英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

苦手な人もいるでしょうが・・・

2007-08-23 | イギリス
サラ・ウォーターズ「夜愁」


原題は「The Night Watch」
これがミステリーのジャンルに入るのか?!というのが読み初めの素朴な感想でしたが、ラストが想像できない!という意味で立派なミステリーなのでしょうか。
物語は戦災からの復興が急ピッチで進む1947年のロンドンから始まります。どこか秘めた過去を持っているような登場人物たち。互いに距離感を保ちながらもデリケートな人間関係を築いており、どこか達観した感があります。続く章は、灯火管制真只中の44年のロンドン、そして最後の章は41年のロンドン・・・。そうこの物語は決して先に進むことが無く、過去に遡るだけなのです。ですからラスト(始まり)にたどり着いた時、思わず「えっ!これで終わり?」って気分になってしまいます。それだけに47年以降の彼ら彼女らの人生が心配で心配で・・・・。
同性愛、不倫、良心的兵役拒否、自殺、刑務所暮らし・・・大っぴらに語れず社会から抑圧されるカテゴリーの人々が、空襲が続く夜のロンドンで震えながらも何を求めていたのか・・・・。
戦時中の防空体制、配給制度、地下鉄駅を防空壕代わりにする人々等々当時の暮らしぶりも良く描かれています。

古本屋ってやっぱり怪しい・・・

2007-08-02 | 日常
たまにはアメリカンな読書もいいものです。大口開けて喰らいつきどんどん飲み下していく喜び・・・。ホットドックをコーラで流し込む、冷ぶっかけうどんを噛まずに流し込む、トロロ飯を何杯もお代わりする・・・・・。そんな喉越しがよく胃にもたれないミステリーならこの人の新作がいいかも・・・・


ジョン・ダニング「災いの古書」


古本屋クリフものシリーズの4作目です。前作「失われし書庫」がちょっとがっかりだったので期待しちゃいます。
物語の導入は極めて分かりやすくなっています。既に殺人は起こっており、犯人は自白しているという設定。クリフくんは相変わらず頭に血が上るタイプで事件に関係ない騒動を引き起こしちゃいます。古書に関する薀蓄は途中まで控えめですが中段あたりから出てきますからご安心を。(古書フェアの記述はなかなか興味深いものです)
最後はなんかサイコホラー的なおまけもついてのエンディングです。
どんな場所でもすいすい読めちゃう作品です。ちなみに私はお好み焼屋で「広島風お好み」をほおばりながら読了しました。

原題は「THE SIGN OF THE BOOK」 サイン本にまつわるお話です。



熱い気持!

2007-08-01 | イギリス

小田実「何でも見てやろう」

小田実さんが亡くなりました。
テレビの番組で、人を小馬鹿にしたような関西弁で平和についてしゃべり続けている姿が印象的でした。開高健も逝っちゃったし・・・。
私が持っているのは79年発行の講談社文庫版。彼が世界中を旅した時からは十数年後の読書でしたが、小さいポイントでぎっしり詰まった活字とボリュームあるページをワクワクしながら読んだ記憶があります。書き手も熱ければ、読み手も熱かった。
その後の沢木耕太郎の「深夜特急」にも繋がる作品です。
ぱらぱらと読み返してみて、ロンドンにはドイツから多くの「ええとこの」お嬢さんが来ているというくだりは笑いました。テムズ河畔で、あの大きな顔でどうやってドイツ人女性と語らっていたのでしょうか・・・。