英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

イエスタデイズ・ヒーロー

2006-12-27 | イギリス
この写真を見て、胸が「キュン!」とする方は正直相当な人生経験がおありの方。
そうです。「ベイ・シティ・ローラーズ」です。スコットランド、エジンバラ出身のグループで、バンドとしてはけっこう古いのですが、1974年に大ブレークし、「タータンハリケーン」と呼ばれ日本中を席巻しました。人気に比して演奏はへたくそでしたが、彼らが行う「クチパク」「あてふり」コンサートに当時のローティーンの女の子たちは絶叫し、泣きじゃくり、次々と失神する騒ぎでした。男性ファンもけっこういたのですが、あまりに女の子のアイドルとなってしまったため、男の子たちは恥ずかしくてレコードショップで手に取ることも出来ず密かに家でエアーチェックをする始末。一方で同じくイギリスのバンド「クィーン」なんかも、まだ米英でメジャーでなかったにもかかわらず、日本ではティーンエンジャーの女の子の圧倒的支持で武道館公演を成功させたりと、この頃の洋楽シーンはすごかった。
私はというと、当時さほどの関心はなかったはずですが、こうやってベスト盤を聞いていると大抵憶えているし、なんか当時の思い出が蘇ってきます。一番好きだったのは「イエスタデイズ・ヒーロー」。卒業式の次の日、仲が良かった男4人、女2人でスケートに行ったのです。スケート場の片隅に置かれたジュークボックスで選曲したのが、その「イエスタデイズ・ヒーロー」。曲をバックによたよたと滑る6人・・・。何故か思い出すだけで耳が熱くなります。みんなどうしているのでしょうか・・。

本国イギリスでの評価も気になりますが、映画「ラブ・アクチュアリー」で挿入歌として出てきてたりすることから推察するに、懐メロ定番として愛聴されているのでしょうか。

このベスト盤の収録曲は以下のとおり
1. サタデイ・ナイト
2. 朝まで踊ろう(シングル・ヴァージョン)
3. 想い出に口づけ(シングル・ヴァージョン)
4. ベイ・シティ・ローラーズのテーマ
5. 太陽の中の恋
6. バイ・バイ・ベイビー
7. 恋をちょっぴり
8. 明日に恋しよう
9. マネー・ハニー
10. ラヴ・ミー・ライク・アイ・ラヴ・ユー
11. ロックン・ロール・ラヴ・レター
12. 二人だけのデート
13. イエスタデイズ・ヒーロー(シングル・ヴァージョン)
14. ロックン・ローラー
15. 青春に捧げるメロディー(シングル・ヴァージョン)
16. 恋のゲーム
17. 夢の中の恋
18. 愛をささやくとき
19. 恋するラジオ(シングル・ヴァージョン)
20. 二人でいつまでも

すごい邦題ですね。「恋」の乱発手形です。
ともかく
かつてヒーローだった人、かつてヒーローになりたいと思っていた人にお薦めの盤です

イブの餅つき

2006-12-25 | 日常
今年のクリスマス・イブはとっても暖かでしたね。
さて、この写真は何でしょう?
煙で何も見えませんが、「餅つき」をしているところです。
私が住んでいるマンションの大家さんちは、今時分としては感心なことに毎年欠かさず家族、親類総出で「餅つき」をしています。いつもは29日と決まっていたみたいですが、今年はちょっと早めに行ったようです。
軒下に置いてある石臼を前日から庭に引っ張り出し、本格的に薪でもち米を蒸し、男性陣が交代で餅をつきます。つきあがった餅は縁側で女性陣がすばやく丸め、餡もちや鏡餅にしていきます。マンションに住む子供たちが怖怖近づくとおすそ分けをいただけます。
年末の風情なんて近頃はあまり印象がないのですが、薪が燃える匂いとペッタンペッタンという音が聞こえてくると、ああもうすぐ正月だなあ、と思っちゃいます。

首に黒いリボン・・

2006-12-22 | イギリス
イアン・フレミング「007 ロシアから愛をこめて」

あまりにも有名すぎる娯楽映画の原作ということで、これまでまったく手付かずだった「007シリーズ」。東京駅の本屋で平積みになってたので買っちゃいました。
新幹線の中で期待せずに読み始めたのですが、あらら、なかなか面白いじゃないですか。ソ連情報部スメルシュが出した指令は「ジェームズ・ボンドを辱めて殺せ!」。グレタ・ガルボ似の超美人スパイがボンドをご指名で誘惑するというもの。舞台はイスタンブール。そしてそこから発着するオリエント急行の車中。映画では描かれない細かな感情の駆け引きなどが荒唐無稽な物語を引き締めてます。

