◆ 「団体ヒアリングで賛成大多数」の文科省・指導要領改定策
~パブコメでは反対意見が多数、存在 (マスコミ市民)
文科省がヒアリング結果を公表した11月14日の中教審特別部会
小中高校等の学習内容を大綱的基準として定めている学習指導要領を、文部科学省は10年ごとに改定している。だが、東京五輪が2020年に決まってしまったこともあり、1年前倒しし、小学校は20年度、中学は21年度、高校は22年度から年次進行で実施するよう、作業を着々と進めている。
その指導要領の改定内容を審議する、中央教育審議会・教育課程企画特別部会の11月14日の会合で、文科省は同特別部会の『審議まとめ』に対する、計50の関係団体ヒアリング(10月6日から11月4日まで計4回に分け実施)の「概況」を公表した。
「概況」は「指導要領改訂の基本的な方向性」について、「積極的評価」が大多数だと記述。
だが、"賛成"大多数なのは、文科省がヒアリング対象にした50団体が、
①校長は現職の小中高校等の校長会のみならず、退職校長会や女性校長会まで招き、教育長会は「全国・政令指定都市・中核市・(一般)市・町村」等ごとに隈(くま)なく招く、
②財界は日本経団連等6団体も招く一方、教組以外の労働組合は連合だけ、
③日本教育大学協会等、一部大学関係は招くが、日本教育学会や日本教育法学会等の教育研究者団体を招かない
など、偏った選択に起因する。
一方、文科省が同時期に公表した、『審議まとめ』に対するパブコメ(総数2974件)の「結果概要」は、大手マスコミの報じる、小学校英語教育の授業増や中高の部活動を巡り、条件整備や負担減等の注文を付ける意見を載せるのに留まらなかった。
「指導要領に指導方法や評価の具体まで立ち入って規定すべきではない。画一的指導が求められないようにする必要がある」「一方的な管理強化につながるものであってはならない」など、上意下達の教育行政への反対意見も載せざるを得なかったのだ。
文科省でパブコメの全文(個人情報を除き公開)を閲覧したり、研究者や現元教諭・保護者らパブコメ応募者30人以上に取材したりすると、以下の(1)~(3)に例示するような、国家主義イデオロギー教化に真っ向、反対する意見も多く存在する。
(1)『審議まとめ』1頁の「この140年間、平成18年の教育基本法の改正により明確になった教育の目的や目標を踏まえ、我が国の教育は大きな成果を上げ、蓄積を積み上げてきた」との記述に対して
→「戦前・戦中の教育勅語や修身教育、旧文部省著作・国定教科書等が、当時の子どもたちを洗脳し戦場に駆り立て、アジアや日本の無辜なる人々を殺傷した。その反省の上に制定された日本国憲法下、1947年の教育基本法により、やっと民主主義的な教育ができるようになった」と事実を書くべき。自民党など保守系政治家と一部文部官僚との癒着(ゆちゃく)(注、詳細は本誌『マスコミ市民』2016年7月号)により、"国を愛する態度"教化を盛る等、立憲主義に反する方向に改悪した教育基本法や指導要領の総則(全教科等に関連)の文言等を、元に戻す必要がある。
(2)『審議まとめ』132頁が、地歴・公民科(高校の新設必修科目「公共」を含む)で「特定の事柄を強調しすぎたり、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなど、偏った取扱いにより、生徒が多面的・多角的に考察し、事実を客観的に捉え、公正に判断することを妨げることのないよう留意する」と記述していることに対して
→「君が代、自衛隊、安保法、米軍基地」など、国家権力の根幹に関わるテーマについて、"政府見解"や政府の施策が"中立"であるかのように教化した上で、「アクティブ・ラーニング」として議論等を活発にすれば将来、安倍首相が望む"憲法改正の国民投票"で、政府に近い政策を是とし投票する「18歳有権者」が、増えてしまう危険性がある。
(3)『審議まとめ』135頁以降の社会、地歴、公民教育の「イメージ」や「育成を目指す資質・能力」の表(ひょう)の「学びに向かう力・人間性等」の欄が、"日本国民としての自覚、我が国の国土や歴史に対する愛情"、"自国を愛しその平和と繁栄を図ること"等
の文言を満載しているのに対して
→02年度から適用の指導要領が、小6社会科の目標の一つに「国を愛する心情を育てるようにする」との文言を加筆後、福岡市立小の校長会主導で作成し、63校が採用した通知表は、社会の観点別評価項目に、"国を愛する心情"を設定。この項目にBを付けられた、ある在日外国人児童の保護者らが、福岡県弁護士に人権救済を求め、同弁護士会は「思想・良心の自由を定めた憲法19条違反の恐れがある」と、市教委に削除指導を求める人権救済の勧告書を出した。個人と国との距離の置き方は多様。"愛国心"教化はやめるべきだ。
関連し、「愛国心まで『人間性』に入れ、評価対象にするのには驚いた」等の意見を寄せた人もいた。
『マスコミ市民』(2016年12月号)
~パブコメでは反対意見が多数、存在 (マスコミ市民)
