◆ 愛と希望の書 (東京新聞【本音のコラム】)
昨年十一月。渋谷区のバス停ベンチで寝ていた六十代のホームレス女性が、目障りだと石で殴殺された事件は、思い出すたびに怒りがある。
しかし、もしも自分が通りかかっていたとして救いの手をさしのべていたかどうか。やはり、目を背けて通り過ぎていたであろう。
終バスが去ったあとのバス停。所持金八円。契約の切れた携帯電話。絶体絶命。それでもだれも救わなかった。
「新型コロナ災害緊急アクション活動日誌」(原作 瀬戸大作、企画編集 平山昇・土田修、社会評論社)は、死のうと思ったが死ねなかった人や、死にたくないが死にそうな人たちを救って歩く、活動報告書である。
「原作」とあるのでマンガと思われそうだが、集団活動の「事務局」との意味だ。「原作者」は「野戦病院のようだ」と書いている。
コロナウイルス敗戦国の首相は、自分の責任には無痛覚。仕事を失い斃死(へいし)・自死直前で苦しむ困窮者に、平然と自己責任だ、自分でガンバレと「自助」教条主義を押しつける冷酷無残。
瀬戸さんが無一文の路上生活者と福祉事務所へ同行すると、相談員は生活保護費支給までの十四日を五千円で暮らせと前借金を差し出す。一日三百五十八円。
荒涼たる福祉の現場。ホームレスを殴り殺す世間。
それに立ち向かう貧困ネットワークの奮闘。生協や労組、ボランティアの、奮起を促す。
『東京新聞』(2021年8月17日【本音のコラム】)
鎌田 慧(かまたさとし・ルポライター)
昨年十一月。渋谷区のバス停ベンチで寝ていた六十代のホームレス女性が、目障りだと石で殴殺された事件は、思い出すたびに怒りがある。
しかし、もしも自分が通りかかっていたとして救いの手をさしのべていたかどうか。やはり、目を背けて通り過ぎていたであろう。
終バスが去ったあとのバス停。所持金八円。契約の切れた携帯電話。絶体絶命。それでもだれも救わなかった。
「新型コロナ災害緊急アクション活動日誌」(原作 瀬戸大作、企画編集 平山昇・土田修、社会評論社)は、死のうと思ったが死ねなかった人や、死にたくないが死にそうな人たちを救って歩く、活動報告書である。
「原作」とあるのでマンガと思われそうだが、集団活動の「事務局」との意味だ。「原作者」は「野戦病院のようだ」と書いている。
コロナウイルス敗戦国の首相は、自分の責任には無痛覚。仕事を失い斃死(へいし)・自死直前で苦しむ困窮者に、平然と自己責任だ、自分でガンバレと「自助」教条主義を押しつける冷酷無残。
瀬戸さんが無一文の路上生活者と福祉事務所へ同行すると、相談員は生活保護費支給までの十四日を五千円で暮らせと前借金を差し出す。一日三百五十八円。
荒涼たる福祉の現場。ホームレスを殴り殺す世間。
それに立ち向かう貧困ネットワークの奮闘。生協や労組、ボランティアの、奮起を促す。
『東京新聞』(2021年8月17日【本音のコラム】)
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