ロンドンと言えばミュージカル。昼間、美術館巡りなどで足が棒になっていても夜は劇場街に繰り出さないと・・・・。
私が最初に体験したミュージカルは89年の「メトロポリス」。これは戦前のドイツで作られたフリッツ・ラング監督の同名映画のミュージカル版ですが、大規模な舞台装置が日本でも評判で、当時絶対見に行きたくって、確か高い手数料を払って日本でチケットを手配して行った覚えがあります。劇場はピカデリー・サーカスに程近いピカデリー劇場でした。
劇場の楽しみは開演前から始まります。早めに入場しBARで飲み物を楽しむも良し、パンフレットで予習するも良し、仲良し同士時間ぎりぎりまでロビーでだべるも良し、みな思い思いに開演ベルまでを楽しんでます。
さてその時の席ですが、確かドレスサークルと呼ばれる2階席中央最前列のかなりいい席でしたが、予想に反してあまり客が入っていないのです。全体で7割程度の入りでしょうか・・。これなら何も手数料払ってチケット手に入れなくても、ロンドンで十分入手出来たどころか、ハーフプライスチケットでも手に入ったかもと思うとちょっとがっかりです。でも希望の演目を希望の日時と席で観れるのですから、良しとしましょう。
「メトロポリス」は地上の楽園に暮らす資本家と、その圧制に耐え扱き使われる地下の労働者たちの物語。マシンに支配され、過酷な労働を強いられる人々。ひょんなことから労働者階級の娘が出てはならない地上に迷い込み、資本家の息子がそれを見て恋に落ちる。資本主義の象徴としての重量感あるマシンのセットが冒頭から観客を圧倒します。絶えず響く蒸気の音と金属音。場面が変わり地上のセットに変わると、次々に天井から違うゴンドラがステージに下りてきます。そしてクライマックスはサイボーグロボットと人間が一瞬の間に入れ換わるというイリュージョン。舞台を目で楽しむという意味ではよく出来た演目でしたが、肝心の音楽がピンと来ません。ラストはそれなりに感動的なのですが、劇場を出た後いつまでも口ずさんでしまうというほどではありませんでした。でも最初の体験としては「楽しい」の一言でした。
それにしてもイギリス人は幕間休憩の時にアイスクリームを食べるのが大好きなんですね。客席での飲食はもちろんいけませんが、休憩時間のみ売り子さんがアイスクリームを売りに来ます。大きな身体の紳士が嬉しそうにアイスを買いに並んでいる光景は微笑ましくもあります。
劇場遊びを覚えてしまった私は、次の日大きな過ちを犯すことに。
もう一つミュージカルを観て帰ろうと、次の日の朝、チャリング・クロス・ロードの何軒も連なるチケット・エージェンシーの一つに入って見ました。出てきた店員は何とスキンヘッドに鼻ピアスの兄ちゃん・・・。しかも「ハロロー」とかなりの巻き舌です。本能的に「やば!」と思いましたが、聞くだけ聞こうと「レ・ミゼラブルの今夜のチケットあるか」と尋ねると、あっさり「あるよ。42ポンド。手数料4ポンド」と言うじゃないですか。
じゃあ、いただきましょうと金を払うと、彼は何やらカードの裏に番号を書き込み「これを5時にここに持ってきて。チケットはその時渡す」とのこと。
半分騙されたかも・・と思いつつも、ちょっとスキンヘッドが怖かったのでそのままカードをもらって店を出ました。
夕方5時になり、再び店に・・。
朝のスキンヘッド兄ちゃんが「今日はチケットを渡すのが7時になった。7時にまた来てくれ」と・・・
あー・・46ポンドが・・・でも・・
で、7時前に再度店に行くと、今度は大勢の人が店内にいます。アメリカ人夫婦、イタリア人グループ?フランス人女の子二人組み・・そして私・・・
スキンヘッド兄ちゃんは、しきりに時間を気にしながらカウンターの中でイライラしています。
ここでやっと理解しました。
このエージェントは劇場で毎日出るキャンセルチケットを入手し転売するところだったのです。その日に限ってキャンセルが予定より出ないのでしょうか、未だにチケットが届いてないようです。
そうこうするうちに、髪がおっ立ったケバイ化粧のお姉ちゃんが帰ってきました。スキン兄ちゃんと目があうと、お姉ちゃん肩をすくめて渋い顔をします。
明らかに良い席が確保出来てないことがわかります。
スキン兄ちゃんは書類に目を通すとすかさず「グッドシート!グレート!」と呟きます。(演技が下手すぎ!)
