英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

釣りの指南書

2006-10-31 | イギリス
アイザック・ウォルトン「釣魚大全」

原題は「The Complete Angler or Contemplative Man's Recreation(完全なる釣り師、すなわち瞑想にふける者のレクリエーション)」。
1653年に初版が出た本書は、釣りの指南書としてあまりにも有 名であるが、その第5版(1676)の完訳本です。お話は釣り師と鷹師、狩猟家のそれぞれの自慢話から始まり、博物学的な様々な記述と牧歌的な詩を随所 に織り交ぜながら、基本的な釣りの楽しみ方から魚種別の釣り方と調理方等が語られていきます。当時のカントリーライフの嗜好と合わせ、イギリス人が釣りを 一つのスポーツ、あるいは文化として捕らえようとする考えがよく理解できます。この時代あたりからフライフィッシングが一般的に確立し、川の管理という概念が生まれ魚種の根絶を防ぐための禁漁期が設けられたのです。
現代から見れば多少なりとも理屈っぽい点、不可思議な点もありますが、水面に糸を垂れる魅力の大きさに全ての釣り人の共感が得られるでしょう。そう、釣りとは瞑想的なものではなくちゃいけないのですよ。

ちなみに釣の世界には厳然たるヒエラルヒーがあります。
最上位に君臨するのが
フライフィッシング(ドライ)
続いて
フライフィッシング(ウェット)
フライフィッシング(ニンフ)
ルアーフィッシング(ハードルアー)
ルアーフィッシング(ソフトルアー)
と来て、最下層が
餌釣り全般となります。
(餌釣りの中でも海の舟釣りが一番下のアンタッチャブル・・・・・、だって自分の意思でポイントを決めないから)あくまで私の独断ですが・・・
映画「リバーランド・スルー・イット」の中でフライをやるブラピが餌釣りをしようとする者を嘲る場面がありましたけど上記の階級意識のなせる業です。
また、アメリカ大統領だったカーターが、池で釣りの最中に「うさぎ」に襲われるという事件があったのですが、その時撮られた写真にはカーターがしっかりウキがぶら下がった(つまり餌釣り・・)竿を握っていた様子が写っておりました。以来彼はスポーツマンではない!ジェントルマンではない!というレッテルが貼られたとか・・・。


とか何とか言って、私もよく餌釣りを近くの波止でやってます。

今年のラストナイト

2006-10-30 | イギリス
先々週の土曜日にBSで放映された今年の「プロムス、ラストナイト」。録画しながらも3時半まで観てしまいましたが、相変わらずのお祭り騒ぎで歌の世界での大英帝国が満喫できました。
今年はソリストにドミートリ・ホロストフスキー(バリトン)とヴィクトリア・ムローヴァ(バイオリン)を迎え、ロシアをテーマにしたプログラムといつもの愛唱歌メドレーとなっていました。ホロストフスキーは眼光鋭いなかなか存在感ある歌いっぷり。ムローヴァも2部では背中の広く開いた衣装と変幻自在なテクニックで聴衆を湧かせておりました。
実はこの放映を観る前に昨年の録画を観ていたのですが、可笑しいことにアリーナ席に同じ聴衆が何人もいます。毎年来ているのでしょうか、同じジャケットを着ている人もいます。なかなか入手困難と言われる土間席のチケットをどうやって・・・。
それから、昨年からちょっと気になっていたのですが、 「トム・ボウリング」の哀しい調べを奏でているチェロの女性奏者がいいですね。会場がどんなに騒いでもずっとクールに構えています。BBC交響楽団のビル・ワイマンといったところでしょうか。
あと、昨年に比べてお祭り騒ぎのマナーがちょっと今年は良くなかったような・・・。少なくとも曲の始まりの部分と指揮者のスピーチの最中は鳴り物抜きで謹聴しないとね。まあ、よその国のことですからいいんですけど。

今年のプログラムは

第1部
1. 祝祭序曲 作品96 ( ショスタコーヴィチ作曲 )
2. 歌劇「イーゴリ公」 から
   眠りも憩いもなく ( ボロディン作曲 )
3. 歌劇「エルナーニ」 から
   偉大なる神よ ~ 若き日々よ ( ヴェルディ作曲 )
4. 歌劇「ネロ」 から
   結婚の歌 ( ルビンシテイン作曲 )
5. ヴィーヴォ ( コリン・マシューズ作曲 )
6. バイオリン協奏曲 第2番 ト短調 作品63 ( プロコフィエフ作曲 )
7. 歌劇「タンホイザー」 から
   大行進曲「歌の殿堂をたたえよう」 ( ワーグナー作曲 )
 