以下、私のツボにはまった部分として・・・
・冒頭、ソ連殺人機関スメルシュの殺し屋ナンバーワンが登場するシーン。彼の傍らにはP,G,ウッドハウスの本が・・・。ウッドハウスを愛読する人間が恐怖の殺人マシーンだって・・・。思わず笑っちゃいました。
・片方の足首をもう片方の膝にのせてその足首を手で掴む座り方はイギリス人しかしないんだって。
・ジェームズ・ボンドはロンドンのチェルシーに家政婦さんといっしょに住んでいる。
・ボンドがトルコに向う飛行機の中で、悪天候のため機が激しく揺れると、ボンドは両手にぐっしょり汗をかいてしまう・・。私といっしょじゃないですか。あなた「007」でしょう!
・美人スパイの登場シーン。彼女はベッドでシーツに包まっている。身につけているのは首に巻いた黒いリボンとストッキングだけ・・・。まさに精密誘導ピンポイント攻撃ですね。クラッときます。さすがのボンドも落ちちゃいました。

上海、倫敦、上海、香港・・

2006-12-20 | イギリス
年末恒例のミステリーベスト10にカズオ・イシグロの「私を離さないで」が選ばれてましたね。この作品を「ミステリー」というジャンルで語られることに若干違和感を覚えてしまう方もいるのではないでしょうか。でもそれで、この作品が多くの読者の手に触れるのであれば、いいことなのでしょう。


カズオ・イシグロ「わたしたちが孤児だったころ」


「日の名残り」もそうですし、「私を離さないでも」そうだったのですが、この作品も主人公の「記憶」を通して物語が進行します。魔都上海の租界で子供時代を過ごすバンクス。その彼を襲う両親の失踪事件。イギリスに戻されたバンクスは教育を受け私立探偵として名を成し、社交界にも出るまでに。
語られる「記憶」は時に揺らめき、時に謎めき連綿と積み上げられていきます。そして「記憶」と現実がシンクロした時、突然物語はリアルに速度を上げ、読者を戦争の最前線に放り出し駆け下りていきます。この展開にはたぶん賛否があるでしょうね。
次々と親しい人との関係を失ってしまったバンクスが最後にたどり着く場所は・・。

それにしてもイギリスでは、探偵という職業が尊敬を集めうるものなのですね。

燃える大樹

2006-12-12 | 日常
奇妙な夢を見ました。
なんと夢のなかで私は死んでいるのです。
死んだ理由はわかりません。なんでも射殺されたらしいと出てくる人たちが会話していました。
死んでる私は様々な場所を浮遊しているのです。友人、知人も出てくるのですが、向こうからは私が認識できない様ですし、もちろん話もできません。
出てくる場面は・・・
何故か広くなった自宅に昔の知人が集まって楽しそうに騒いでいる。
駅の新幹線コンコースで行き交う人たち。
窓から見える高原。
その高原に立つ1本の大きな樹が炎に包まれる。
消火作業をする人たち・・・
炎はなかなか収まらず、今度は人が炎に包まれる。

全体として、不快な夢ではなかったのですが、目が覚めると首の回りにぐっしょりと汗を掻いていました。

それにしても夢って、見ている時はあれほどリアルなのに朝になるとボロボロと記憶が褪せていきますよね。中学生の頃、よく変な夢を見ては金縛りにあってました。それで原因を突き止めようと思ったのですが、金縛りにあった時の夢が朝になると全然覚えてません。そこで私は、知恵を絞って、枕元に電気スタンドとメモ帳とボールペンを置いて寝たのでした。はたしてその夜も金縛りにあって汗びっしょりで目が覚めました。さっそくメモ紙に夢の内容を走り書きして、今度は安心して熟睡です。朝になり・・・さあ、どうだ!とメモ見ると・・・・・、あれー・・・白紙です。絶対書いたはずなのに・・・。これってどういうことでしょうか。メモを書いてたこと自体が夢なのでしょうか。とすると・・今現在もひょっとして「夢」の可能性も・・・
やめました!考えるのをやめました!頭が変になるのでやめました!それっきり金縛りはなくなってしまいました。

イギリスの鍵は・・・

2006-12-11 | イギリス
娘との織物ごっこから、イギリス綿業の興隆に話がいったついでに、引っぱり出したのが、

吉岡昭彦「インドとイギリス」

かなり古い本ですが、あらためて読み返してみると非常に面白い著作でした。
吉岡氏はイギリス近代経済史の研究で大きな功績を残された方です。その氏が昭和43年にインドとイギリスを訪れ見聞したことをベースに「イギリス帝国主義とインド統治」という観点から、両者の相互規定的な関係を経済的な側面から歴史的に考察しようとしたものです。インドの現在の農業、綿業、鉄鋼業に関して実際に見聞きしたことから始まり、インドの鉄道がどうして3つのゲージが交じり合って発展をとげたのか、大きな港湾都市を通じて世界市場とどう結びつき帝国の拡大にいかに寄与したのかが語られます。そして「本国費」という名目で、いかに多くの富がイギリスによって搾取されたのかが、多角的な世界システムの観点から解き明かされるのです。
最近の新書がハウツーものや短期的な視点で語られる物で多く占められていますが、長年のしっかりした研究を下地とした、イギリスを理解する上で読み応えのある内容となっています。

この本、現在版元品切れです。