さてそれからが大変です。入手できたのはかなり後ろの席の模様。皆が払ったのは一番高いストゥール席の料金。当然ながら、英語が得意?なアメリカ人が抗議役を任されるのですが、スキン兄ちゃん、その手のクレームには慣れてるようで、「金は返せない。この席が嫌なら観なけりゃいい。そろそろ開演だぜ(翻訳想像)」と時計を指差すばかり・・・
みんなスケジュールが限られたツーリストばかり・・、やっぱり今夜「レミゼ」が観たい!結局、しぶしぶ条件を呑むことに。
と、ここでまた問題が・・。
チケット屋にある書類は正式なチケットではなく、劇場で引き換えなければならないバウチャーのようなもの。とにかく「レミゼ」が上演される「パレス劇場」まではこの面子でいっしょに行かなければならないことに。しかも私以外はパレス劇場の場所がいまいち分かっていないという事態に・・・。
「ボ、ボクガパレスシッテマス・・」仕方なく私がこの哀れなツーリストを引き連れパレス劇場に案内するはめに・・。劇場までの道中、アメリカ人の奥さんが旦那に言ってます。「何でもっと強く言ってやんないのよ。だからイギリス人にしてやられるのよ。(翻訳想像)」 旦那「仕方ないだろ。もう始まるんだから。ほらあのジャップについて行かないと・・・(翻訳かなり創作)」
ようやくこの多国籍チームが劇場に着いたのは開演5分前でした。窓口でチケットと交換すると、私の分はフランス人女の子二人組みとの連番一枚になっており、劇場に入ってもこの二人組みといっしょの行動です。それもほとんど天井桟敷・・・。階段入り口もストゥール席とかサークル席とは別のものになっており(明らかに金持ちと下層階級を隔てる考えで・・・しかも天井桟敷には休憩時に楽しむBAR自体がありません・・。)、ひたすら上に上に上りやっとこさ席に着くことが出来た次第でした。
舞台ははるか奈落の底にある感じ。それに上から覗き込むアングルですから、有名なバリケードのシーンでは向こう側の裏方まで見えちゃう始末。
でも、それを補っても余りある3時間半の迫力のステージでした。ただ「レミゼ」はかなり英語力を必要とします。始まる前に疲れ果てていた私にはちょっと難しいところもありました。でも隣のフランス人二人娘は最後のエンディング(再び立ち上がるフランス人民たちの場面)では感動して泣きじゃくっていましね。
劇が終わったのは11時過ぎ。フランスギャルたちと会話を楽しむ語学力もない私は、すごすごとパレス劇場を後にしたのでした。
劇場は変わりましたが、20年以上も続くロングラン。まさにメガミュージカル。
私が最初に体験したミュージカルは89年の「メトロポリス」。これは戦前のドイツで作られたフリッツ・ラング監督の同名映画のミュージカル版ですが、大規模な舞台装置が日本でも評判で、当時絶対見に行きたくって、確か高い手数料を払って日本でチケットを手配して行った覚えがあります。劇場はピカデリー・サーカスに程近いピカデリー劇場でした。
劇場の楽しみは開演前から始まります。早めに入場しBARで飲み物を楽しむも良し、パンフレットで予習するも良し、仲良し同士時間ぎりぎりまでロビーでだべるも良し、みな思い思いに開演ベルまでを楽しんでます。
さてその時の席ですが、確かドレスサークルと呼ばれる2階席中央最前列のかなりいい席でしたが、予想に反してあまり客が入っていないのです。全体で7割程度の入りでしょうか・・。これなら何も手数料払ってチケット手に入れなくても、ロンドンで十分入手出来たどころか、ハーフプライスチケットでも手に入ったかもと思うとちょっとがっかりです。でも希望の演目を希望の日時と席で観れるのですから、良しとしましょう。
「メトロポリス」は地上の楽園に暮らす資本家と、その圧制に耐え扱き使われる地下の労働者たちの物語。マシンに支配され、過酷な労働を強いられる人々。ひょんなことから労働者階級の娘が出てはならない地上に迷い込み、資本家の息子がそれを見て恋に落ちる。資本主義の象徴としての重量感あるマシンのセットが冒頭から観客を圧倒します。絶えず響く蒸気の音と金属音。場面が変わり地上のセットに変わると、次々に天井から違うゴンドラがステージに下りてきます。そしてクライマックスはサイボーグロボットと人間が一瞬の間に入れ換わるというイリュージョン。舞台を目で楽しむという意味ではよく出来た演目でしたが、肝心の音楽がピンと来ません。ラストはそれなりに感動的なのですが、劇場を出た後いつまでも口ずさんでしまうというほどではありませんでした。でも最初の体験としては「楽しい」の一言でした。
それにしてもイギリス人は幕間休憩の時にアイスクリームを食べるのが大好きなんですね。客席での飲食はもちろんいけませんが、休憩時間のみ売り子さんがアイスクリームを売りに来ます。大きな身体の紳士が嬉しそうにアイスを買いに並んでいる光景は微笑ましくもあります。
劇場遊びを覚えてしまった私は、次の日大きな過ちを犯すことに。