第2部
8. 行進曲「すべての労働者を呼び集めて」 ( コーツ作曲 )
9. 歌劇「カルメン」 から
   闘牛士の歌「諸君の乾杯を喜んで受けよう」 ( ビゼー作曲 )
10. モスクワの夕べ ( ソロヴィヨフ・セドイ作曲 )
11. 大騒ぎ ( ソニア・ポセッティ作曲 /マシュー・バーレイ編曲 )
12. 行進曲「威風堂々」第1番 ( エルガー作曲 )
13. イギリスの海の歌による幻想曲
I 「小粋なアルトゥーサ」
II 「トム・ボウリング」
III 「ホーンパイプ」
IV 「夜もすがら」 / 中継:シングルトン・パーク (スウォンジー)
V 「スカイ・ボート・ソング」 / 中継:グラスゴー・グリーン (グラスゴー)
VI 「ロンドンデリーの歌」 / 中継:ベルファスト 市庁舎前広場 (ベルファスト)
VII 「ホーム・スイート・ホーム」
VIII 「見よ 勇者は帰る」
IX 「ルール・ブリタニア」
14. エルサレム ( パリー作曲 /エルガー編曲 )
15. イギリス国歌 ( ウッド編曲 )
16. 蛍の光 ( スコットランド民謡 )


バリトン : ドミートリ・ホロストフスキー
バイオリン : ヴィクトリア・ムローヴァ
合 唱 : BBCシンフォニー・コーラス
 〃 : BBCシンガーズ
管弦楽 : BBC交響楽団
指 揮 : マーク・エルダー

よく冷えたブルゴーニュの白で

2006-10-26 | イギリス
ウィリアム・ モール「ハマースミスのうじ虫」

1955年に出版され以後絶版になっていたものの新訳版。主人公キャソンは輸入ワインを扱う37歳独身男。名門クラブの会員であり美食家。趣味は人間観察。ある日クラブで夕食を楽しんでる最中に、銀行で重役を務める知人の異変に気付くところから物語はスタートします。知人に質すと、ある男から脅迫を受けたとのこと。キャソンはほとんど手がかりの無い犯人情報からある嗜好に気がつき、警察にいる友人の助けを借りながら犯人を特定するのですが、目の前で再び犯行が繰り返され、そしてさらに最悪の結果が・・・。
アッパーミドル階級に属すキャソンが、その階級に異常なまでも憧れる犯人を網にかけ、泳がし、じわじわと追い詰めていく心理戦が巧みに描かれています。犯人を観察し近づき罠にかけるやり方はまるでスパイのやり方・・。巻末の訳者の解説によれば、この作者のもともとの職業は、諜報機関M15に勤務し、「007シリーズ」でMと呼ばれた男のモデルとなった人物の片腕だったとか。道理でです。筋金入りのスパイだったのかも。元スパイが書いた静かな犯罪心理小説といったところでしょうか。
ロンドンのハマースミス、メイフェア、ナイトブリッジ界隈、そしてドーバーなどがフィールドとして登場します。
出張途中で時間を気にしながら立ち寄った本屋で、えいやっ!って感じで選んだこの本。
当たりでした!

