=国連自由権規約委が最終見解=
◆ 世界が危ぶむ日本の人権
2008年以来6年ぶりに日本の人権状況を審査した国連の自由権規約委員会は「最終見解」で、従来よりも厳しい調子で改善を迫った。国際社会が日本の人権状況に危機感を抱いている表れといえそうだ。(田原牧)
◆ より厳しく複数項目で「遺憾」
「委員会は政府が代用監獄(警察署の留置場)の使用を正当化し続けていることを遺憾とする」
今回の第六回対日審査は十五、十六の両日、ジュネーブの国連欧州本部で行われ、十八人の委員が担当。二十四日に発表された最終見解では、「遺憾(リグレット)」という深刻な言葉が、複数の項目で書き込まれた。
最終見解にはテーマ別に勧告が挙げられ、特に一年以内に日本政府に改善報告を求める課題として、死刑、代用監獄、慰安婦、さらに人身売買の観点から技能実習生の四つが挙げられた。
このほか、次回審査までのテーマとして、新たにヘイトスピーチ(差別扇動表現)の禁止、特定秘密保護法への懸念、福島原発事故の被災者らへの対策などが盛り込まれた。
「遺憾」が使われない場合でも、容赦のない言い回しが目立った。
死刑や代用監獄など刑事司法の問題点については、過去の審査でも廃止が勧告されてきた。今回は袴田巌さんの再審決定に三人の委員たちが触れ、従来よりも厳しい追及がなされた。
日本政府の消極的な改善姿勢に対して、委員会のナイジェル・ロドリー議長(英国)は「日本政府は明らかに国際社会に抵抗しているようにみえる」と苦言を呈した。
さらに注目を集めたのが慰安婦問題だった。日本政府(外務省)は審査で、慰安婦制度を「性奴隷」制とみなすことは不適切であると主張。旧日本軍の慰安婦への関与と強制性を認めた河野官房長官談話の検証の結果として「いわゆる強制連行」は確認できなかったという立場を説明した。
これに対して、ロドリー議長は「(日本政府の立場は)私には理解できない。頭が悪いのだろうか。『強制連行されたのではない』と言いつつ、『意図に反し(て働かされた)』との認識が示されている。これは理解しにくい」と発言。
最終見解も「矛盾した(日本政府の)立場に懸念を表明する」と批判したうえで、「日本軍が犯した性奴隷、あるいはその他の人権侵害に対するすべての訴えは、効果的かつ独立、公正に捜査され、加害者は訴追され、有罪判決が下れば、処罰すること」「被害者を侮辱、あるいは事件を否定するすべての試みへの非難」などの措置を日本が取るよう勧告した。
ヘイトスピーチについては、日本政府の名誉毀損や脅迫などに当たるケース以外は取り締まれないという説明に「差別や敵意、暴力の扇動となる人種的優越あるいは憎悪を唱える宣伝のすべてを禁止し、そのような宣伝を広めるデモを禁止すべきだ」と、新たな規制を求める勧告をした。
特定秘密保護法についても「ジャーナリストや人権擁護者の活動に深刻な影響を及ぼしうる」との懸念が示され、適用対象を狭く定義するよう勧告した。
日本は自由権規約を一九七九年に批准した。委員会勧告には、批准国が国内法を整備しなくてはならないような法的拘束力はない。
日本弁護士連合会自由権規約ワーキンググループ座長の海渡雄一弁護士は「今回の勧告は、日本の人権と民主主義について国際社会が強い危機感を抱いていることの反映だ。勧告に強制力こそないが、日本の対応次第で、世界のこの国に対する評価が変わる。その意味で決して軽視すべきではない」と話している。
『東京新聞』(2014/7/27【ニュースの追跡】)
◆ 世界が危ぶむ日本の人権
2008年以来6年ぶりに日本の人権状況を審査した国連の自由権規約委員会は「最終見解」で、従来よりも厳しい調子で改善を迫った。国際社会が日本の人権状況に危機感を抱いている表れといえそうだ。(田原牧)
◆ より厳しく複数項目で「遺憾」
「委員会は政府が代用監獄(警察署の留置場)の使用を正当化し続けていることを遺憾とする」
今回の第六回対日審査は十五、十六の両日、ジュネーブの国連欧州本部で行われ、十八人の委員が担当。二十四日に発表された最終見解では、「遺憾(リグレット)」という深刻な言葉が、複数の項目で書き込まれた。
最終見解にはテーマ別に勧告が挙げられ、特に一年以内に日本政府に改善報告を求める課題として、死刑、代用監獄、慰安婦、さらに人身売買の観点から技能実習生の四つが挙げられた。
このほか、次回審査までのテーマとして、新たにヘイトスピーチ(差別扇動表現)の禁止、特定秘密保護法への懸念、福島原発事故の被災者らへの対策などが盛り込まれた。
「遺憾」が使われない場合でも、容赦のない言い回しが目立った。
死刑や代用監獄など刑事司法の問題点については、過去の審査でも廃止が勧告されてきた。今回は袴田巌さんの再審決定に三人の委員たちが触れ、従来よりも厳しい追及がなされた。
日本政府の消極的な改善姿勢に対して、委員会のナイジェル・ロドリー議長(英国)は「日本政府は明らかに国際社会に抵抗しているようにみえる」と苦言を呈した。
さらに注目を集めたのが慰安婦問題だった。日本政府(外務省)は審査で、慰安婦制度を「性奴隷」制とみなすことは不適切であると主張。旧日本軍の慰安婦への関与と強制性を認めた河野官房長官談話の検証の結果として「いわゆる強制連行」は確認できなかったという立場を説明した。
これに対して、ロドリー議長は「(日本政府の立場は)私には理解できない。頭が悪いのだろうか。『強制連行されたのではない』と言いつつ、『意図に反し(て働かされた)』との認識が示されている。これは理解しにくい」と発言。
最終見解も「矛盾した(日本政府の)立場に懸念を表明する」と批判したうえで、「日本軍が犯した性奴隷、あるいはその他の人権侵害に対するすべての訴えは、効果的かつ独立、公正に捜査され、加害者は訴追され、有罪判決が下れば、処罰すること」「被害者を侮辱、あるいは事件を否定するすべての試みへの非難」などの措置を日本が取るよう勧告した。
ヘイトスピーチについては、日本政府の名誉毀損や脅迫などに当たるケース以外は取り締まれないという説明に「差別や敵意、暴力の扇動となる人種的優越あるいは憎悪を唱える宣伝のすべてを禁止し、そのような宣伝を広めるデモを禁止すべきだ」と、新たな規制を求める勧告をした。
特定秘密保護法についても「ジャーナリストや人権擁護者の活動に深刻な影響を及ぼしうる」との懸念が示され、適用対象を狭く定義するよう勧告した。
日本は自由権規約を一九七九年に批准した。委員会勧告には、批准国が国内法を整備しなくてはならないような法的拘束力はない。
日本弁護士連合会自由権規約ワーキンググループ座長の海渡雄一弁護士は「今回の勧告は、日本の人権と民主主義について国際社会が強い危機感を抱いていることの反映だ。勧告に強制力こそないが、日本の対応次第で、世界のこの国に対する評価が変わる。その意味で決して軽視すべきではない」と話している。
『東京新聞』(2014/7/27【ニュースの追跡】)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます