コニー・ウィリス「ブラックアウト」
コニー・ウィリスの新作。
2段組750ページ強のボリューム。1ページあたり約3,36円のコストパフォーマンス。
「ドゥームズデイ・ブック」「犬は勘定に入れません ・・・」に続く、オックスフォード大学史学部シリーズの第3長編。今回の「今」は2060年。歴史研究のため第二次世界大戦下1940年のそれぞれ違う場所、時間に送り込まれた3人の航時史学生が主要な登場人物。戦時下の疎開児童を観察する目的で地方の館のメイドとして、ロンドン空襲下の人々の生活を研究するためにオックスフォードストリートの百貨店の売り子として、歴史的な敗走となるダンケルクの撤退での英雄を研究するためにアメリカの新聞記者として1940年に降り立ち、目的を達した後速やかに2060年に舞い戻るはずであったが。
いきなりのコニー・ウィリス的展開でのスタート。会いたい人に会えない・・・時間のやりくりが出来ない・・・探し物は見つからない・・・次から次へとジャマ者が現れる・・・。そんなイライラ感に付き合っているうちに、読者はページを数百ページもめくる破目に・・・。
空襲下のロンドンでタフに生活する人々の描写は頼もしい。地下鉄の駅ホームをシェルターとして活用し、百貨店の営業等日常の暮らしを可能な限り保とうと各自が必死で努力する。どんなに爆弾が落ちようと、どんなに交通がマヒしようと職場での遅刻、欠勤はご法度なんだ。
今回の作品、冒頭以降「今」が何にも出てきません。つまり「今」と遮断されてしまった1940年の3人と同様に読者も「今」を知ることが出来ないのです。
さて、それなりの冒険を経て3人はロンドンに。そして「彼」もまた1940年のロンドンに・・・。役者もどうやら揃った様、風呂敷もかなり広がって部分的には少し破れもちらほら・・・、ってとこで後半は「オールクリア」として近日中刊行予定だよ。こっちの方がページ多いんだって。
セントラル線等深度の高い地下鉄ホームは防空壕として利用されていました
ロンドン空襲を描いたものとして→