「ゴルちゃん」登場

2006-10-24 | 日常
我が家に「ゴルちゃん」(VW Golf GLi )がやって来ました。
最初はGTを買おうと思ってたんですけど、聞くとGTは日本向けだけのグレードとか。独本国で走ってない輸入車なんてちょっと変かな、ってことでGLiに。
さっそく週末は家族でドライブです。目指すは山口、秋吉台。
なんせこれまでの車が13年乗った「ぷり爺さん(PRIMERA P-10 MT)」でしたから、色々な装備にびっくりです。いきなりキーレスエントリーに感動する私たち。室内は独車らしい質実さですが、けっこう質感のある作りになってます。シートは硬めで背角度の調整はダイヤル式(ぷり爺といっしょ)。この5代目から3ナンバーとなり大きくなっているのですが、座った印象はさほど広いという感じはしませんね。エンジンをスタートし、いよいよドライブです。「静か!」です。ぷり爺のばたばた感はまったくなく滑るように発進しスムーズにシフトアップしていきます。これが「大衆車」?って感じの走りです。ただ左全部の見切りは悪いです。車幅が増した分どこまで左があるかがちょっとまだ感覚として掴めません。これは慣れの問題か・・。そして高速に乗り入れ、加速すれば・・・・、非常にレスポンスが良く、地面に吸い付いた様な走りをします。今日は慣らし運転ですから無茶はしませんが、さすがアウトバーン走行を前提とした車だと思いました。そしてクルーズコントロールを試してみます。おや?どこのスイッチなんでしょう?やり方が不明です。色々いじってようやく速度設定が出来ました。ハハハ・・これぞ「自・動・車」・・・何ともイージーなドライブです。でもこれを使うとけっこう車間が詰まってブレーキ踏んじゃいますね。ぷり爺さんの時はアクセル開閉だけでブレーキなんて使わなかったのにねえ。それとライトのスイッチはちょっとリーチの短い日本人には遠いぞ。
さて、高速を降りて今度は山道です。これはATの宿命かキビキビ感は不足気味。特に下りでは、ATに不慣れな私としてはブレーキを多用してしまい、上手く車を駆ってない!という印象・・。これから練習して上手くなります。
この日の燃費は高速中心で14.9キロでした。(ゴルちゃんは自分で燃費計算しちゃいます)
さあ、これから10年10万キロのお付き合い。末永くお願いしますよ。

小学生以来訪れた秋芳洞は、やっぱり大きかった。


ぷり爺さんの思い出は→


ぷり爺さんとのお別れは→


不快!でも必読!

2006-10-12 | イギリス
ウィリアム・ゴールディング
「蠅の王」

舞台は近未来。核兵器も使われる第三次世界大戦の最中、疎開途中の子供たちを乗せた飛行機が南海の無人島に不時着すると いう設定から物語は始まります。無邪気なはずの子供たちが、共同体を形成していく過程で見せる邪悪な姿が主題となり、現代人への皮肉と警告を発しています。正直愉快なストーリーではありません。不快感を持ったまま読了するかもしれませんが、それが「現代」という事実なのでしょう。
描かれる子供たち誰1人として自分たちが何人いるのかを把握出来ない状況というのが、不安かつ不安定な20世紀を象徴しているのでしょうか。

無人島に子供たちという設定は、フランス人作家ジュール・ベルヌの「十五少年漂流記(二年間の休暇)」が思い浮かびます。こちらも少年らが派閥をつくり抗争(フランス人対イギリス人)を行なうのですが、最後にはめでたく仲直りと相成ります。「蠅の王」は事実この「十五少年」をパロってます。

原題は「Lord of The Flies」。
ゴールディングは1911年コーンウォルの生まれ。

食あたり小説

2006-10-10 | イギリス
どうも最近、忙しすぎます。期末、期初ということもあるのでしょうが、あらゆる面で限界を感じるこの頃です。
日頃から部下には、「仕事は腹八分でやりなさい!そうしないと本当にピークが来たときに破裂するから」と諭してきたてまえ、自分ではいつも腹四分程度で仕事をこなし、自席でブログの更新なんぞをやっていた祟りでしょうか、あらゆる難題がここぞと降りかかって来ています。
こんな時には、美味しいお酒に美味しい料理、そして心地よい読書が何よりの癒しにということで・・・・手を出してしまったのが、


ジョン・ランチェスター
「最後の晩餐の作り方」


原題は「The Dept to Pleasure」
作者はドイツ生まれのイギリス人。
面白いんです。この本。美味しいレシピが満載です。ドレッシングの調合割合、完璧なマティーニの作り方、モン・サン・ミシェルで観光客に振舞われるプーラールおばさんのオムレツのレシピ、素敵なアイリッシュシチュー・・・etc。描かれるのは、若い新婚カップルを密かに尾行する日々。これを語るのが謎のイギリス男で、何ともまあ博学な言葉で読者を煙に巻こうとします。この博学さは終電で読む小説としては消化不良をおこしそうです。事実何回も意識がなくなりました。終電でこの状況は危険です。で、数ページワープすること度々・・・。
もう少しメンタル的に健康な状態の時に「再チャレンジ」したい本です。

注意 料理本ではありません。