英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

ダルジール、神になる

2011-09-30 | イギリス


レジナルド・ヒル「骨と沈黙」

 

「午前零時のフーガ」が面白かったので連ヒルです。
この作品は90年の発表。
90年はサッチャーの時代ですね。

泥酔したダルジールが自宅裏の隣家の窓を見ると、そこには金髪女性が裸で・・・、次の瞬間銃声が響き・・・、飛び込んだダルジールが見た現場とは・・・。食い違う供述、はたしてダルジールの目撃したことは証拠となるのか。続いて起こる関係者の逃走・・・。
ダルジール宛に自殺予告の手紙を送り続ける謎の女性。自殺予告だけでは警察は動けない。でも手紙に殺人事件に関する記述があったら話は別。
魅惑的なアジア系女性、チャンが進める聖史劇プロジェクト。チャンは神の配役にダルジールを所望・・・。
署長から捜査の打ち切りを告げられるダルジールであったが、絶妙な勘働きで新たな事実を見つけ出す、しかし容疑者の方が一枚上手か「殺人犯」としてのしっぽは出さない。
複雑なラインが交錯するが、展開はあくまでスピーディーかつスムース。扱われる事件もけっこうエグイものであるが、ヒルが描くとドライかつライトな味わい。

ラストは、パスコーが手紙の真相を掴む。
「そう来たか、あそこが伏線だったのか」 

 

 

 


秋の小旅行

2011-09-28 | 日常



17日からの3連休は三瓶、松江に。


今回の小旅行、1泊目は三瓶のキャンプ場でケビンに泊まり、2泊目は松江温泉でという計画。
台風の接近で天気が心配でしたが、思い切って出発です。
途中まで雨模様でしたが、三瓶につくころには青空もちらほら。


まず訪れたのは「はないかだ」。以前も楽しんだ蕎麦をいただきます。
ここの蕎麦はエッジが立ってて美味しいのだ。土日祝(冬場はクローズド)限定営業です。


蕎麦だけでは満腹感が・・・・
で、ちと移動して「三瓶バーガー」をパクリ。


お腹もいっぱいになったので、しばし散策・・・。



蜘蛛ってやっぱ気持ちが悪い・・・



いつもこのベンチで写真撮ってるよね

2007年の三瓶は→
2008年の三瓶は→

キャンプ場に入り、バーベキューの火起こししていたら、雨がポツリポツリ。
結局天気予報通りの土砂降りに。
何とかケビンの軒先でバーベキューをやりました。

次の日、松江に向けて出発しようとすると・・・・、
フロントガラスに「亡命未遂者」を見つけました。

尺取虫くんです
丁重に断念していただきました。



さて、松江に着いた。
仕事では何回も来ている松江ですが、プライベートでは初めてです。
もうお昼だし、何食べようかな・・・。
やっぱ出雲蕎麦でしょう! と、「きがる」に寄ります。

ここは、観光客も多く訪れますが、地元の人もよく利用する蕎麦やです。
地元民はここでうどんも食べます。
2日続けての蕎麦に娘は不平たらたら・・・。

この日は蒸し暑かった。
近くの塩見縄手を見物です。



ラフカディオ・ハーンの旧居です


松江城です
コンクリートじゃない昔のままの天守閣です


あっぱれくんです 

この日のお宿は、松江しんじ湖温泉・ホテル一畑。
一畑グループは、鉄道、バス、百貨店、ホテル等々を牛耳る一大コングラマリットなのです。


一畑電鉄松江しんじ湖温泉駅前にある足湯コーナーです
松江温泉の元湯は70度以上の高温

最終日は霧雨で肌寒い1日に。
まずは、堀川下りに。

小船に相乗りして松江城の内堀、外堀を巡ります。
船頭さんは高校の先生のような方でした・・・。


途中、低い橋をくぐるときには、屋根が倒れます。

その後、カラコロ工房でステンドグラスの工作体験をやって帰りました。
天気が良ければもっと楽しめたのにね。


娘が作ったステンドグラス壁掛けです
(ほとんどお店の方に手伝っていただいたものですが)


 


教会で奏でられるバッハのフーガ

2011-09-20 | イギリス


レジナルド・ヒル「午前零時のフーガ」


既に評価の定まったシリーズ物に遅ればせながら参入するのはちょっと気恥ずかしいものです。まだ読でなかったんですよ。
ダルジール警視と彼の部下パスコー警部、ウィールド部長刑事らが活躍するシリーズの最新翻訳です。時に感情を爆発させながら自由奔放に捜査を進行する巨漢ダルジール。対してパスコーは大学出でのインテリで冷静にスマートに職務にあたり、ダルジールと対立することもしばしば。でも部下は皆、ダルジールを恐れながらもどこか慕っているのですね。
この作品、朝8時ごろから夜中の零時までのわずか数十時間で完結します。大怪我からの復帰間もないダルジールは、あろうことか日曜日を月曜日と勘違いして署に車を走らせるのですが、その車を追う金髪の女性が一人、そしてその女性を追う2人組みの男女・・・。単にスピード感だけでなく、登場人物の過去が次第に語られるなど重層的に展開し読み応えがありました。ダルジールの暴言、下卑たジョークも楽しく、イギリスでは2009年発刊ですから、ブラウン首相やキャメロン党首への当てこすりも笑わせてくれます。
作者ヒルはイギリス文学に精通しているのか頻繁に引用が登場、それが全体の知的レベルを維持させているのかな。

舞台は中部ヨークシャー。お下品警部代表フロストと違って、このダルジール警視は身体はどでかいですが、ファッションセンスはなかなかな様です。

これははまってしまう予感が・・・・。


 


秋になったけど・・・

2011-09-15 | 日常

 


まだまだ暑いですね。
今年の夏は、いつにもましてどこにも行かなかったような・・・。
いや、行った、行った。
どこに行った?



