な拡張」)を取らせ、まさしくそこを利用してロシアを追い詰め、米国が得をするように仕向けることである。
 ランド研究所は、その目標を次のように説明している。
「ロシアの軍事、経済、国内外での政権の政治的立場に圧力を加え、ロシアの実際の脆弱性と不安を利用することができる非暴力的なさまざまな手段を検討する。私たちが検討する措置は、防衛や抑止をその主要な目的とはしないだろうが、どちらにも貢献する可能性はあるだろう。むしろ、これらの措置は、敵対国(ロシア)のバランスを崩し、米国が優位に立つ領域や地域でロシアが競争するよう導き、ロシアが軍事的・経済的に過剰な拡張をしたり、政権が国内外での威信や影響力を失うよう仕向ける作戦の要素として考えられている。」
 明らかに、米国の支配者の世界では、これは「普通の」行動とみなされているのだ。校庭のいじめっ子にとって、からかいは普通の行動であり、腐敗したFBI捜査官にとって、おとり捜査は普通の行動であるように。
 ここに描かれていることは、ウクライナにおける米国の作戦に完全に合致する。
 敵対的な軍事同盟をロシアの玄関口に進めることによって「ロシアの脆弱性と不安を利用する」ことを意図し、一方でロシアの完全に予測できた反応を、不当な侵略と表現しているのである。
 外交には相手の立場を理解することが必要である。しかし、言葉による「熊いじめ」は、相手を理解することを完全に拒否し、相手の言動を常に意図的に誤って解釈することを要する。
 本当に極悪非道なのは、ロシアの熊が拡大を目論んでいると絶えず非難しながら、自らの政策全体を、熊を拡大するように仕向けることである。そうすれば、懲罰的な制裁を行い、国防総省の予算を数段上げ、米国の貴重な欧州の「同盟国」たちにNATOの保護恐喝的な締め付けを強めることができるからだ。
 ロシアの指導者たちは、一世代にわたって、EUや、とりわけNATOとして制度化された「西側」と、平和的パートナーシップを築くために並々ならぬ努力を重ねてきた。ロシアの指導者たちは、人為的に作られた冷戦を終結させることによって、ヨーロッパを平和を愛する近隣諸国として生まれ変わらせると本気で信じていた。
 しかし、傲慢な米国の指導者たちは、自国の最高の専門家たちの反対意見にもかかわらず、ロシアを大国として正当に扱うことを拒否し、サーカスの中でいじめる熊のように扱うことを好んだ。
 NATOの拡大は、まさしくこの熊いじめの一形態であり、友人になれたはずの国を敵に変換させる確実な方法であった。米国のビル・クリントン政権およびその後の政権が選んだ道である。
 モスクワは、旧ソ連邦の構成国の独立を認めていた。それなのに、この「熊いじめ」によって、常にロシアが旧ソ連の構成国を取り戻そうとしていると、責め続けたのである。
 ◆ ロシアの国境地帯

 ウクライナとは「国境地帯」を意味する言葉で、本来はロシアと西方のポーランドやリトアニア、ハプスブルク家の領土の一部であった地域との国境地帯を意味する。ソ連邦の一部であったウクライナは、その両方の領土を含むように拡大された。
 歴史は両極端の対照的なアイデンティティを作り出し、結果として、1991年に誕生したばかりのウクライナという独立国家は、当初から分裂が激しかった。そして当初から、ワシントンの戦略は、米国やカナダにいる反共産主義的な反ロシアの大規模なディアスポラと共謀して、ウクライナの分裂の苦しさを利用して、まずソ連を、次にロシアを弱めようと企んでいたのである。
 「民主主義の強化」のためーウクライナの、西側に親和的な西部と、半ロシア(セミ・ロシア)といえる東部を対立させるためにー何十億ドルもの資金が投入された。
 2014年、米国が支援したクーデターにより、ウクライナ東部の強固な支持を受けていたヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領が倒され、ウクライナをNATOに加盟させると決意していた親西側勢力が権力を握ることになり、NATOのロシア敵視はますます露骨になった。
 その結果、クリミア半島にあるロシアの主要な海軍基地セバストポリをNATOが奪取するのではないかとの見方が出てきた。
 クリミアの人たちはウクライナの一部になることを望んだことなどなかったので、住民投票を実施し、圧倒的多数のクリミア人が、1954年、独裁的なフルシチョフ政権によって断絶されていたロシアへの復帰を選ぶことで、危機を回避することができた。
 西側のプロパガンダ担当者たちは、この自己決定的行為を、ロシアが西側諸国を軍事的に征服する計画を予見させる「ロシアの侵略」であると執拗に非難した。
 そして、自分たちが投票した大統領がクーデターで倒されたことと、自分たちが話す言語であるロシア語を禁止すると脅す民族主義者たちに愕然とした東部のドネツク州とルガンスク州の人々は、独立を宣言したのだ。
 ロシアはこの動きを支持せず、そのかわりにミンスク合意を支持した。
 ミンスク合意は2015年2月に署名され、国連安保理決議で承認された。
 この合意の骨子は、離脱した共和国を地方自治権と引き換えに返還する連邦化プロセスによって、ウクライナの領土の一体性を維持することでした。
 ミンスク合意は、ウクライナ内部の危機を終わらせるためのいくつかのステップを定めたものであった。
 まず、ウクライナは東部地域に自治を認める法律を直ちに採択することになっていた(2015年3月)。
 次に、ウクライナ政府は東部地域と、同年にOSCE(欧州安全保障協力機構)の監視下で実施される地方選挙のガイドラインについて交渉する。そして、東部の権利を保障する憲法改正を実施する。
 選挙後、ウクライナ政府はドネツクとルガンスクをロシアとの国境も含めて完全に掌握する。一般的な恩赦は、双方の兵士を対象とする。
 しかし、ウクライナ政府は協定に署名したものの、これらの点を何一つ実行せず、東部反政府軍との交渉を拒否してきた。
 いわゆるノルマンディー・フォーマットで、フランスとドイツがウクライナ政府に圧力をかけて、この平和的解決を受け入れさせることが期待されたが、何も起こらなかった。
 それどころか、西側諸国はロシアが合意を履行していないと非難しているが、合意の履行義務はモスクワではなくキエフにある以上、これは意味をなさない。
 ウクライナ政府の高官たちは、反政府勢力との交渉を拒否することを繰り返す一方で、自分たちのやり方で問題に対処するために、NATO諸国にますます多くの武器を要求している。
 一方、ロシア下院の主要政党や世論は、8年間中央政府からの窮乏と軍事攻撃に苦しんできた東部諸州のロシア語話者への懸念を以前から表明してきた。この懸念は、西側諸国では当然のように、ヒトラーの近隣諸国征服への動きの再来と解釈されている。
 しかし、この西側諸国にありがちな、ヒトラーとの比較には根拠がない。ロシアは広すぎて、レーベンスラウム(訳者注:ヒットラーが主張していたような生存圏)を征服するといったニーズはないこと一つ取っても。
 ◆ そんなに敵が欲しいのか?今、望みがかなったようだな