もう一つミュージカルを観て帰ろうと、次の日の朝、チャリング・クロス・ロードの何軒も連なるチケット・エージェンシーの一つに入って見ました。出てきた店員は何とスキンヘッドに鼻ピアスの兄ちゃん・・・。しかも「ハロロー」とかなりの巻き舌です。本能的に「やば!」と思いましたが、聞くだけ聞こうと「レ・ミゼラブルの今夜のチケットあるか」と尋ねると、あっさり「あるよ。42ポンド。手数料4ポンド」と言うじゃないですか。
じゃあ、いただきましょうと金を払うと、彼は何やらカードの裏に番号を書き込み「これを5時にここに持ってきて。チケットはその時渡す」とのこと。
半分騙されたかも・・と思いつつも、ちょっとスキンヘッドが怖かったのでそのままカードをもらって店を出ました。
夕方5時になり、再び店に・・。
朝のスキンヘッド兄ちゃんが「今日はチケットを渡すのが7時になった。7時にまた来てくれ」と・・・
あー・・46ポンドが・・・でも・・
で、7時前に再度店に行くと、今度は大勢の人が店内にいます。アメリカ人夫婦、イタリア人グループ?フランス人女の子二人組み・・そして私・・・
スキンヘッド兄ちゃんは、しきりに時間を気にしながらカウンターの中でイライラしています。
ここでやっと理解しました。
このエージェントは劇場で毎日出るキャンセルチケットを入手し転売するところだったのです。その日に限ってキャンセルが予定より出ないのでしょうか、未だにチケットが届いてないようです。
そうこうするうちに、髪がおっ立ったケバイ化粧のお姉ちゃんが帰ってきました。スキン兄ちゃんと目があうと、お姉ちゃん肩をすくめて渋い顔をします。
明らかに良い席が確保出来てないことがわかります。
スキン兄ちゃんは書類に目を通すとすかさず「グッドシート!グレート!」と呟きます。(演技が下手すぎ!)
さてそれからが大変です。入手できたのはかなり後ろの席の模様。皆が払ったのは一番高いストゥール席の料金。当然ながら、英語が得意?なアメリカ人が抗議役を任されるのですが、スキン兄ちゃん、その手のクレームには慣れてるようで、「金は返せない。この席が嫌なら観なけりゃいい。そろそろ開演だぜ(翻訳想像)」と時計を指差すばかり・・・
みんなスケジュールが限られたツーリストばかり・・、やっぱり今夜「レミゼ」が観たい!結局、しぶしぶ条件を呑むことに。
と、ここでまた問題が・・。
チケット屋にある書類は正式なチケットではなく、劇場で引き換えなければならないバウチャーのようなもの。とにかく「レミゼ」が上演される「パレス劇場」まではこの面子でいっしょに行かなければならないことに。しかも私以外はパレス劇場の場所がいまいち分かっていないという事態に・・・。
「ボ、ボクガパレスシッテマス・・」仕方なく私がこの哀れなツーリストを引き連れパレス劇場に案内するはめに・・。劇場までの道中、アメリカ人の奥さんが旦那に言ってます。「何でもっと強く言ってやんないのよ。だからイギリス人にしてやられるのよ。(翻訳想像)」 旦那「仕方ないだろ。もう始まるんだから。ほらあのジャップについて行かないと・・・(翻訳かなり創作)」
ようやくこの多国籍チームが劇場に着いたのは開演5分前でした。窓口でチケットと交換すると、私の分はフランス人女の子二人組みとの連番一枚になっており、劇場に入ってもこの二人組みといっしょの行動です。それもほとんど天井桟敷・・・。階段入り口もストゥール席とかサークル席とは別のものになっており(明らかに金持ちと下層階級を隔てる考えで・・・しかも天井桟敷には休憩時に楽しむBAR自体がありません・・。)、ひたすら上に上に上りやっとこさ席に着くことが出来た次第でした。
舞台ははるか奈落の底にある感じ。それに上から覗き込むアングルですから、有名なバリケードのシーンでは向こう側の裏方まで見えちゃう始末。
でも、それを補っても余りある3時間半の迫力のステージでした。ただ「レミゼ」はかなり英語力を必要とします。始まる前に疲れ果てていた私にはちょっと難しいところもありました。でも隣のフランス人二人娘は最後のエンディング(再び立ち上がるフランス人民たちの場面)では感動して泣きじゃくっていましね。
劇が終わったのは11時過ぎ。フランスギャルたちと会話を楽しむ語学力もない私は、すごすごとパレス劇場を後にしたのでした。
劇場は変わりましたが、20年以上も続くロングラン。まさにメガミュージカル。
実は娘がロンドンでメトロポリスのショーに主演しています。オフウエストエンドですが、批評家たちからのリビューが高評価だったので、もし、ロンドンにいらっしゃるようでしたら、是非見に行ってください。
こちらの投稿はかなり前なのですね、、、。失礼しました。
ですが、一応紹介させていただきますね。
思わず日本人の方の1989年のショーのリビューを見て興奮して投稿させていただきました。(o^^o)
https://www.facebook.com/MetropolisTheMusical/