酒井治が残したものは絵だけでなく、美術書や国内外の美術館を訪れた時の図録やパンフレットなどが本棚に並んでいます。酒井治は読書家でもあり毎日本を読んでいました。その蔵書も本棚に積まれており、私は時々その本や画集などを開いて読んでいます。今読んでいる本は、林望の「芸術力の磨き方」です。その中に赤ペンで線を引いた箇所がありました。
「日常のルーティンワークから抜け出て、未知の何かと出会い、観察し、新たな自分自身を発見する。その発見の喜びこそが、芸術という遊びの楽しさではないでしょうか。で、そういう魂を持つことは、どのような日常を送っている人にとっても等しく大切だろうし、また可能だろうと思うのです。芸術は決して遠くにあるのではありません。」
この内容を見ると酒井治が共感したのも頷けます。岩国で行ってきたパステル展に参加者を呼びかけ、岩国の文化を広めたいという思いと一致しています。絵を描くことや絵を鑑賞することが生活の一部になっていくことを願っていたのではないかと思う。
今回の絵は前回紹介した絵と同時期に描かれた物です。海外に行き始めイマジネーションョンが沸き起こった頃です。