◆ 日本vs.韓国vs.中国vs.台湾、
紛争の火種を育てる教科書戦争・第10章〈 前篇 〉
『エコノミスト 7月5日』
東アジア地区においては、歴史の教科書は、各国の国家主義のバロメーターになっています。そして互いに教科書の中身を批判し合っている現状は、国家間の代理戦争のひとつでもあります。
今、東シナ海と南シナ海において領土紛争が激化しつつある状況は長期化する様相を呈していますが、彼らがかつてどのような教育を受けてきたかを考えれば、別に驚くべき事ではありません。
今度の争いはいつものお決まりの組み合わせ、日本と中国だけにとどまらず、さらなる広がりを見せようとしています。そしてこの国家間の争いに、今また強力な個性を持つ国家主義者が加わろうとしています。
新たな戦いのきっかけを提供したのは日本です。
その侵略政策があまりに露骨であったため、日本は1945年必然的に敗戦国となりました。その敗戦こそが今、新たなる教科書戦争の火ダネとなっています。
2012年末に行われた総選挙で、自民党は学校教育の場で『愛国教育』の実施をマニフェストの中でうたい、現在の教科書について『自虐的史観に基づくイデオロギー的に偏向した表現が用いられている』と攻撃し、多くの現場の教師や学術関係者が著しい困惑を覚えることになりました。
選挙で地滑り的勝利を手にした自民党は、安倍首相の下、未だにその解釈について一致した見解が得られない部分について、教科書を書き直すための委員会を早速立ち上げました。
これについてスタンフォード大学でアジアの教科書戦争を研究するダニエル・スナイダー教授は、次のように表現しました。
『日本の侵略行為に言及することを妨げるため、裏から手をまわすやり方』
安倍首相が選定した委員会も、歴史の教科書から『近隣諸国の対日感情』に関する記述を削除したいと表明しています。
歴史家が近隣諸国国民の - それはとりもなおさず中国と韓国ということになりますが - 感情に配慮し、日本の行為についての否定的な記述をどうにかしたいと考えているのです。
学区の最終責任者を市町村長とし、教育の場に政治の目を光らせようとしています。
実際、沖縄地方では学区が独自に選定した教科書を、政府が好ましいと考える教科書に変更するよう命令しました。( http://kobajun.chips.jp/?p=16270 )
そうした動きは、戦後長くくすぶり続けてきた野心が表に出てきたことを表すものです。
安倍首相こそは、日本が戦時中に行った数々の残虐行為に関する歴史教科書の記述を、書き換えさせるべく長い間圧力をかけ続けてきた議会内グループを代表する人物のひとりなのです。
近隣諸国からは予想通りの反応が返ってきました。
中国との間で領有権争いが起きている尖閣列島(中国名ダイユー諸島)について、日本がその領土であることを教科書に記載することにした際、中国側は『史実を尊重するよう』(その場合、結果はかえって中国に不利になる可能性があります)に要求しました。
同じく韓国が独島と呼び実質支配している竹島について、日本の領土であると教科書に明記することを決定した際、韓国はそれを『誤った歴史を教えることにより、不要な敵意を煽り、紛争の火種を作りだす』行為だと非難しました。
中国と韓国は、日本が隣国に対する配慮を捨て去ったことについて激怒しています。
日本国内で荒れ狂っている歴史教科書への政治勢力の介入は、韓国、そして台湾にも波及しました。
昨年、韓国の歴史教科書を監修する韓国歴史国立研究所は、『新右翼』勢力に属する歴史家の著述による高校の歴史教科書の採用を承認しました。
この立場の人々は、韓国のかつての軍事独裁政権の功績を容認する立場をとっています。
さらに韓国の与党は、民間の出版社が発行している教科書を学校ごとに選んでいる現在のやり方を、国内のすべての学校がNIKHが選んだ教科書1冊のみを採用する体制に変更すべきだと主張し始めました。
日本同様、韓国でも教科書選定の場に政治が介入する動きが明らかになってきました。
台湾の教育省も、今年、高校の教科書のための新しいガイドラインを発表しました。
このガイドラインは2015年8月に実施に移される見込みですが、台湾も韓国同様、教科書採用はガイドラインに従わなければなりません。
台湾は1945年まで日本の植民地でしたが、今回のガイドラインの変更について台湾政府は、50年間の日本の統治時代を評価するノスタルジックで不正確な表現を改め、世界基準にあった表現に変更するだけだと語っています。
具体的には『日本の統治』を『日本による植民地支配』という表現に置き換えます。
〈 後篇に続く 〉
http://www.economist.com/news/asia/21606332-which-democracies-join-east-asias-history-wars-textbook-cases-chapter-10?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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『星の金貨プロジェクト』(2014年7月14日)
http://kobajun.chips.jp/?p=19067
紛争の火種を育てる教科書戦争・第10章〈 前篇 〉
『エコノミスト 7月5日』
東アジア地区においては、歴史の教科書は、各国の国家主義のバロメーターになっています。そして互いに教科書の中身を批判し合っている現状は、国家間の代理戦争のひとつでもあります。
今、東シナ海と南シナ海において領土紛争が激化しつつある状況は長期化する様相を呈していますが、彼らがかつてどのような教育を受けてきたかを考えれば、別に驚くべき事ではありません。
今度の争いはいつものお決まりの組み合わせ、日本と中国だけにとどまらず、さらなる広がりを見せようとしています。そしてこの国家間の争いに、今また強力な個性を持つ国家主義者が加わろうとしています。
新たな戦いのきっかけを提供したのは日本です。
その侵略政策があまりに露骨であったため、日本は1945年必然的に敗戦国となりました。その敗戦こそが今、新たなる教科書戦争の火ダネとなっています。
2012年末に行われた総選挙で、自民党は学校教育の場で『愛国教育』の実施をマニフェストの中でうたい、現在の教科書について『自虐的史観に基づくイデオロギー的に偏向した表現が用いられている』と攻撃し、多くの現場の教師や学術関係者が著しい困惑を覚えることになりました。
選挙で地滑り的勝利を手にした自民党は、安倍首相の下、未だにその解釈について一致した見解が得られない部分について、教科書を書き直すための委員会を早速立ち上げました。
これについてスタンフォード大学でアジアの教科書戦争を研究するダニエル・スナイダー教授は、次のように表現しました。
『日本の侵略行為に言及することを妨げるため、裏から手をまわすやり方』
安倍首相が選定した委員会も、歴史の教科書から『近隣諸国の対日感情』に関する記述を削除したいと表明しています。
歴史家が近隣諸国国民の - それはとりもなおさず中国と韓国ということになりますが - 感情に配慮し、日本の行為についての否定的な記述をどうにかしたいと考えているのです。
学区の最終責任者を市町村長とし、教育の場に政治の目を光らせようとしています。
実際、沖縄地方では学区が独自に選定した教科書を、政府が好ましいと考える教科書に変更するよう命令しました。( http://kobajun.chips.jp/?p=16270 )
そうした動きは、戦後長くくすぶり続けてきた野心が表に出てきたことを表すものです。
安倍首相こそは、日本が戦時中に行った数々の残虐行為に関する歴史教科書の記述を、書き換えさせるべく長い間圧力をかけ続けてきた議会内グループを代表する人物のひとりなのです。
近隣諸国からは予想通りの反応が返ってきました。
中国との間で領有権争いが起きている尖閣列島(中国名ダイユー諸島)について、日本がその領土であることを教科書に記載することにした際、中国側は『史実を尊重するよう』(その場合、結果はかえって中国に不利になる可能性があります)に要求しました。
同じく韓国が独島と呼び実質支配している竹島について、日本の領土であると教科書に明記することを決定した際、韓国はそれを『誤った歴史を教えることにより、不要な敵意を煽り、紛争の火種を作りだす』行為だと非難しました。
中国と韓国は、日本が隣国に対する配慮を捨て去ったことについて激怒しています。
日本国内で荒れ狂っている歴史教科書への政治勢力の介入は、韓国、そして台湾にも波及しました。
昨年、韓国の歴史教科書を監修する韓国歴史国立研究所は、『新右翼』勢力に属する歴史家の著述による高校の歴史教科書の採用を承認しました。
この立場の人々は、韓国のかつての軍事独裁政権の功績を容認する立場をとっています。
さらに韓国の与党は、民間の出版社が発行している教科書を学校ごとに選んでいる現在のやり方を、国内のすべての学校がNIKHが選んだ教科書1冊のみを採用する体制に変更すべきだと主張し始めました。
日本同様、韓国でも教科書選定の場に政治が介入する動きが明らかになってきました。
台湾の教育省も、今年、高校の教科書のための新しいガイドラインを発表しました。
このガイドラインは2015年8月に実施に移される見込みですが、台湾も韓国同様、教科書採用はガイドラインに従わなければなりません。
台湾は1945年まで日本の植民地でしたが、今回のガイドラインの変更について台湾政府は、50年間の日本の統治時代を評価するノスタルジックで不正確な表現を改め、世界基準にあった表現に変更するだけだと語っています。
具体的には『日本の統治』を『日本による植民地支配』という表現に置き換えます。
〈 後篇に続く 〉
http://www.economist.com/news/asia/21606332-which-democracies-join-east-asias-history-wars-textbook-cases-chapter-10?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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『星の金貨プロジェクト』(2014年7月14日)
http://kobajun.chips.jp/?p=19067
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