永野厚男(教育ライター)
文科省がヒアリング結果を公表した11月14日の中教審特別部会
小中高校等の学習内容を大綱的基準として定めている学習指導要領を、文部科学省は10年ごとに改定している。だが、東京五輪が2020年に決まってしまったこともあり、1年前倒しし、小学校は20年度、中学は21年度、高校は22年度から年次進行で実施するよう、作業を着々と進めている。
その指導要領の改定内容を審議する、中央教育審議会・教育課程企画特別部会の11月14日の会合で、文科省は同特別部会の『審議まとめ』に対する、計50の関係団体ヒアリング(10月6日から11月4日まで計4回に分け実施)の「概況」を公表した。
「概況」は「指導要領改訂の基本的な方向性」について、「積極的評価」が大多数だと記述。
だが、"賛成"大多数なのは、文科省がヒアリング対象にした50団体が、
①校長は現職の小中高校等の校長会のみならず、退職校長会や女性校長会まで招き、教育長会は「全国・政令指定都市・中核市・(一般)市・町村」等ごとに隈(くま)なく招く、
②財界は日本経団連等6団体も招く一方、教組以外の労働組合は連合だけ、
③日本教育大学協会等、一部大学関係は招くが、日本教育学会や日本教育法学会等の教育研究者団体を招かない
など、偏った選択に起因する。
一方、文科省が同時期に公表した、『審議まとめ』に対するパブコメ(総数2974件)の「結果概要」は、大手マスコミの報じる、小学校英語教育の授業増や中高の部活動を巡り、条件整備や負担減等の注文を付ける意見を載せるのに留まらなかった。
「指導要領に指導方法や評価の具体まで立ち入って規定すべきではない。画一的指導が求められないようにする必要がある」「一方的な管理強化につながるものであってはならない」など、上意下達の教育行政への反対意見も載せざるを得なかったのだ。
文科省でパブコメの全文(個人情報を除き公開)を閲覧したり、研究者や現元教諭・保護者らパブコメ応募者30人以上に取材したりすると、以下の(1)~(3)に例示するような、国家主義イデオロギー教化に真っ向、反対する意見も多く存在する。
(1)『審議まとめ』1頁の「この140年間、平成18年の教育基本法の改正により明確になった教育の目的や目標を踏まえ、我が国の教育は大きな成果を上げ、蓄積を積み上げてきた」との記述に対して
→「戦前・戦中の教育勅語や修身教育、旧文部省著作・国定教科書等が、当時の子どもたちを洗脳し戦場に駆り立て、アジアや日本の無辜なる人々を殺傷した。その反省の上に制定された日本国憲法下、1947年の教育基本法により、やっと民主主義的な教育ができるようになった」と事実を書くべき。自民党など保守系政治家と一部文部官僚との癒着(ゆちゃく)(注、詳細は本誌『マスコミ市民』2016年7月号)により、"国を愛する態度"教化を盛る等、立憲主義に反する方向に改悪した教育基本法や指導要領の総則(全教科等に関連)の文言等を、元に戻す必要がある。
(2)『審議まとめ』132頁が、地歴・公民科(高校の新設必修科目「公共」を含む)で「特定の事柄を強調しすぎたり、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなど、偏った取扱いにより、生徒が多面的・多角的に考察し、事実を客観的に捉え、公正に判断することを妨げることのないよう留意する」と記述していることに対して
→「君が代、自衛隊、安保法、米軍基地」など、国家権力の根幹に関わるテーマについて、"政府見解"や政府の施策が"中立"であるかのように教化した上で、「アクティブ・ラーニング」として議論等を活発にすれば将来、安倍首相が望む"憲法改正の国民投票"で、政府に近い政策を是とし投票する「18歳有権者」が、増えてしまう危険性がある。
(3)『審議まとめ』135頁以降の社会、地歴、公民教育の「イメージ」や「育成を目指す資質・能力」の表(ひょう)の「学びに向かう力・人間性等」の欄が、"日本国民としての自覚、我が国の国土や歴史に対する愛情"、"自国を愛しその平和と繁栄を図ること"等
の文言を満載しているのに対して
→02年度から適用の指導要領が、小6社会科の目標の一つに「国を愛する心情を育てるようにする」との文言を加筆後、福岡市立小の校長会主導で作成し、63校が採用した通知表は、社会の観点別評価項目に、"国を愛する心情"を設定。この項目にBを付けられた、ある在日外国人児童の保護者らが、福岡県弁護士に人権救済を求め、同弁護士会は「思想・良心の自由を定めた憲法19条違反の恐れがある」と、市教委に削除指導を求める人権救済の勧告書を出した。個人と国との距離の置き方は多様。"愛国心"教化はやめるべきだ。
関連し、「愛国心まで『人間性』に入れ、評価対象にするのには驚いた」等の意見を寄せた人もいた。
『マスコミ市民』(2016年12月号)
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