大分県宇佐市にある岳切渓谷。
一枚岩の岩盤で作られた川床が2キロにわたって続きます。
水深は深くても踝ぐらい。
小さい子でも安心な清涼スポット。

 

 

 

 


予習が必要だった・・・・・

2011-09-07 | 日常

 

8月の夏休みのある日、嫁が朝からこう曰まった。
「今日、昼から友達が来るから、どこかで時間潰してくれない」
「いいよ、久しぶりに映画でも観ようかな」
ってことで昼食後近くのシネコンに。

どれを観ようかな・・・
と上映ポスターをながめてみると、
「カンフーパンダ」「ポケモン」「ハリーポッター」・・・
夏休みなのでどれもお子ちゃまプログラムばかりじゃないですか。
もう少し大人の鑑賞に・・・
で見つけたのがこれ、
「ツリー・オブ・ライフ」です。
出演は、ブラッド・ピットにショーン・ペンか
カンヌで賞も取ってるし・・・
ちょっとシリアスな親子を描いたドラマかな?
まあ、時間を潰すのが目的だから、入っちゃえ。
売店でコーラを買って館内へ。
「ん?お客が少ないぞ。まあ、平日だからこんなもんか」
観客は女性中心に12組程度かな。
さあ、始まったぞ!

縦横に動くカメラ、短いカットの連続で斬新な印象・・・
幸せいっぱいの家族にもたらされた悲しい出来事とは・・・

次の瞬間、スクリーンには火炎の渦が・・・
そして星雲の映像が・・・馬頭星雲か・・・
続いて火山の噴火が次から次に・・・・
溶岩はやがて海に流れ込み・・・・
海中では生命が生まれ・・・

何か嫌な予感がしてきたぞ・・・
2001年宇宙のたびのラストの様な・・・

そして
やっぱり出た!
恐竜だ!
ブラッドピットは!ショーン・ペンは!どこにいっちゃったんだ!
まさか、次は猿人が登場するのか。

この段階で、一組が席を後に・・・

お話は再び家族の話に戻るのですが、
いつ恐竜や星雲になっちゃうのかが心配で話に集中できませんよ。

ほら、前の2人組みも外にでちゃったよ。

よく考えると、監督の意図は分かります。
タイトルの意味に早く気づいておけばよかったんですね。

家に帰ると
「面白かった?映画」と嫁。
「面白かったのは、途中で何人も出て行くのよ、この映画」
「何それ?」








待て、しかして希望せよ!

2011-09-05 | イギリス

アレクサンドル・デュマ「モンテクリスト伯」

 

ジェーン・オースティンの時代、対岸のフランスでは・・・と見てみると、そこにはナポレオンが君臨し、イギリスは彼の力を削ぐべく大陸封鎖を続ける日々。制海権を握るイギリス海軍はホーンブロワ艦長をはじめ封鎖任務を続けフランスへの物流を妨害・・・。こうした抵抗により皇帝となったナポレオンも次第と力を失いエルバ島に流されてしまうのですが・・・・・。ここでナポレオンはへこたれない。今一度権力を自分に委ねよとエルバ島を脱出しパリを目指すことに・・・・。
ここからがお話のスタートです。
「岩窟王」です。でも、最後まで読んだ記憶はないなあ・・・。
7分冊の岩波文庫版、ガッツリ系読書にぴったりな分量ですが、世の評判に違わず面白さ満点の物語ですね。
有能な船乗りダンテスは、その光ある前途に嫉妬する若者たちによって陰謀がでっち上げられ、そして保身に注力する検事によって冤罪を帰され監獄に入れられてしまう。そこを出る時は死んだ時だけだと言われる監獄からの決死の脱出、監獄で出合った司祭から教えられた財宝の発見・・・。大金持ちとなったダンテスはモンテ・クリスト伯と名乗り、かつて彼を陥れた輩に次々と復讐するためにパリの社交界に登場するのでした。と、誰でもが知っている展開ですが、ここまで多角的、重層的な復讐を行っていたとは初めて知りましたよ。いきなり本人の前に現れて、「はーい、僕ダンテス、仕返しだよ!バキューン!」ではないのだ。本人はもちろん、妻子や両親までも巻き込んでの復讐劇には、読者としてちょっと引いてしまう場面も・・・。でも、ダンテス自身もここでは引いてしまい(行き過ぎではないだろうかと自問するのですね・・)、かつて自分が受けた悲劇をあらためて検証し、復讐の正当性を評価するくだりはなかなかのもの。自殺に追いやる、発狂させる、恐怖に打ちのめす・・・。良い子のみんなは真似しちゃダメですよ。
ダンテスの見つけた財宝も超ド級ですが、そのお金の使い方も半端じゃない。復讐される側も皆さんとっても出世なさっている。戦争での功績で伯爵となった者、銀行家として大成功し男爵となった者、検事総長として上りつめた者。
かつての許嫁メルセデスと単純によりを戻さないところもいいよね。若く絶世の美女であるエダと遠く旅立つっても男のロマンだよね。

最後の言葉
「待て、しかして希望せよ!」
追い詰められた日本人にちょっと合う言葉か・・・。

くどくど考えず、今一度スケールの大きなこの作品を読んでみないか!