昨年の正月、新年の誓いをいくつか立てた。
その中の一つは「今年は絶対に第3のビールを飲まない!」というもの。
バターの代用品のマーガリンじゃあるまいに、安けりゃ良いという問題じゃない。プライドの問題じゃ。
って強く思っていたのですが、その夜、堂々と飲んでいたのは「麦とホップ」でした。
というプライドのない私なのですが、
この「金麦」だけは買おうと思わない・・・・・。
嫌いなんです、あのCMが・・・。
壇れいの妙にテンション高い映像が流れるとクシャミが出そうになります。
最近流れている、自転車にぶりっこ乗りして、「金麦忘れた!」って叫ぶやつは・・特に・・・。
以前のものも世代の共感を得ようと、オールナイトニッポンのテーマ曲使ったりと姑息でうんざり・・。
昨夜も娘とテレビを観ている時、このCMが流れる・・・
思わず、「パパ、このコマーシャル嫌いなんだよね」とつぶやくと、
娘が、「うん、嫌い、うるさいよね」とつぶやく・・
そうか、お前もそう思うか!と、ちょっとだけ幸せに。
どうやらこのCMシリーズは男性にはすこぶる好評だけど、女性にはどうも不評らしい。
男から見ても、嫌いなんだけどなあ。
明日からは暖かくなりそうですが・・・・
今年のオイスターシーズンもそろそろ お終い。
写真は宮島、牡蠣屋の焼き牡蠣です。
ここでは強い火力で一気に焼くのが売り。
もうちょっとジューシーな牡蠣がお好きならば、お隣の「焼きがきのはやし」へ
チャイナ・ミエヴィル「都市と都市」
腰巻帯の「カズオ・イシグロ絶賛」に負けて購入。
不思議な世界観に頭がくらっとする。2つの都市国家「ベジェル」と「ウル・コーマ」は隣り合う位置関係にあるのだが、その国境は単純なものではない。それぞれがモザイク状に、織物の縦糸・横糸のように組み合わされた国境を形成してるのだ。完全に分離されたエリアもあるが、多くのクロスハッチされたエリアであれば、一つの通りを両国が日常的に共有している。かといって両国民が共存している訳ではない。ベジェル人はウル・コーマ人を、その車を、建物を見てはいけないのだ。その逆もしかり。両国民は生まれたときから隣国を「見ない」ことを徹底的に教育される。それを破ることは「ブリーチ」行為と見なされ、謎の絶対権力「ブリーチ」によって排除される。この恐怖が国境を維持しているのだ。
ベジェルで発見された女性の遺体。捜査を担当するボルルに遺体が隣国から運ばれたという情報が入る。これは「ブリーチ」なのか。そして次第に見え隠れする、もう一つの都市国家「オルティーニ」の伝説。ウル・コーマにある遺跡発掘現場には何が隠されているのか。
クロスハッチされた通りで、両国の行きかう車、人々が混ざり合う現実の中で、自国民しか「見ない」ということがあり得るのか? デジカメでその通りを撮影したらどうなるのか? あり得ない、あり得ない・・・・。 でも、「見ない」ということは、ひょっとして・・・。繰り返される宗教対立、カースト制などの階級制度、今も続く北朝鮮やシリアの現実なんかも・・・。
お話はすこぶるハードボイルド。
チャイナ・ミエヴィルはイギリスのファンタジー、SF作家
「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」
原題は「The Iron Lady」
「~の涙」なんて副題は不要に思うのだが・・・。
認知庄を患い、行動を監視されるマーガレット・サッチャー。夫デニス氏の死もいまだに受け入れられずに過ごす日々。時折思い出すのは、あのダウニング街10番地での生活。
食料品屋の娘として生まれたことによるコンプレックスをばねに、オックスフォードで化学を専攻。保守党議員として政界進出し、旧態依然の男社会の中で頭角を現していく。国民の支持を失った保守党を変えるべく打って出た党首選挙。そしてイギリス発の女性首相に上り詰める。彼女の主張は明確だ。2本足で立てる者は立ち上がりなさい!仕事が出来る者は働きなさい!弱者を切り捨てるかの言動に周囲も国民も慄然とするのだが・・・。彼女を救ったのはフォークランド紛争。軍事的なメリットがないと戦争回避を勧める合衆国国務大臣に対し、彼女は言い放つ。日本が真珠湾を奇襲した時、米国はハワイを見放したのか!人命に代えてでも英国領土を守らなければならないと主張し続け、多大な犠牲を払って勝利に導くのだ。彼女の支持率は急上昇。70%を越えることに。しかし、彼女のカリスマ度が増すたびに、周囲は次第に彼女と距離を取るようになるのだ。
私が初めてロンドンを訪れた時、ちょうど彼女が首相となって10周年の時であった。その日(5月4日)のテレビはどれも特集番組で、そっくりさんが登場したり、マペット版サッチャーが登場したりと大騒ぎだった。彼女の陰で時に愚鈍な亭主として描かれるデニス氏であるが、彼女の一番の理解者であり、支持者であったのは言うまでもない。
デニス氏にプロポーズされたマーガレットは応える。私は茶碗を洗って終わる人生をおくるつもりはない。それでもいいのか?
デニス氏の死を受け入れたのか、彼の遺品を整理したマーガレット。近所の子どもたちの声が聞こえる午後、彼女は一人お茶を飲む。そして静かに茶碗を洗うのだった。
サッチャーが行った政治がどうだったか?についての掘り下げは一切無し。ひたすらメリル・ストリープの演技力(特に声)とメイクに力点を置いた作品でした。
サッチャーの80年代。海を渡ってフランスの大統領はミッテランだった。アメリカではレーガンだ。強い指導者の時代だった。
ケイト・モートン「忘れられた花園」
1913年のオーストラリア。ロンドンから着いた客船に一人の少女が小さなトランクとともに取り残されていた。少女は港湾関係の仕事をする男の家に引き取られネルと名づけられて育てられるのだが・・・・。成長したネルに養父が告げる。おまえはロンドンから来た船にいたんだ・・・と。ネルによるイギリスでの家族探し、それはネルの死後、遺産という形で孫娘カサンドラに引き継がれ、ロンドン、コーンウォールへと読者を導いてくれる。ネルの時代、カサンドラの時代、そしてネルの親たちの時代・・・。いく層にも重なる物語であるが、読者を困惑させることは無い。美しい自然に囲まれたコーンウォールの館の庭に造られた立ち入ってはならない花園。バーネットの「秘密の花園」を下敷きにしてるものだが、バーネットも実際に登場するサービス付き。
もっと違う結末でも良かったんでは?とか、あの気味悪い伯父さんのエピソードがもっとあったら!とか、だいたい養父が溺愛するネルに「お前は本当はうちの子じゃないんだよ」なんて言うかいな!とか、色々と茶々入れたくなる場面もあるのですが、面白かった。お勧めします。装丁もグッド。