◆ 道徳教科化で中教審答申~国による内心への踏み込み鮮明に
文部科学省の中央教育審議会は10月21日の総会で、小中学校の道徳を「特別の教科」にし、検定教科書と評価を導入するとした答申を了承、安西祐一郎会長が下村博文大臣に手渡した。同省は今年度中に道徳に関する学習指導要領の改定案と教科書検定基準を作り、18年度から検定教科書を使う授業を実施させる、としている。
答申を前に10月16日、池田賢市中央大学教授・大森直樹東京学芸大学准教授は文科省記者クラブで会見し、「同省が2001年、『指導要録(通知表の原簿)の参考様式』の小学6年社会・評価欄に『国を愛する心情をもつ』を盛り込んでから、各地で”愛国心通知表”が少なからず出てきたが、学校教育では多文化尊重が大切」などと警鐘を鳴らした。だが、池田さんら十数人の学者の声明やパブリックコメントの反対意見は、無視された。
戦前・戦中の筆頭教科"修身"を中心とする国家主義教育で人々を戦場に駆り立てた反省から、1958年の「道徳の時間」設置以来、現在の指導要領に至るまで、道徳は正式教科ではない。
中教審は安倍首相主導の教科化を第1次政権時は退けた。だが第2次政権では、昨年報告書を出した道徳教育懇談会も、9月19日に答申案をまとめた中教審・専門部会も、メンバーは安倍首相に近い人物や文科省元官僚らが大半。始めに結論ありきだった。
民間出版社が教科書を作成し文科省が検定を行う時、大枠の基準となる指導要領は現在、小学校3年生以上で「伝統文化・国際理解教育」と一緒に「愛国心、日本人としての自覚」を規定。だが記述が比較的簡潔な上に、今の道徳の副読本は検定がない。
だから"愛国心"のキーワードを掲げつつ、実際は「国際理解教育」の教材を載せているリベラルな出版社もある。
しかし6月、専門部会で元文科省教科調査官の委員が"愛国心"を念頭に「文科省著作の『学習指導要領解説』の(詳しい)記述を、指導要領本体に記載を」と主張。答申はこれに沿い、「指導要領の記述具体化」を提言した。
また文科省は4月、改定教育基本法第2条の目標("国を愛する態度"を明記)等に照らし重大な欠陥がある場合、検定不合格とするよう教科書検定審査要項を改定している。
こういう縛りの強化で、検定教科書を通しナショナリズムが意図的・計画的に教え込まれる危険性は大。9月24日の中教審・分科会で、銭谷眞美委員(第1次安倍政権の文科事務次官)が「検定教科書導入は画期的」と述べたのが象徴的だ。
答申は、記述式での評価導入を明記。
だが、文科省へのパブコメ(8月末から2週間だけ募集)の結果は、「(数値でなく)記述式でも、心の変容を評価することは疑問。子供の価値観や心情を一定の基準等で評価するべきではない。画一的な指導や評価になることに危機感を覚える」など、反対意見が多数だ。
なお答申は、各小中学校の道徳教育推進教師(現指導要領で設置義務化)に助言等を行う「道徳教育推進リーダー教師」の設置促進や、全教員の研修受講を要求。
「高校での道徳の新科目設置検討」も必要と主張している。
『週刊新社会』(2014年11月11日)
永野厚男(教育ライター)
文部科学省の中央教育審議会は10月21日の総会で、小中学校の道徳を「特別の教科」にし、検定教科書と評価を導入するとした答申を了承、安西祐一郎会長が下村博文大臣に手渡した。同省は今年度中に道徳に関する学習指導要領の改定案と教科書検定基準を作り、18年度から検定教科書を使う授業を実施させる、としている。
答申を前に10月16日、池田賢市中央大学教授・大森直樹東京学芸大学准教授は文科省記者クラブで会見し、「同省が2001年、『指導要録(通知表の原簿)の参考様式』の小学6年社会・評価欄に『国を愛する心情をもつ』を盛り込んでから、各地で”愛国心通知表”が少なからず出てきたが、学校教育では多文化尊重が大切」などと警鐘を鳴らした。だが、池田さんら十数人の学者の声明やパブリックコメントの反対意見は、無視された。
戦前・戦中の筆頭教科"修身"を中心とする国家主義教育で人々を戦場に駆り立てた反省から、1958年の「道徳の時間」設置以来、現在の指導要領に至るまで、道徳は正式教科ではない。
中教審は安倍首相主導の教科化を第1次政権時は退けた。だが第2次政権では、昨年報告書を出した道徳教育懇談会も、9月19日に答申案をまとめた中教審・専門部会も、メンバーは安倍首相に近い人物や文科省元官僚らが大半。始めに結論ありきだった。
民間出版社が教科書を作成し文科省が検定を行う時、大枠の基準となる指導要領は現在、小学校3年生以上で「伝統文化・国際理解教育」と一緒に「愛国心、日本人としての自覚」を規定。だが記述が比較的簡潔な上に、今の道徳の副読本は検定がない。
だから"愛国心"のキーワードを掲げつつ、実際は「国際理解教育」の教材を載せているリベラルな出版社もある。
しかし6月、専門部会で元文科省教科調査官の委員が"愛国心"を念頭に「文科省著作の『学習指導要領解説』の(詳しい)記述を、指導要領本体に記載を」と主張。答申はこれに沿い、「指導要領の記述具体化」を提言した。
また文科省は4月、改定教育基本法第2条の目標("国を愛する態度"を明記)等に照らし重大な欠陥がある場合、検定不合格とするよう教科書検定審査要項を改定している。
こういう縛りの強化で、検定教科書を通しナショナリズムが意図的・計画的に教え込まれる危険性は大。9月24日の中教審・分科会で、銭谷眞美委員(第1次安倍政権の文科事務次官)が「検定教科書導入は画期的」と述べたのが象徴的だ。
答申は、記述式での評価導入を明記。
だが、文科省へのパブコメ(8月末から2週間だけ募集)の結果は、「(数値でなく)記述式でも、心の変容を評価することは疑問。子供の価値観や心情を一定の基準等で評価するべきではない。画一的な指導や評価になることに危機感を覚える」など、反対意見が多数だ。
なお答申は、各小中学校の道徳教育推進教師(現指導要領で設置義務化)に助言等を行う「道徳教育推進リーダー教師」の設置促進や、全教員の研修受講を要求。
「高校での道徳の新科目設置検討」も必要と主張している。
『週刊新社会』(2014年11月11日)
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