 ドイツは、西側諸国の対ロシア関係の完璧な方程式を発見した。その方程式はこれだ。
 あなたは"Putinversteher"、つまり"Putinunderstander"(プーチン理解者)なのか、そうでないのか?西側のプロパガンダの定番は、ターゲットとなる国をその国の大統領の名前で擬人化することだから、この場合はウラジーミル・プーチンである。プーチンは必然的に独裁的な専制君主とされる。もしあなたがプーチンやロシアを「理解」するならば、あなたは西側に不誠実であるという深い疑いをかけられていることになる。だから、今、我々はみんな揃って、ロシアを理解しないという姿勢を明確にしようではないか!
 ロシアの指導者たちが、巨大な敵対同盟のメンバー国の数々が、自分たちの目の前で定期的に軍事演習を行うことに脅威を感じているとでも言うのか?近隣のNATO加盟国から自国の領土に向けられる核ミサイルに不安を感じているとでも?それは単なるパラノイアか、ずる賢く攻撃的な意図の表れだろう。
 理解するべきことなど何もない。
 (訳者注:上の2パラグラフは、「西側プロパガンダ」を皮肉を込めて描写しているのです。)
 つまり、西側諸国はロシアを熊いじめの熊のように扱ってきたのだ。その結果西側諸国が得たものは、ワシントンやロンドンなどにいる平凡な政治家よりもはるかに思慮深く知的な人々が率いる、核武装した軍事的に強力な敵国だ。
 ジョー・バイデン米国大統領と彼が率いる闇の国家は、ウクライナの平和的解決など決して望んでこなかった
 なぜなら、不安定なままのウクライナはロシアと西ヨーロッパ間の永久的な障壁として機能し、西ヨーロッパに対する米国の支配を確実なものにするからだ。
 米国は長年にわたりロシア敵視を続けてきた。そしていまロシアは、西側は自分たちを敵としてしか見ないのだという不可避の結論を導いているのである。
 ロシアの忍耐は限界に達した。そして、これはゲーム・チェンジャーである。

 最初の反応:西側は制裁で熊を罰する!ドイツは、天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の認定を停止している。
 このようにドイツは、自分たちが将来必要とするガスをロシアが遮断したりしないために、いま必要とするロシアのガスの購入を拒否している。これはなんと賢いからくりなんだろう!
 そして、ガス不足と価格高騰で、ロシアはアジアのどこかにガスを売るのに困ることはないだろう。
 「私たちの価値観」(訳者注:西側にとっての価値観)に「理解を拒否すること」が含まれているとしたら、西側が「理解し損なう」ことにも天井がなくなる。
 次回に続く。


 ※ Diana Johnstone ダイアナ・ジョンストンは、1989年から1996年まで欧州議会の緑の党の報道官を務めた。最新作『Circle in the Darkness: Memoirs of a World Watcher[闇の中の円環:一人の国際情勢評論家による回顧録]』 (Clarity Press, 2020)では、ドイツの緑の党が平和政党から戦争政党に変貌するにあたっての数々の重要なエピソードが語られている。その他の著書には『Fools’ Crusade: Yugoslavia, NATO and Western Delusions [愚か者の十字軍 ユーゴスラビア、NATO、西側諸国の妄想]』(Pluto/Monthly Review) がある。また、父親であるポール・H・ジョンストンとの共著で、『From MAD to Madness: Inside Pentagon Nuclear War Planning [MADから狂気へ ペンタゴンの核戦争計画の内幕]』 (Clarity Press)がある。
(注:翻訳はアップ後修正することがあります)

『Peace Philosophy Centre』
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